研究課題/領域番号 |
23H00553
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分90:人間医工学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
西尾 禎治 大阪大学, 大学院医学系研究科, 教授 (40415526)
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研究分担者 |
秋元 哲夫 国立研究開発法人国立がん研究センター, 先端医療開発センター, 分野長 (10261851)
稲庭 拓 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 物理工学部, グループリーダー (10446536)
阿蘇 司 富山高等専門学校, その他部局等, 教授 (30290737)
歳藤 利行 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 研究員 (30377965)
清水 伸一 大阪大学, 大学院医学系研究科, 寄附講座教授 (50463724)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
46,800千円 (直接経費: 36,000千円、間接経費: 10,800千円)
2024年度: 12,480千円 (直接経費: 9,600千円、間接経費: 2,880千円)
2023年度: 12,610千円 (直接経費: 9,700千円、間接経費: 2,910千円)
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キーワード | 体内線量観える化 / 陽子線治療 / 標的原子核破砕反応 / 生成陽電子放出核 / PET画像 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、体内でのリアルタイム陽子線照射線量分布可視化技術の確立による、患者個別に対する腫瘍への最適且つ正確な線量投与及び線量応答性に伴う最適処方線量を決定可能とする新たなテーラーメイド陽子線治療を実現し、我が国から本技術及び治療法を世界へ発信することを目指す。これまでの我々の研究開発成果である世界で唯一の陽子線照射領域可視化システム:BOLPsを中核として、患者ごとの腫瘍へ正確・最適な線量投与をリアルタイム観測できる患者体内リアルタイム陽子線線量分布可視化システムとして、BOLPs-RDDIsの研究開発及び構築を目的とする。
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研究実績の概要 |
本研究における、患者ごとの腫瘍へ正確・最適な線量投与をリアルタイムで観測可能な患者体内リアルタイム陽子線線量分布可視化システムであるBOLPs-RDDIsの構築には、短半減期陽電子放出核Activity分布画像導出技術、少ないActivity量から照射領域可視化画像の高品質化を図る統計ノイズ低減処理深層機械学習技術、変換用リップル関数重畳加算計算処理を高速化した線量分布高速推定技術、腫瘍応答画像化技術の確立と機能開発を行う必要がある。 BOLPs-RDDIsの研究開発において、本年度は、各機能の技術的手法の確立、既存のBOLPsを活用した人体模擬ファントムへの陽子線照射実験より機能の開発を行った。短半減期陽電子放出核Activity分布画像導出技術の研究開発では、陽子線照射領域での生成短半減期陽電子放出核からの消滅ガンマ線計測によって、Activity分布をリアルタイム画像化できる技術を確立した。統計ノイズ低減処理深層機械学習技術の研究開発ではBOLPsにより微量の生成陽電子放出核の計測で得られる統計ノイズが多いActivity分布画像に対する深層機械学習法による統計ノイズ除去技術を確立した。線量分布高速推定技術の研究開発では、患者体内での生成陽電子放出核のActivity分布画像データを線量分布データへ変換可能な線量分布推定技術の確立を行った。腫瘍線量応答画像化技術の研究開発では、国立がん研究センター東病院の陽子線治療装置に搭載されたBOLPsより取得された陽子線照射領域可視化画像データセットの内容を精査した。プロトタイプBOLPs-RDDIsの構築及び性能評価のために、各機能の統合化仕様を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高品質ながんの高精度陽子線治療の患者提供を実現可能な、腫瘍への正確・最適な線量投与をリアルタイムで観測可能な患者体内リアルタイム陽子線線量分布可視化システム:BOLPs-RDDIsの基盤創成を目指している。 BOLPs-RDDIsで要求及び搭載する様々な機能の仕様策定、要求技術の確立、更に機能開発へ着手した。それらの機能の研究開発のために、BOLPs-RDDIsの中核となる、既に我々研究グループで構築済みのBOLPsを陽子線治療施設持ち込み、ビームライン上に設置することで、治療用陽子線を用いた照射実験を実施した。人体模擬ファントム等へ陽子線照射実験より取得された可視化情報となるActivity計測データの解析及び検証・評価結果を機能開発へフィードバックした。陽子線照射実験では、陽子線を通常線量率と超高線量率で照射することで、Activity計測データの線量率依存性を検証した。搭載機能開発における研究の進捗としては、当初計画より、少し前倒しで進めることができている。また、超高線量率陽子線照射実験で得られた新たな知見として、Activity計測データ以外の物理反応に伴う研究副産物が、本研究目的の可視化に有効活用できる可能性を示すことができた。現在、この成果の知財化の準備を進めているところである。腫瘍線量応答画像化技術の研究開発では、国立がん研究センター東病院でIRB承認済みの陽子線治療患者の取得済み薬事承認機器BOLPsによる陽子線照射領域可視化画像データの解析に向けた準備を計画した予定通りに遂行することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本令和5年度が4年間の研究の初年度であり、当初の計画通りに研究を進めることができた。令和6年度以降も、計画通りに陽子線照射実験によるデータ取得を行い、取得データをシステム構築のための搭載機能の開発へフィードバックすることで、各機能の高性能化を図って行く。尚、BOLPs-RDDIsの研究開発では、治療用陽子線を用いた実験とデータ取得が大きなポイントになると考えている。そのため、現在、実際に陽子線治療を実施している施設利用に加えて、陽子線治療装置メーカーとの共同研究の枠組み内で、メーカーの工場に設置された最新の陽子線治療装置を活用するなど、陽子線照射実験環境の充実化を進める。また、既存のBOLPsと開発する各機能の統合化の仕様を検討し、BOLPs-RDDIsのプロトタイプを開発の準備を随時実施する。その際。陽子線治療装置メーカーから装置仕様等の基本情報を収集し、それらの収集情報を考慮したプロトタイプBOLPs-RDDIsの構築を行う。 研究開発の実施において、研究期間中に新たな知見や技術が複数得られる可能性を秘めている。それらについては、知財化を積極的に進めると同時に、この先々、BOLPs-RDDIsの基盤創成の成果より展開される、システムの医療機器化を想定した対応策などの検討を進めておく。
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