研究課題/領域番号 |
23H05479
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分G
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐伯 泰 東京大学, 医科学研究所, 教授 (80462779)
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研究分担者 |
土屋 光 公益財団法人東京都医学総合研究所, 基礎医科学研究分野, 主任研究員 (90760132)
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研究期間 (年度) |
2023-04-12 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
203,840千円 (直接経費: 156,800千円、間接経費: 47,040千円)
2024年度: 40,040千円 (直接経費: 30,800千円、間接経費: 9,240千円)
2023年度: 43,680千円 (直接経費: 33,600千円、間接経費: 10,080千円)
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キーワード | タンパク質分解 / ユビキチン / プロテアソーム / 質量分析 / プロテアソーム病 |
研究開始時の研究の概要 |
ユビキチン・プロテアソーム系(UPS)は細胞内タンパク質分解の主要経路であり、ほぼ全ての細胞機能の制御に重要な役割を果たしている。最近、研究代表者らは、ユビキチン化基質を選別する仲介分子群やプロテアソームの液-液相分離を見出し、UPSが多様な分子によって時空間的に厳密に制御された分解系であることを提唱してきた。本研究では、ユビキチン・プロテオミクス解析、ユビキチン化学ツール、プロテアソーム病モデルマウス用いて、プロテアソーム経路の仲介因子とそれを駆動するユビキチンコード(情報)を細胞レベル、個体レベルで解析し統合的に理解することで、ライフサイエンス研究全般に貢献することを目的とする。
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研究実績の概要 |
(計画1)プロテアソーム基質の選別と輸送機構の解明:シャトル分子11種(RAD23A/B, UBQLN1/2/4, ZFAND2A/2B/3/4/5/6)について質量分析(MS)を用いたインタラクトーム解析、ユビキトーム解析を実施した。その結果、RAD23A/BはMYCやHIF1Aなどの転写因子を含む広範な可溶性基質に選択性があること、UBQLNファミリーは膜貫通ドメイン(TMD)をもつ膜タンパク質に選択性があることが明らかとなった。一方、ZFANDファミリーはタンパク質品質管理のE3リガーゼ群と相互作用すること、特にZFAND5とZFAND6はcIAP1と直接相互作用することを見出し、同ファミリーはE3リガーゼと協調した機能をもつ可能性が示唆された。 (計画2)プロテアソーム分解を誘導するユビキチンコードの全容解明:連結や鎖長など高次構造を規定したユビキチン鎖をもつユビキチン化基質を作製し、細胞内にインジェクションすることで、細胞内でプロテアソーム分解を誘導するユビキチン修飾構造を決定する。本年度は、自動ナノデリバリー装置を用いた蛍光タンパク質の細胞内導入、蛍光強度の追跡法などを確立し、K48鎖を付加したモデル基質(Ub-Halo・TMR)が細胞内で分解されることを確認した。 (計画3)マウス脳におけるプロテアソーム経路の機能解析:全身性プロテアソーム機能減弱マウス(Psmd12ヘテロ変異マウス)は、脳や肝臓においてプロテアソーム活性が約30%減少しており、肝機能低下、栄養不良、頭部形態異常、白血球数増加、動き出し遅延等の表現型を呈する。本年度は、脳組織切片からLMDによって小脳や海馬のタンパク質を抽出し質量分析計に供する実験系を整備した。また、肝臓のプロテオーム解析を行ったところ、酸化ストレスやアポトーシス、ミトコンドリア関連タンパク質の発現が亢進していることが明らかとなった。よって、プロテアソームのわずかな機能低下がプロテオスタシス維持に大きな影響を与えることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、DIA-MS法を用いた高深度プロテオーム解析、ナノデリバリー装置を用いた蛍光タンパク質の細胞内インジェクションと蛍光強度追跡の最適化、LMDを用いた固定切片からのサンプリングなど、本研究の実施に必要な各解析法を確立した。また、ZFANDファミリーが細胞内でユビキチン化基質やプロテアソームと相互作用することを明確にし、新しいクラスのシャトル分子であることを明らかにした。このように、研究は当初計画通りに順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
(計画1)プロテアソーム基質の選別と輸送機構の解明:研究代表者らが見出しているシャトル分子11種(RAD23A/B, UBQLN1/2/4, ZFAND2A/2B/3/4/5/6)について、MSを用いたインタラクトーム解析が完了している。次年度以降は、各ファミリーの多重ノックダウンにより変動するタンパク質群をDIA-MS法によりプロテオームワイドに解析する。 (計画2)プロテアソーム分解を誘導するユビキチンコードの全容解明:これまで、K48連結ユビキチン鎖、K63連結ユビキチン鎖、M1連結ユビキチン鎖を付加したモデル基質(Ub-Haloタンパク質)の調製法を確立しているため、今後、細胞内インジェクションを逐次実施し、まず連結様式と分解効率の関連性について解析する。 (計画3)マウス脳におけるプロテアソーム経路の機能解析:全身性プロテアソーム機能減弱マウス(Psmd12ヘテロ変異マウス)では、顆粒細胞層におけるユビキチン化基質の蓄積が観察されているため、LMDで同部位を単離しプロテオーム解析に供することで、どのような基質タンパク質が蓄積するか解析する。また、タモキシフェン誘導型神経細胞特異的プロテアソームKOマウスの開発に着手する。 ソームKOマウスの開発に着手する。
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