研究課題/領域番号 |
23H00533
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分64:環境保全対策およびその関連分野
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
国末 達也 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 教授 (90380287)
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研究分担者 |
岩田 久人 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 教授 (10271652)
田上 瑠美 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 准教授 (60767226)
久保田 彰 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (60432811)
寳來 佐和子 国立水俣病総合研究センター, その他部局等, 室長 (60512689)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
46,800千円 (直接経費: 36,000千円、間接経費: 10,800千円)
2024年度: 11,700千円 (直接経費: 9,000千円、間接経費: 2,700千円)
2023年度: 13,000千円 (直接経費: 10,000千円、間接経費: 3,000千円)
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キーワード | 新興化学物質 / 残留性有機汚染物質 / 時空間トレンド / 生態リスク / 水銀 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、アジア太平洋地域で採集した多様な環境・生物試料を用いて、国際社会で関心の高い要監視化学物質の残留性有機汚染物質(POPs)と水銀に加え、近年新たに環境残留性や生態影響が危惧されている新規POPs・POPs候補物質・POPs様物質・生活関連物質等の新興化学物質における広域汚染の実態と時系列トレンドを解明する。さらに、生物蓄積性を示し生態リスクが懸念される新興化学物質を対象に、細胞内受容体への影響を対象にしたin silico・in vitro・in vivo試験を実施することで、内分泌かく乱性の高い化学物質を特定し、感受性の種差を考慮してリスクを評価する。
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研究実績の概要 |
本年度は、2023年5月新たに残留性有機汚染物質(POPs)として登録されたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BUVS)のUV-328と他7種のBUVSs (UV-P, -234, -320, -326, -327, -329, -350, -928)の標準品を用いて、ガスクロマトグラフタンデム質量分析計(GC-MS/MS)の測定条件を最適化することに加え、生体試料に適した前処理法を確立した。生体試料への添加回収試験から精度を確認した後、瀬戸内海沿岸域から採集した二枚貝の軟組織を分析した。その結果、5種のBUVSsが検出され、UV-328だけでなくUV-326による汚染が顕著であることが判明した。興味深いことに、二枚貝に蓄積していたUV-326とUV-328の地理的分布パターンは類似しており、両物質の濃度間には有意な正の相関関係が認められたことから共通の汚染源が偏在しているものと推察された。また特筆すべきことに、UV-326の蓄積濃度は臭素系難燃剤であるPOPsのPBDEsに比べ1桁以上高値を示した。BUVSsに関しては、細胞内受容体の結合と毒性影響を評価するため、in silico解析およびゼブラフィッシュ胚を用いたin vivo投与試験に着手した。 日本沿岸域に漂着・座礁した外洋性鯨類のes-BANKアーカイブ試料を活用し、要監視物質である水銀の時系列変化を解析した結果、寒冷海域に棲息する種で水銀濃度が低減する傾向が観察された。一方、亜熱帯海域に棲息する種では水銀濃度に有意な変化はみられず、亜熱帯暖域への水銀インプットが継続している可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、海洋生態系の低次に位置する二枚貝を用いた瀬戸内海沿岸の広域モニタリングを実施し、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BUVS)汚染の実態と地理的分布を解明した。その中で、2023年5月新たに残留性有機汚染物質(POPs)として登録されたUV-328だけでなく他のBUVSsにも汚染されていること、そして汚染レベルは採取地点によって異なり、地域固有の汚染源の存在を示唆することができた。また、日本沿岸域に漂着・座礁(ストランディング)した外洋性鯨類のes-BANKアーカイブ試料を活用した水銀分析から、棲息域により蓄積レベルの時系列トレンドが異なる可能性を提示することができ、より詳細な解析のためストランディングした年代を増やした分析を実施している。加えて本年度は、新規POPsであるPFOS, PFOA, PFHxSを含む有機フッ素化合物(PFAS) 34物質の標準品を用いて、液体クロマトグラフタンデム質量分析計(LC-MS/MS)および液体クロマトグラフ四重極飛行時間型質量分析計(LC-QTOFMS)の測定条件を最適化した。現在、実試料への添加回収試験を含め綿密な精度チェックをおこなっており、環境水試料についてはマトリックスエフェクト、添加回収率、そして日内・日間変動で良好な結果を得ている。さらに、二枚貝から検出されたBUVSに関して、ゼブラフィッシュ胚への曝露試験に着手し、現在、発生毒性などの影響評価を確認しているところである。このように全体として、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
生態系の異なる栄養段階に位置する野生生物を対象に、BUVS, PFAS, デクロラン類、そして生活関連物質などの新興化学物質における汚染実態と蓄積特性の解明を試みる。また、愛媛大学の生物環境試料バンク(es-BANK)のアーカイブ試料を活用し、汚染の時系列変化を明らかにすることで、要監視化学物質である既存POPsや水銀を含めた上記環境汚染物質の将来変動を予測する。さらにin silico・in vitro・in vivo試験を実施し、細胞内受容体に対する結合能と毒性リスクの評価をおこなう。令和6年度における課題の詳細は以下の通り。 1.二枚貝に加えアジなどの魚類、トビやミサゴなどの魚食性鳥類、スナメリ・スジイルカなどの海棲哺乳類の曝露実態と蓄積特性(濃縮性)を解明する。またes-BANKのアーカイブ試料を活用し、汚染の時系列変化を明らかにすることで化学物質種ごとの将来変動を予測する。 2.国内だけでなくアジア諸国で採取した環境水の生活関連物質(ビスフェノール類、パラベン類、トリクロサン、トリクロカルバン、ベンゾフェノン系化合物、アルキルフェノール類)を測定し、その汚染実態の解明と予測無影響濃度との比較からリスクを評価する。また、魚類への移行・残留性も解析する。 3.in silico解析により新興化学物質と細胞内受容体の結合エネルギーを算出し、一次スクリーニングをおこなう。各生物種のestrogen receptor (ER)を組み込んだin vitroレポーター遺伝子アッセイ(iv-RGA)系を構築し、in silicoの結果から主要な新興化学物質の転写活性化能を測定する。また、ゼブラフィッシュ胚への曝露試験から外部形態、心血管系、神経系、内分泌系に対する影響を観察する。
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