近年,いわゆる医療的ケアを必要としながら,小学校等の通常の学級で学ぶ児童生徒が増えている。しかし、多くの学校では支援体制の構築は未整備のままの現状にある。そこで、まずは学校看護師の配置に関する法制度等の整備と歴史的経緯について整理した。その上で、特別支援学校並びに小学校を対象として、現状の成果と課題について、実地調査し、その傾向を分析した。ならびに、小学校勤務の看護師免許を有する学校職員が担う役割と専門性について、学校看護師・養護教諭・教諭に対するインタビュー調査も行った。その結果、看護師免許を有する学校職員は、医療的ケアに関する高度な知識や技術を有するとともに、その職種に合わせて役割や専門性が派生・拡大してきており、具体的には、医療機関や保護者との円滑な連携、丁寧な観察・判断、体調変化の気付きなどを担っている現状が示された。また、職種ごとの特徴として、学校看護師は医療的ケアの対応を中心としつつ、教育的支援を併せて行っていたり、養護教諭は保健管理や健康教育に関する専門性向上につながっていたりした。教諭については、日常的な教科指導や生活指導に看護の視点をもって児童・保護者とかかわる様子があった。 このような調査・研究から、小学校の通常の学級における小児慢性疾患等により医療的ケアを必要とする子どもの支援体制の構築は、多職種連携・協働が基盤となり成立するものであり、特に、学校看護師がその役割を大きく果たすことが考えられた。それとともに、医療的ケア児を含めたすべての子どもの健康状態を看護と教育の両側面から総合的かつ綿密に把握や実行することが専門性として求められており、これは、切れ目のない連続性をもった「トータル・ケア」の視点からの支援が、支援体制構築の上で、非常に重要であることが示された。
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