研究課題/領域番号 |
23H00554
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分90:人間医工学およびその関連分野
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
土居 信英 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (50327673)
|
研究分担者 |
津川 仁 東海大学, 医学部, 講師 (30468483)
岡田 光 金沢大学, 医薬保健学総合研究科, 特任准教授 (50788916)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
46,930千円 (直接経費: 36,100千円、間接経費: 10,830千円)
2024年度: 12,350千円 (直接経費: 9,500千円、間接経費: 2,850千円)
2023年度: 13,520千円 (直接経費: 10,400千円、間接経費: 3,120千円)
|
キーワード | 蛋白質 / 核酸 / ウイルス / バイオテクノロジー / 共焦点顕微鏡 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、申請者らが発見したヒト由来の膜透過促進ペプチドを利用したタンパク質・核酸の細胞質送達技術と、独自のmRNAディスプレイ法による小型抗体の試験管内選択技術を利用して、感染症の標的となる細胞内の因子に対するバイオ医薬の創出・送達手法を確立することを目的とする。これまで感染症に対するバイオ医薬の標的はウイルス・細菌の表面タンパク質や受容体など細胞外の分子に限られていたが、本研究を契機として、病原体の耐性獲得に左右されにくい細胞内の分子を標的とすることが可能になれば、我が国の感染症に対するバイオ創薬技術の基盤強化、ひいては国民の医療・福祉の向上に大いに貢献することが期待できる。
|
研究実績の概要 |
(1)HBV感染細胞のcccDNAを完全駆除する核酸医薬の開発(土居・岡田) 肝細胞特異的に発現しているアシアロ糖タンパク質受容体(ASGR)に結合する小型抗体やASGRのリガンドであるtri-GalNAcと、ヒトSyncytin1やIZUMO1由来の様々な膜透過促進ペプチドを組み合わせて融合したAgo2タンパク質をキャリアとして、siRNA医薬を肝細胞選択的に効率よく細胞質送達できる全く新しいDDSを開発するために、蛍光タンパク質をモデルとして共焦点顕微鏡観察することで、コンストラクトの最適化を進めた。また、DOCK11以外の新たな標的を見い出すために、野生型とAAV8-HBV1.3mer慢性感染モデルマウスの肝組織を用いたシングルセルトランスクリプトーム解析を行い、HBV関連遺伝子と宿主側の遺伝子を区別して空間的な情報を得ることができた。 (2)クレブシエラ菌感染を阻害する小型抗体医薬の開発(土居・津川) Axlの細胞内ドメイン(ICD)の様々な部位に結合する多様な小型抗体を1次セレクションし、その中から、所望の経路のみを活性化する小型抗体の2次スクリーニングを行うために、1年目は、Axl(ICD)の部分断片にビーズ固定用のタグを融合した遺伝子の発現用プラスミドを構築し、大量発現・精製した。Axl(ICD)断片が非天然変性領域を含むため苦労したが、ビーズへの固定を確認することができた。また、クレブシエラ菌感染下におけるAxl/Gas6シグナルの亢進がTight-junctionの増強と同時に腸管上皮細胞における細胞増殖も増強することをin vitro感染モデル試験にてki67染色を指標に明らかにした。このin vitroモデルを小型抗体の2次スクリーニングに利用することで、細胞増殖の誘導を引き起こさない医薬品の開発が可能になると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ASGRに結合する小型抗体やASGRのリガンドである tri-GalNAc と、ヒト Syncytin1 や IZUMO1 由来の様々な膜透過促進ペプチドを組み合わせて融合したタンパク質の肝細胞選択的な取り込みを確認できたこと、また、Axl(ICD) の各部位に結合する多様な小型抗体のセレクションに必要となるAxl(ICD) の部分断片を調製できたことから、おおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
(1) HBV感染細胞のcccDNAを完全駆除する核酸医薬の開発(土居・岡田) 前年度に引き続き、Ago2融合タンパク質とsiRNAの複合体をヒト培養細胞に添加し、肝細胞選択的に細胞内に送達されることを共焦点顕微鏡観察により確認することで、コンストラクトの最適化を進める。また、複合体が細胞質で標的mRNAを分解していることを確認するために、ヒト培養細胞の内在遺伝子やDOCK11に対するsiRNAとの複合体を肝細胞由来の培養細胞に送達し、培養細胞から抽出した標的遺伝子に対するmRNA量をRT-qPCRで定量する。さらに、前年度のHBV複製に関わる遺伝子情報の包括的解析から、核酸創薬に適した標的細胞から数種類の標的遺伝子まで絞り込み、先行したDOCK11の研究基盤データと比較して、新たな核酸創薬に最適な標的遺伝子を同定する。 (2) クレブシエラ菌感染を阻害する小型抗体医薬の開発(土居・津川) mRNAディスプレイ法により、すでに構築済みのヒト単一ドメイン抗体ライブラリーから、前年度に調製したAxl(ICD)に結合する小型抗体を試験管内選択する。その後、1次セレクションで得られた小型抗体を腸管上皮細胞由来 Caco-2細胞で発現させることでTight-junctionタンパク質の発現が変化するクローンを2次スクリーニングする。このときTight-junctionタンパク質のプロモーター細胞の構築と合わせて、クレブシエラ菌感染下におけるAxl/Gas6シグナルを確認し、クレブシエラ感染症予防に最適な2次スクリーニング技術を確立し利用する。
|