研究課題
奨励研究
大動脈解離は動脈硬化や高血圧を背景に引き起こされ、高い確率で死に至る臨床上重要な疾患である。本疾患は極めて急速に発症・進展し突然死の原因となるため、発症予防策を確立することが喫緊の課題である。心血管疾患予後における主要な危険因子である糖尿病は大動脈疾患について疫学・観察研究で負の相関が確認されており、その理由の一つとして糖尿病薬が関与しているとの報告がある。そこで本研究では、FAERS 解析により大動脈解離予防薬候補として見出された糖尿病薬のDPP-4 阻害薬の解離発症予防効果及びその作用機序を基礎研究の手法を用いて明らかにする。
大動脈解離は動脈硬化や高血圧、加齢を背景に引き起こされ、高い確率で死に至る臨床上重要な疾患である。心血管疾患予後における主要な危険因子である糖尿病は、大動脈疾患について疫学・観察研究で負の相関が確認されており、その理由の一つとして糖尿病薬が関与しているとの報告がある。そこで、研究代表者は、アメリカ食品医薬品局に集積された有害事象自発報告データベース (FAERS) 解析から大動脈解離を抑制し得る既存承認薬を探索した結果、スタチン群と糖尿病薬である DPP-4 阻害薬を見出した。すでに研究代表者は先行研究において、ピタバスタチンが内皮機能の保護作用を介して大動脈解離発症を予防することを明らかにしている(J.Hypertens.2019;37(1):73-83.) 。このことから、DPP-4 阻害薬も大動脈解離発症予防に有効である可能性が示唆された。本研究では、DPP-4阻害薬であるシタグリプチンの大動脈解離発症予防効果に対する作用機序について検討した。培養ヒト臍帯静脈内皮細胞を用いた検討から、炎症性サイトカインであるTNFαの添加によりマクロファージの血管壁への接着および浸潤に関与するVCAM-1の発現が上昇し、その発現上昇はシタグリプチンの前投与により抑制する傾向を示した。このことから、DPP-4阻害薬であるシタグリプチンにはマクロファージの血管壁への接着および浸潤を抑制することで抗炎症効果を示す可能性が示唆された。また、別のFAERS解析から大動脈解離を抑制し得る既存承認薬として糖尿病薬であるSGLT-2阻害薬のエンパグリフロジンについても見出した。そこで、DPP-4阻害薬と同様にSGLT-2阻害薬であるエンパグリフロジンについても解離発症予防効果及びその作用機序に対して検討を進める計画である。
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Biomedicine and Pharmacotherapy
巻: 167 ページ: 115504-115504
10.1016/j.biopha.2023.115504