研究課題/領域番号 |
23H05406
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研究種目 |
特別推進研究
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
安達 千波矢 九州大学, 工学研究院, 教授 (30283245)
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研究分担者 |
合志 憲一 九州大学, 工学研究院, 助教 (50462875)
田中 正樹 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50830387)
儘田 正史 京都大学, 理学研究科, 准教授 (60625854)
中野谷 一 九州大学, 工学研究院, 准教授 (90633412)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
601,640千円 (直接経費: 462,800千円、間接経費: 138,840千円)
2024年度: 68,640千円 (直接経費: 52,800千円、間接経費: 15,840千円)
2023年度: 327,080千円 (直接経費: 251,600千円、間接経費: 75,480千円)
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キーワード | 有機半導体レーザーダイオード / 光共振器構造 / 励起子 / 熱活性化遅延蛍光(TADF) / 電流励起デバイス / 有機半導体レーザー / 放射速度定数 / キャビティ― / DFB / 励起子失活 / 自発配向分極 / SOP / 熱活性化遅延蛍光(TADF) |
研究開始時の研究の概要 |
本提案では、電流励起によるOSLDのレーザー発振の素過程を解明することで、電荷注入からレーザー発振に至る複合的な学理を紐解き、高励起密度下における励起子過程の解明や低閾値レーザー発振を目指した新材料開発及び新規素子構造に取り組み、デバイス性能の飛躍的な向上を図る。高性能レーザー分子の開発においては、高速放射速度定数を有する蛍光分子の創製に取り組み、安定した電流励起レーザーを実現するための材料からデバイス構造まで、電流励起デバイスの開発に包括的に取り組む。
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研究実績の概要 |
OLEDのデバイス構造を基礎とした独自の有機半導体レーザーダイオード(OSLD)を構築し、電流励起によるレーザー発振の兆候を掴んでいるが、約700A/cm2に達する高電流密度を閾値とすることから、瞬時のデバイス劣化に至り、大幅な閾値電流の低下が必須な状況である。 本研究では、OSLDのレーザー発振の素過程を解明することで、電流励起からレーザー発振に至る複合的な学理を紐解き、高励起密度下における励起子過程の解明や低閾値レーザー発振を目指した新材料開発及び新規素子構造に取り組み、デバイス性能の飛躍的な向上を目指している。高性能レーザー分子の開発においては、高速放射速度定数(kr>1010)を有する蛍光分子の創製や、熱活性化遅延蛍光(TADF)過程を含む三重項励起子を活用した新規レーザー機構の開発に取り組む。また、高励起下における一重項励起子、三重項励起子の失活過程の解明について、実デバイス中で生じる電流、電圧、電子分極効果の側面から、包括的に励起子失活過程の解明に取り組む。さらに、光共振器構造においては、従来の混合次数DFB型から光閉じ込め効果に優れた二次元DFB構造への展開及び電流励起レーザーを再現性よく安定に動作可能なフラットな電極構造を有する電流励起デバイス構造の開発に取り組む。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規有機レーザー分子の開発については、これまで最も優れたレーザー発振特性を有するBSBCzをモデル化合物として、剛直な棒状構造を有するベンズオキサゾール誘導体、マルチレゾナンス骨格を含有するBN系誘導体について検討を進めた。本材料における低閾値化のための分子設計指針に関する知見を蓄積することができ、今後の分子設計の方向性を掴むことができた。また、BSBCz誘導体については、トロント大学、UBC、イリノイ大学、グラスゴー大学との共同研究において網羅的な材料探索を進め、コンビナトリアル手法による材料探索の手法を確立し、有望なレーザー分子の創出に至っている。また、三重項励起状態を経由するTADFレーザー分子の設計においては、T-S遷移の機構の解明により分子設計の理解が深まった。 レーザー発振に必要なDFB構造の形成においては、既存の電子線リソグラフィーを整備し、また、新規にエッチング装置、スパッタ成膜装置を導入した。さらに、学内の共同利用機器の利用や民間会社へのアウトソーシングの加工体制も構築した。現在、2次のグレーティング構造を安定に作製できる体制を構築し、安定したレーザー発振特性が得られている。DFBの構造は、多くのパラメーターが存在することから、Line &Spaceのピッチや厚み、積層する有機層の厚みや平滑度など、多数のパラメーターについて最適化の検討を進めている。 励起子失活過程の解明については、積層有機薄膜中において、多くの有機分子は自発配向分極を有しており、このことが、有機層解明での電荷蓄積を引き起こし、励起子失活の大きな要因になっていることを明らかにした。また、ゲスト-ホスト系における自発配向分極の発現機構を分子動力学の側面からも明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、レーザー材料の開発においては、低閾値を維持しながら、耐久性向上を図るために、脱スチリル骨格を中心に、スピロ化合物の検討を進める。特に、結合開裂エネルギーに焦点を絞り、CN結合を含有しない新規化合物について検討を進める。また、ベンゾオキサゾール誘導体、BN系化合物においても引き続き新規構造の検討を進め、分子骨格とレーザー特性の相関を明らかにする。さらに、OLEDにおいて効果がある重水素効果について重点的に研究を進める。レーザー共振器構造については、DFB構造を基礎に、2次元及び3次元の光閉じ込め構造について検討を進める。DFB構造とマイクロキャビティー構造を組み合わせることで、顕著なレーザー閾値の低下が期待できる。そして、光励起デバイス及び電流注入デバイスの両面から検討を進め、電流励起に最適なデバイス構造を構築する。励起子失活過程においては、高電流密度下での励起子失活過程の解明や、界面での電荷注入障壁を低下させるために素子を構成する各層の有機配向分極特性との相関を明らかにする。また、再結合サイトの能動的な制御による励起子失活の抑制を試みる。
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