研究課題/領域番号 |
23H00511
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分63:環境解析評価およびその関連分野
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
飯塚 芳徳 北海道大学, 低温科学研究所, 准教授 (40370043)
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研究分担者 |
植村 立 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (00580143)
大島 長 気象庁気象研究所, 全球大気海洋研究部, 主任研究官 (50590064)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
47,450千円 (直接経費: 36,500千円、間接経費: 10,950千円)
2024年度: 9,360千円 (直接経費: 7,200千円、間接経費: 2,160千円)
2023年度: 19,370千円 (直接経費: 14,900千円、間接経費: 4,470千円)
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キーワード | エアロゾル / アイスコア / 産業革命 / グリーンランド |
研究開始時の研究の概要 |
気候モデルによる地球温暖化予測の重要な不確実性要因に、エアロゾルが雲核となって雲アルベドに与える効果がある。雲核形成には水溶性エアロゾル粒子の粒径が重要であるが、過去のエアロゾル粒子径の観測事実がないため、地球温暖化の人為的要因の推定誤差が大きくなっている。そこで、本研究は世界で最も沈着エアロゾルが保存されているグリーンランド南東部のアイスコアを用いて、産業革命前から現在までの硫酸エアロゾルの沈着フラックスと粒径分布を復元する。硫酸エアロゾルの粒径分布を、エアロゾル・雲相互作用を考慮した気候モデルに取り入れ、気候モデルの歴史実験の精度向上と、エアロゾルと雲の関係解明をめざす。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は世界で最も沈着エアロゾルが保存されているグリーンランド南東部のアイスコアを用いて、産業革命前から現在までの硫酸エアロゾルの沈着フラックスと粒径分布を復元することである。また、過去の硫酸エアロゾル粒子の化合物状態や硫黄同位体比を分析し、過去の硫酸エアロゾルの粒径分布がどのようなメカニズムで変化するのかを明らかにする。 これまで、過去の硫酸エアロゾルの分級データは、申請者らによる1973-75年と2010-12年の0.4マイクロメートルを区別したデータしか存在しない。本研究では、現在の大気エアロゾル分級で用いられる低圧カスケードインパクタ(東京ダイレック社 MAIS9)を導入し、アイスコアから過去の硫酸エアロゾルを多段のフィルターに分画し、より細かく粒子径を分級する装置を開発している。2024年3月時点でコンタミ除去がほぼ終わり、テストケースとしてグリーンランド南東部のアイスコアの1851年夏の氷試料を用いて、硫酸イオン濃度の分級をはじめた。その結果、粒径が0.24マイクロメートル付近で硫酸エアロゾルのピークがあること、この分布は現在の硫酸エアロゾルの粒径分布と似ていることが分かった。これまで、0.2マイクロメートルの大きさの粒径をアイスコアから分析した例はほとんどなく、より小さいエアロゾルの重要性を認識した。これらの研究成果を日本雪氷学会の全国大会で発表した。今後、人為硫黄最盛期など他の時代の分析を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始1年目の段階で、現在の大気エアロゾル分級で用いられる低圧カスケードインパクタを導入し、アイスコアから過去の硫酸エアロゾルを多段のフィルターに分画し、より細かく粒子径を分級する装置を開発できたため。今後、人為硫黄最盛期など実際にアイスコアを用いた分析を進めていく予定である。科学研究費申請書に書いたとおりのスケジュールで研究は進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
・産業革命前から現在までの粒径ごとの硫酸エアロゾルのフラックスの復元する。産業革命前の1800~1850年、硫黄酸化物排出量が少なく温暖だった1950年代、同排出量が最大だった1970年代、排出抑制と温暖化が進行した2000年代に着目し、硫酸エアロゾルの粒径ごとのフラックスから硫酸エアロゾルによる過去の雲核形成過程を推定することを考えている。 ・硫酸塩エアロゾルの粒径と起源・大気化学反応の関係を解明する。1マイクロメートル以上の硫酸塩粒子に着目して、微小領域の物質の同位体を分析できるナノシムスで硫酸塩の硫黄同位体比を分析する。硫黄同位体比は硫酸エアロゾルの起源となる硫黄酸化物の起源推定のプロキシとなり、個別粒子レベルで硫酸エアロゾルの起源を復元する。 ・気候モデルを用いた粒径分級データの組み込みと雲アルベド効果への応用する。分担者の大島が開発してきた気象研究所の気候モデル(地球システムモデル)に粒径・起源・硫酸化合物などの新しい観測値やメカニズムを取り入れることで、エアロゾルによる雲アルベド効果の推定精度向上につなげる。観測から得られた硫酸エアロゾルの沈着フラックスを人為由来・自然由来に区別して比較・検証を行った上で、エアロゾルが雲微物理特性や放射収支に及ぼす影響を定量的に評価する。
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