| 研究課題/領域番号 |
23H05441
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| 研究種目 |
基盤研究(S)
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| 配分区分 | 補助金 |
| 審査区分 |
大区分B
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| 研究機関 | 東京都市大学 (2025) 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 (2023-2024) |
研究代表者 |
中川 貴雄 東京都市大学, 付置研究所, 特任教授 (20202210)
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| 研究分担者 |
細畠 拓也 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究センター, 上級研究員 (00733411)
中岡 俊裕 上智大学, 理工学部, 教授 (20345143)
松原 英雄 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 教授 (30219464)
平原 靖大 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (30252224)
金田 英宏 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (30301724)
鈴木 仁研 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 准教授 (30534599)
和田 武彦 国立天文台, JASMINEプロジェクト, 准教授 (50312202)
海老塚 昇 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究センター, 研究員 (80333300)
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| 研究期間 (年度) |
2023-04-12 – 2028-03-31
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| 研究課題ステータス |
交付 (2025年度)
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| 配分額 *注記 |
196,690千円 (直接経費: 151,300千円、間接経費: 45,390千円)
2025年度: 71,370千円 (直接経費: 54,900千円、間接経費: 16,470千円)
2024年度: 30,680千円 (直接経費: 23,600千円、間接経費: 7,080千円)
2023年度: 18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
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| キーワード | スノーライン / 原始惑星系円盤 / 赤外線高分散分光 / イマージョン・グレーティング / 宇宙望遠鏡 / ガス惑星 / 固体惑星 / 惑星系形成 / 中間赤外線高分散分光 / 高分散分光観測 / CdZnTe |
| 研究開始時の研究の概要 |
惑星系の構成を決めると考えられているスノーラインの存在証明と位置特定を、スペースからの中間赤外線高分散分光観測で実現するために、本研究では(1)「技術開発」を行う。特に小型化に有効なイマージョン・グレーティング技術を開発する。 さらにイマージョン・グレーティングを用いて分光システムを試作し、(2) 地上望遠鏡を用いた原始惑星系円盤からのH2Oスペクトル線の「試験観測」を行う。これにより、スノーラインと関係の深い高温H2Oガスを観測することで、理論モデルの妥当性を検証する。 将来のスペースからのスノーラインの直接観測実現を目指して、「技術開発」と「科学的な試験観測」の両面から研究を進める。
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| 研究実績の概要 |
地球に代表される「岩石型惑星」と木星に代表される「ガス型惑星」の2種類の違いを生んだのは、水(H2O)の存在形態の境界である「スノーライン」であると考えられている。しかし、スノーラインの直接的な観測は未だなく、その存在・位置は理論的なものにとどまっている。本研究では、そのスノーラインは本当に存在するのか、理論通りの位置に存在するのかの解明を将来のスペースからの中間赤外線高分散分光観測で検証することを目指す。そのために、本研究では、将来のスペースからの高分散分光観測を実現する技術(イマージョングレーティング)の開発に取り組んでいる。 本研究では、まずイマージョングレーティング実現の鍵を握る光学材料として、CdZnTeを選定し、その光学特性を、実際に分光器として使用する極低温において測定するという課題に取り組んだ。光学特性としてまず大切なのは、屈折率である。屈折率がイマージョングレーティングとしての特性を左右するからである。そのために、最小偏角法を用いた測定装置を昨年度までに開発し、今年度はそれを用いて極低温における屈折率測定に成功した。 もう一つ重要である吸収係数の測定も進めた。イマージョングレーティングとして90%以上の効率を達成するためには、吸収係数αが0.01 cm-1 以下である必要がある。我々の測定により、高抵抗型のCdZnTe結晶であれば、この要求を極低温で満たすことが実証できた。 また、反射防止コートの開発にも取り組んでいる。これには、昨年度から取り組んできたサブ波長構造型のものと、そのバックアップ案として多層膜誘電体コート方式も並行して開発を進めた。 さらに、これらの結果を含めた分光器の概念検討に着手し、光学系の基本レイアウトを決定した。
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| 現在までの達成度 |
現在までの達成度
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題では、まずイマージョン・グレーティングの材料候補であるCdZnTeの光学特性を、極低温で評価するという課題に取り組んだ。光学特性の内、屈折率は、イマージョン・グレーティングの効率の波長依存性を左右する重要な要素である。観測のターゲットとなるスペクトル線をグレーティングの効率90%以上で観測するためには、屈折率の不定性Δn を0.001以下となる精度で決定する必要がある。そのために、我々は、最小偏角法を用いた屈折率測定装置を開発し、20K以下の極低温において、要求に近い精度で屈折率を測定することに成功した。 もう一つの重要要素・吸収係数については、グレーティングの透過率で90%以上を確保するためには吸収係数αが0.01 cm-1以下であることが求められる。我々は、透過率の温度依存性と波長依存性を、高い精度で求めることに成功した。上記の屈折率の測定結果と組み合わせることにより、吸収係数を精密に求めた。その結果、CdZnTeの結晶でも、特に高抵抗型の結晶であれば、要求であるα < 0.01 cm-1を極低温で満たすことを実証した。これらの成果により、CdZnTeが、極低温・中間赤外線用のイマージョン・グレーティング材料として、光学特性としては適切なものであることを示すことができた。 また、CdZnTeは、屈折率~2.6という高屈折材料であり、そのままでは表面反射損失が大きい。そのため、我々は、サブ波長構造を用いた反射防止コートに取り組んだ。昨年度はウェットエッチングを用いたが、よりよい特性をもとめるために、2024年にはレーザー加工にも取り組んだ。 上記の成果を取り込んだ分光器システムの設計を進めた。イマージョングレーティングの採用により、従来型の分光器よりも、コリメータの焦点距離を短くすることができ、その分、小型化できる設計案を得ることができた。
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| 今後の研究の推進方策 |
FY2023-24の我々の研究成果をもとに、2025年に小型のイマージョン・グレーティングの試作を行い、加工技術の確立を目指す。続いて、2025-26年に、R=30,000の分解能を達成するために必要なフルサイズのイマージョン・グレーティングを試作し、単体での性能評価を行う。 また、申請スケジュールでは FY2023-2024 に反射防止コーティング技術の確立 を目指していたが、FY2024までの成果では一定の透過率向上を達成したものの、本研究に求められる広帯域高透過率の達成には、さらなる研究が必要である。そのため、FY2024後半からレーザー加工に取り組んでいる。また、スケジュール遅延を避けるため、誘電体多層膜をバックアップ案として進めている。シミュレーションで、ZnSe/BaF2/ZnSe の 3 層構造で透過率 > 95%(波長 9-18 μm) が得られており、現在試作を進めている。 上記で製作したフルサイズのイマージョン・グレーティングを用いて、2025-26年にかけて分光器システムを試作・評価し、スノーライン検出に必要な高波長分解能・高効率を超小型サイズで実現可能であることをシステムレベルで直接的に実証する。 上記の試作分光器を用いて、2026-27年度に、地上から観測できる波長12.453μmの H2Oスペクトル線を原始惑星系円盤で観測する。本スペクトル線は十分に明るく、距離150pc (代表的な星形成領域)のHerbig Ae/Be型星であれば、宇宙科学研究所1.3m地上望遠鏡でも感度的には観測可能である。 上記の研究活動により、将来のスペースからのスノーラインの直接観測を目指して、(1)技術開発と、(2)科学的な試験観測とを、本研究の中で実現する。
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| 評価結果 |
中間評価
A-: 研究領域の設定目的に照らして、概ね期待どおりの進展が認められるが、一部に遅れが認められる
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