| 研究課題/領域番号 |
23H05405
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| 研究種目 |
特別推進研究
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| 配分区分 | 補助金 |
| 審査区分 |
理工系
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| 研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
浜地 格 京都大学, 工学研究科, 教授 (90202259)
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| 研究分担者 |
野中 洋 京都大学, 工学研究科, 准教授 (80579269)
田村 朋則 京都大学, 工学研究科, 講師 (10746639)
進藤 直哉 九州大学, 薬学研究院, 講師 (20722490)
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| 研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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| 研究課題ステータス |
交付 (2025年度)
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| 配分額 *注記 |
609,050千円 (直接経費: 468,500千円、間接経費: 140,550千円)
2025年度: 88,920千円 (直接経費: 68,400千円、間接経費: 20,520千円)
2024年度: 88,920千円 (直接経費: 68,400千円、間接経費: 20,520千円)
2023年度: 253,370千円 (直接経費: 194,900千円、間接経費: 58,470千円)
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| キーワード | 分子夾雑 / 生命化学 / 脳内有機化学 / リガンド指向性化学 / ケミカルバイオロジー / タンパク質酵素 / 脂質 / 阻害剤 |
| 研究開始時の研究の概要 |
生命現象の根幹を支える重要な生体分子であるタンパク質と細胞膜を形成する脂質を対象に、それらが機能する生体環境そのものでの分子情報解析や機能制御を可能とする「生体分子夾雑の有機化学」の学理構築を目的に研究を進める。特に、脳と癌組織の夾雑環境(多種多様な生体分子が細胞内小器官や領野といった多重の空間区画に不均一かつ混雑状態で分布した環境)において、標的とした生体分子を高い選択性と効率で化学変換可能な新しい有機化学反応を開拓する 。本研究では、生物個体での有機化学に必要な要素を発見・抽出し、生きた状態の分子情報の化学反応による固定化・読み出しを実現する新たな生体分子解析戦略を提案する。
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| 研究実績の概要 |
本年度は、脳内有機化学として有望な手掛かりが得られ始めているAMPA型グルタミン酸受容体を標的としてリガンド指向性化学を中心に研究を進めた。具体的には、選択的なラベル化を可能としてアシルイミダゾール(AI)反応基以外の切断型求電子剤としてNASA化学の適用を試み、AMPA受容体へのラベル化が進行することを確認した。また、蛍光色素以外の様々な機能性プローブの脳内受容体修飾を目指して、リガンド指向性化学と生体直交性Click反応の組み合わせた二段階ラベル化によるAMPA受容体修飾を行い、適切な分子設計を施せば、二段階ラベルが脳内でも可能であるという手がかりを得た。また計画2においては、リガンド指向性AI化学によって、生きたマウス脳内で光増感剤を修飾したAMPA受容体を使って、脳内に光ファイバーを挿入して光駆動型近傍ラベリングを行い、マウス脳内の特定部位:小脳や海馬に発現したAMPA受容体の近傍タンパク質群の同定が可能なことを、定量マスプロテオミクス網羅解析によって確かめた。計画3に関しては、脂質の代謝導入ラベルをコリン以外の(飽和/不飽和)脂肪酸や糖脂質などに拡張できるかどうかを確認する実験を開始し、脂肪酸に関しては、一定の炭素鎖長以上の脂肪酸において代謝導入が可能なこと、それを用いて、生細胞系でのオルガネラ選択的クリック反応が、高い効率で進むことを明らかにした。さらに計画4では、がん細胞に過剰発現していることが知られている特定のタンパク質や酵素(リン酸化酵素キナーゼ)を2、3種類選び、これを標的として、共有結合型阻害剤の化学反応基となりうる(近接効果を効果的に発揮する)新しいchemical warheadの分子設計と合成法の確立を進め、in vitroおよび細胞系での標的酵素選択的なcovalent阻害が起こることを見出した。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、生物個体での有機化学(反応)に必要な要素を発見・抽出し、生きた状態の分子(ネットワーク)情報の化学反応による固定化・読み出しを実現する新たなin vivo生体分子解析戦略を提案することである。特に、生命現象において中心的な機能高分子であるタンパク質と、研究手法の制限から未解明な点が多い生体膜の構成分子である脂質を対象として、それらが実際に機能する生体環境その場(脳と癌組織に着目)での、分子構造、機能、分子間相互作用情報の解析を可能とするための高選択・高効率な化学反応の開発を通して、「生体分子夾雑系での有機化学」の学理構築を目指している。本年度は、AMPA型グルタミン酸受容体を標的としてリガンド指向性化学を中心に研究を進め、脳内での選択的なラベル化にアシルイミダゾール(AI)基やNASA基が適用できることを明らかにした。また、様々な機能性プローブの脳内受容体修飾を目指して、リガンド指向性化学と生体直交性Click反応の組み合わせた二段階ラベル化法を試み、適切は分子設計によってそれが可能であることを実証した。また光増感剤を修飾したAMPA受容体を使って、光駆動型近傍ラベリングがマウス脳内で実現できる手がかりを得た。さらに、脂質の代謝導入ラベルをコリン以外の(飽和/不飽和)脂肪酸に拡張し、オルガネラ選択的クリック反応が進行することを確かめた。計画4ではがん細胞に過剰発現していることが知られている特定のタンパク質や酵素を2、3種類選び、これを標的とした共有結合型阻害剤の反応基となりうる新しいchemical warheadの分子設計と合成法の確立が進んだ。また初年度に計画していたタンパク質や脂質の精密解析のための高精度質量分析装置の導入と稼働も問題なく行われた。以上の通り、本研究の1年目は、ほぼ順調に進展したと判断できる。
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| 今後の研究の推進方策 |
今後の研究においては、前年度に脳内有機化学において実現の可能性が見えた「リガンド指向性化学」と「生体直交性Click反応」とを組み合わせた二段階ラベル化法に関して、物理化学的な特性の異なるLDAI試薬およびクリック試薬をそれぞれ複数種類合成し、これらを用いて二つの段階それぞれに関して、高い選択性と修飾効率が得られる組み合わせを探索する。その過程で、いくつかの物性値と反応性の相関を検討し、脳内有機化学を可能とするためも必須となる分子(反応)設計指針が得られないか検討を行う。また、脳内クリック反応を活用して、蛍光色素以外の様々な機能性プローブのAMPA受容体への脳内での修飾を試みる。さらに、計画2では、前年度、光駆動型近傍ラベリングの脳内での応用が、光増感剤を修飾したAMPA受容体を使って大きく前進したので、他の受容体への汎用性の確認や過渡的な受容体近傍プロテオーム変化の解析といった神経科学的な応用展開を進める。計画3に関しては、脂質の代謝導入ラベルをコリン以外の(飽和/不飽和)脂肪酸へと展開できそうな前年度の成果を踏まえて研究を進める。具体的には、脂肪酸代謝脂質に関して、高精度質量分析や薄層クロマトグラフィーによる解析を組み合わせて、オルガネラ選択的な脂質分析の可能性を探る。計画4ではがん細胞に過剰発現していることが知られている特定のリン酸化酵素:キナーゼを標的として選択し、その活性中心だけでなく活性部位近傍の表層アミノ酸を狙った反応基の開発を進める。有望なものに関しては、それをchemical warheadとして使い、近接効果を効果的に発揮できる標的選択的な共有結合型阻害剤の設計と開発を進める。まずは精製酵素を使ったin vitro実験を行い、アミノ酸選択性や反応特性などの精密解析を行って、その成果を踏まえて細胞系での評価へと進めていく。
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