研究課題/領域番号 |
23H05451
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分D
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
原島 秀吉 北海道大学, 薬学研究院, 教授 (00183567)
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研究分担者 |
佐藤 悠介 北海道大学, 薬学研究院, 助教 (10735624)
中村 孝司 北海道大学, 薬学研究院, 准教授 (20604458)
山田 勇磨 北海道大学, 薬学研究院, 教授 (60451431)
西山 伸宏 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (10372385)
内田 智士 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (20710726)
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研究期間 (年度) |
2023-04-12 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
203,840千円 (直接経費: 156,800千円、間接経費: 47,040千円)
2024年度: 40,040千円 (直接経費: 30,800千円、間接経費: 9,240千円)
2023年度: 43,680千円 (直接経費: 33,600千円、間接経費: 10,080千円)
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キーワード | LNP / スマートポリマー / mRNA / DDS / ナノ医療 / 腫瘍血管 / ミトコンドリア |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、内田が独自のRNA工学に基づき機能修飾したmRNAに対して、脂質系DDSで世界をリードする原島・佐藤がiCLの設計とLNPコア形成を行い、ポリマー系DDSで最先端の研究を展開する西山がスマート機能化ポリマーによるシェルを構築する。その結果、医・薬・工の密接な連携によりLNPを超越したコア-シェル型の革新的mRNA送達システムを創出する。本研究では、搭載したmRNAの発現率向上と発現期間持続化に加え、がんや中枢系、炎症性組織への選択的なmRNAデリバリーを実現し、疾患モデル治療における有用性を実証することで社会実装を目指す。
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研究実績の概要 |
iCLの構造最適化とコア形成:原島・佐藤は、中性リン脂質あるいはRNA塩基との相互作用に着目したiCLの新規ライブラリーの構築に取り組んでいる。本年は、中性リン脂質と相互作用するiCLについては戦略通りに細胞質送達効率の向上により遺伝子発現活性が改善されることを示した。また、RNA塩基との相互作用に着目したiCLについてはライブラリーの構築を完了した。分子間相互作用の強い新規iCLを見出し、当該iCLを含む脂質ナノ粒子の組成検討により、流体力学的直径40 nm程度の高活性な製剤を見出すことに成功した。 腫瘍血管の標的化:中村は、血中滞留性と細胞内動態の観点から、脂質ナノ粒子の組成を最適化することで、腫瘍血管内皮細胞に対する核酸導入効率の向上に成功した。 ミトコンドリア送達:山田は、マイクロ流体デバイスを用いたミトコンドリア標的型ナノカプセル(MITO-Porter)への核酸・ゲノム編集装置のパッケージングを検討し、100 nm以下の均一なナノカプセル調製に成功した。 スマート機能化ポリマーによるシェルの形成:西山は、当初計画通りに、pH応答性ベタインポリマー-脂質の最適化が完了し、mRNAデリバリーへの展開とmLiPoINDへの応用に向けた準備が整った。 mRNAの機能修飾:内田は、相補鎖を用いてmRNAを修飾するmRNA工学に取り組んでいる。本年は、親水性、疎水性分子を修飾した際のmRNA機能への影響についての基盤となる情報を得た。具体的には、翻訳活性に影響することなく親水性高分子(PEG)をmRNAに修飾できる条件を見出した。このシステムは、脾臓特異的mRNA送達において優れた効果を示した。また、疎水性分子を修飾したmRNAを脂質性ナノ粒子へ搭載することで、優れた生体内送達活性が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
iCLの構造最適化とコア形成:中性リン脂質と相互作用するiCLについては戦略通りの機能を有することを確認し、目標を達成した。一方で、血液循環中における分解が認められ、改善点が見出された。また、極小脂質ナノ粒子コアについては目標の30 nmに迫る粒子径の高活性脂質ナノ粒子が得られ、mLiPoIND構築のための基準製剤が得られた。 腫瘍血管の標的化:脂質ナノ粒子を用いた腫瘍血管内皮細胞への核酸導入効率の向上に成功した。 ミトコンドリア送達:マイクロ流体デバイスを用いたMITO-Porterへの核酸・ゲノム編集装置のパッケージングに成功した。 スマート機能化ポリマーによるシェルの形成:当初計画通りに、pH応答性ベタインポリマー脂質の最適化が完了し、mRNAデリバリーへの展開とmLiPoINDへの応用に向けた準備が整った mRNAの機能修飾:本年は、mRNA工学を用いて親水性高分子を修飾した際のmRNA機能への影響を評価したほか、疎水性修飾mRNAのLNPへの搭載をした。次年度以降、修飾mRNAをmLiPoINDへ搭載するための基盤となる情報が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
iCLの構造最適化とコア形成:iCLの血液時循環中における安定性を向上した誘導体を新たに合成し、機能評価する。また、極小脂質ナノ粒子コアの実現に向けた脂質組成のより詳細な脂質組成の検討により直径30 nmの高活性脂質ナノ粒子製剤を見出す。 腫瘍血管の標的化:腫瘍血管を標的としたがん治療法のメカニズム解明と処方最適化を行う。 ミトコンドリア送達:iCLライブラリーを活用してミトコンドリア標的に最適な脂質組成を探索する。 スマート機能化ポリマーによるシェルの形成:pH応答性ベタインポリマー-脂質を用いてmRNA搭載LNPを調製し、肝臓外組織に対するmRNAデリバリー効率を明らかにする。原島・佐藤の新規iCLとの融合研究を開始し、ポリマーを利用した微小LNPコアの安定化方法についても検討を行う。 mRNAの機能修飾:mLiPoINDのコアをなすmRNA LNPの機能向上を目指したmRNA工学の検討を継続する。さらに、環境応答性のタンパク質翻訳や細胞内mRNAの長寿命化に取り組む。高純度mRNAが翻訳活性や免疫刺激性にどのように影響するかについて、細胞種や組織依存性も含めより詳細に検討する。
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