研究課題
奨励研究
ラモトリギンは、副作用として重篤な皮膚障害が現れることがあり、皮膚障害は血中濃度の急激な上昇が関与するとされる。しかし、代謝経路に関与し血中濃度を上昇させる可能性がある薬剤は多数存在するが、ラモトリギン血中濃度および皮膚障害発症率への影響は不明である。研究代表者は大規模副作用自発報データベース、多施設の診療情報解析を行い、ラモトリギンと併用で皮膚障害リスクの上昇が示唆される医薬品としてフルニトラゼパムを特定した。本研究では、臨床研究でラモトリギン服用患者の血中濃度に与える影響を評価する。加えて、ヒトの肝ミクロソームを用いた代謝活性実験により、フルニトラゼパムとラモトリギンの相互作用を解明する。
ラモトリギンによる重篤皮膚障害は、薬物代謝に影響するUDP-グルクロン酸転移酵素(UGT)阻害作用を示すバルプロ酸ナトリウム併用でリスクが高い。しかし、UGT阻害作用を示す薬剤は睡眠薬など多数存在するが、ラモトリギンへの影響は不明である。そこで、大規模副作用症例報告データベースで、ラモトリギンとの併用で皮膚障害報告数を上昇させる薬剤を探索した結果、フルニトラゼパムが抽出された。多施設共同後方視的研究の結果、フルニトラゼパム併用群で有意な皮膚障害頻度の上昇を認めた。さらに、前向き臨床研究の結果、フルニトラゼパム併用群ではラモトリギンの血中濃度が上昇しており、薬物動態へ影響することが示唆された。
本研究の結果より、UGT阻害作用を持つフルニトラゼパムは、ラモトリギンの血中濃度に影響を与え、皮膚障害発現リスクを上昇させる可能性が示唆された。フルニトラゼパムは睡眠薬として精神科領域で使用されており、ラモトリギンとの併用時には睡眠薬の選択や副作用モニタリングに注意を要すると考えられる。本研究結果で得られた知見は、ラモトリギンの副作用回避のための適正使用に寄与する重要なエビデンスとなると考えられる。
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