研究課題/領域番号 |
23H05427
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分A
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤岡 穣 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 教授 (70314341)
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研究分担者 |
川瀬 由照 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (00541228)
山口 隆介 独立行政法人国立文化財機構奈良国立博物館, その他部局等, 主任研究員 (10623556)
大澤 信 独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館, 学芸部文化財課, 研究員 (10835507)
大河内 智之 奈良大学, 文学部, 教授 (20847818)
濱田 瑞美 横浜美術大学, 美術学部, 教授 (30367148)
豊山 亜希 近畿大学, 国際学部, 准教授 (40511671)
稲本 泰生 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (70252509)
中島 悠太 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (70633551)
長原 一 大阪大学, D3センター, 教授 (80362648)
皿井 舞 学習院大学, 文学部, 教授 (80392546)
内記 理 愛知県立大学, 日本文化学部, 准教授 (90726233)
肥田 路美 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (00318718)
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研究期間 (年度) |
2023-04-12 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2025年度)
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配分額 *注記 |
93,470千円 (直接経費: 71,900千円、間接経費: 21,570千円)
2025年度: 12,090千円 (直接経費: 9,300千円、間接経費: 2,790千円)
2024年度: 16,770千円 (直接経費: 12,900千円、間接経費: 3,870千円)
2023年度: 34,450千円 (直接経費: 26,500千円、間接経費: 7,950千円)
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キーワード | 仏顔 / 様式 / AI / ディープラーニング / 3次元画像 / 仏像 / 人工知能 / 快慶 / 3D画像 |
研究開始時の研究の概要 |
仏像の地域や年代、流派等による系譜を、AIによる仏像の顔(仏顔)画像の分析を通して再検証するものである。 公刊された、あるいは撮影フリーの仏顔の2次元画像を収集し、従来の研究に基づいてラベル付けし、データセットを作成し、それを用いてディープラーニングによって制作年代・地域を推定するモデル、類似した仏顔画像を検索するシステムを構築し、公開する。また、AIによる推定結果を従来の研究にフィードバックすることにより、仏像諸作例の位置づけを更新し、ひいてはインドから日本へといたる仏像の伝播や地域ごとの仏像の変遷について新たな見解を提示する。 あわせて、仏顔の2次元画像を3次元化するシステムの構築をめざす。
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研究実績の概要 |
本研究は、アジア全域の仏像/神像を対象として、学術目的利用フリーの顔の画像(仏顔画像)のデータセットを作成し、ディープラーニングによりそれぞれの制作年・制作地などを解析するとともに、最終的に制作年・制作地などを推定するモデルを構築し、公開することをめざしている。また、各年度ごとにトピックを設けて個別の研究を行うことを目標としている。 5ヶ年計画の初年度にあたる2023年度は、仏顔画像のディープラーニングのためのデータセットの作成を進めることが最大の課題であった。当初の計画では、スキャニング等の画像収集作業を業者委託する予定であったが、業者選定に困難をきたしたため方策を変更し、高機能のスキャナーを選定・購入し、さらに技術補佐員を雇用して作業を進めた。その結果、書籍237冊のスキャニングを完了し、18,120点の仏顔画像を取得、さらに特任研究員によって2,033件の仏顔画像データをデータセットに追加した。 2023年度は三十三間堂の千体千手観音の仏顔画像の解析にも着手した。開始時期が遅れたこともあって年度内に解析を終えることはできなかったため、引き続き解析を継続する。 一方、韓国国立中央博物館とは共同研究の覚書を締結し、中国の西北大学文化遺産学院および西安碑林博物館とは学術交流を実施し、今後の仏顔画像の解析ならびに3次元データの収集への協力体制を築いた。また、国内では醍醐寺等において仏顔3次元データを取得し、アメリカのメトロポリタン美術館、イェール大学博物館、ハーバード大学美術館、ボストン美術館、ネルソン・アトキンス美術館、サンディエゴ美術館、韓国の国立中央博物館、国立春川博物館、ホアン美術館、中国の四川博物院、成都博物館、成都市考古学研究院、雲南省博物館、昆明市博物館、大理市博物館、剣川石窟、碑林博物館、陝西省歴史博物館、延安石窟において調査を実施し、仏顔画像を収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
仏顔画像のデータセットの作成については、画像収集作業の方法を変更したことによって、概ね計画通りに進めることができた。また、調査による仏顔画像の収集は、むしろ計画以上の成果をあげることができた。 ただし、3次元画像の収集についてはスマートフォンを用いて進めたが、照度不足とスマートフォンのカメラ機能の精度不足のために十分な画質を得ることができなかった。 また、三十三間堂の千体千手観音の解析が遅れている。ミーティングにおいて、利用できる画像の画質の限界、仏顔の類似度が高いことから、はたしてAIによる分析の成否については未知数であることを確認したものの、なお見通しを得る段階にいたっていない。 一方、研究計画になかったが、ゲノム研究によって明らかとなる人類の系譜と仏顔のアジア的展開との関係をさぐる共同研究の可能性について検討を行うなど、新たな研究へのチャレンジを開始した。 以上を総合的に判断すると、概ね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
仏顔画像のデータセットは、引き続き書籍等のスキャニング、仏顔画像の収集を継続するとともに、特任研究員によるデータ入力作業を加速させ、ディープラーニングに必要十分なデータを形成する。また、2025年度、2026年度に実施予定の雲岡石窟、龍門石窟の仏顔の検討に向けてデータセットを準備する。 3次元画像の取得については、照度を確保するために購入した照明機器を使用するとともに、最新のスマートフォンを入手することによってより精度の高い画像の取得をめざす。 三十三間堂の千体千手観音の解析を引き続き継続し、早期に成果を得るように努める。また、2024年度は新たに快慶作品の仏顔を解析対象として、年代による仏顔の変化、快慶作品と非快慶作品との比較などについて、ディープラーニングとともに主成分分析などの機械学習によって分析を進める。 2次元および3次元の仏顔画像の収集のための調査活動は、国内においては醍醐寺、蟹満寺、大蓮寺、奈良国立博物館、龍谷ミュージアム等において実施し、海外においてはインド(サールナート考古博物館、インド博物館など)、中国(山西省内の仏教寺院、響堂山石窟、ギョウ城博物館など)での実施を計画している。
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