人工呼吸器の挿管などにおいて、筋弛緩薬としてロクロニウム臭化物およびベクロニウム臭化物が主に用いられてきた。新生児に対してはこれまではベクロニウム臭化物のみが世界的に使用されてきたが、ベクロニウム臭化物が販売停止となり、国内でロクロニウム臭化物への切り替えが行われた。しかし、新生児へのロクロニウム臭化物の投与は国内外含めて臨床試験が不十分であり、持続投与に関しての報告は皆無である。ロクロニウム臭化物を代替として使用するに当たり、適切で安全な医療を提供するためには新生児・乳幼児におけるロクロニウム臭化物持続投与の薬物動態や臨床効果を解明する必要がある。 名古屋大学医学部附属病院集中治療室にてロクロニウム臭化物の持続投与を行った新生児を対象としてロクロニウム臭化物の血漿中濃度をLC/MS/MSを用いて測定した。2023年4月~2024年3月の期間で11症例が対象となった。ロクロニウム臭化物の投与量(μg/kg/h)の平均値±標準偏差は336.2±104.1であり、血漿中濃度(μg/mL)の平均値±標準偏差は2.19±0.72であった。投与量と血漿中濃度の間には、相関係数0.63と正の相関がみられた。 本研究では、筋弛緩薬であるロクロニウム臭化物の新生児・乳幼児における薬物動態や臨床効果を解明するためにロクロニウム臭化物の血漿中濃度を測定し、対象となった11症例の血漿中濃度を明らかにした。また、投与量と血漿中濃度の間に正の相関があることを明らかにした。ロクロニウム臭化物持続投与における薬物動態パラメータや臨床効果の解明のために今後さらなる検討が必要と考えられる。
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