研究課題
奨励研究
京都大学医学部附属病院にて肺移植を受けた患者を対象にバルガンシクロビル(VGCV)の母集団薬物動態解析を実施してきた。その結果、クレアチニンクリアランスと再肺移植がVGCVの体内動態に影響を与える因子となることを見出したが、これらを考慮した場合でも依然として大きな個人差が存在することが判明した。VGCVの吸収過程にはペプチドトランスポーター(PEPT1)の関与が示唆されており、経口投与後、体内においてカルボキシエステラーゼ(CES)によって速やかに活性代謝物であるGCVに変換される。本研究では、PEPT1及びCESの遺伝子多型がVGCV体内動態へ及ぼす影響の有無を明らかにする。
京都大学病院にて肺移植を受けた患者を対象にバルガンシクロビル(VGCV)の母集団薬物動態解析を実施してきた。その結果、腎機能と再移植がVGCVの体内動態に影響を与える因子となることを見出したが、これら考慮して投与を行った場合でも依然として骨髄抑制が原因でVGCVの投与が中断となる症例が存在することが明らかになった。VGCVの活性本体であるGCV三リン酸は脱リン酸化酵素であるNudix hydrolase 15(NUDT15)によって代謝されるが、GCV三リン酸の蓄積は好中球減少症と強く相関することが報告されている。本研究では、NUDT15遺伝子多型がVGCVの投与継続に及ぼす影響を検討した。
サイトメガロウイルス(CMV)は肺移植後の感染症の中でも重要な病原体の一つであり、肺移植後のCMV感染症は慢性移植肺機能不全や侵襲性真菌感染症のリスク因子となる。VGCVは肺移植後のCMV感染予防に用いることができる唯一の薬剤であるが、骨髄抑制が問題である。重篤な白血球減少が発現した場合には、禁忌に該当するためVGCVを中止せざるを得ず、中止後にCMV感染を発症する症例が報告されている。本研究によって、薬物動態・薬理遺伝学に基づく精度の高いVGCVの個別化投与設計を実現することで、肺移植後のCMV感染防止に大きく貢献すると考えられる。
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Journal of Infection and Chemotherapy
巻: in press 号: 8 ページ: 741-745
10.1016/j.jiac.2024.02.010
Transplant Infectious Disease
巻: 25 号: 6
10.1111/tid.14141