研究課題/領域番号 |
23H05485
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分I
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山田 泰広 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 教授 (70313872)
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研究期間 (年度) |
2023-04-12 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
204,230千円 (直接経費: 157,100千円、間接経費: 47,130千円)
2024年度: 42,770千円 (直接経費: 32,900千円、間接経費: 9,870千円)
2023年度: 47,320千円 (直接経費: 36,400千円、間接経費: 10,920千円)
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キーワード | 生体内プログラミング / リプログラミング / エンハンサー / 生体内リプログラミング |
研究開始時の研究の概要 |
エンハンサーランドスケープの形成により細胞は分化し、エンハンサー活性の維持により細胞の運命は安定的に維持されている。したがって、生体内でエンハンサー活性を人為的に書き換えることで、それぞれの細胞運命のみならず様々な生命機能に介入できることが期待される。本研究では、短期間の初期化因子の発現誘導により生体内でエンハンサー活性を抑制するマウスモデルを開発する。再生、免疫応答など様々な生体応答や、がんなどの病態において細胞に記憶されたエンハンサーの書き換えを試み、個体生命機能への影響を評価する。生体内エンハンサーリプログラミングによる個体生命機能の制御技術の構築を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では、短期間の初期化因子の発現誘導により生体内でエンハンサー活性を抑制するマウスモデルを開発する。再生、免疫応答など様々な生体応答や、がんなどの病態において細胞に記憶されたエンハンサーの書き換えを試み、個体生命機能への影響を評価する。生体内エンハンサーリプログラミングによる個体生命機能の制御技術の構築を目指す。本年度の研究の進捗状況を以下に示す。生体内エンハンサーリプログラミング技術の開発では、Rosa26遺伝子座にLSL-rtTAを有し、Col1a1遺伝子座にTetOP-初期化因子(OSKM)を有するマウスを作製した。エンハンサーリプログラミングによる免疫応答制御を目指した研究では、免疫細胞全体およびマクロファージ特異的にOSKMを制御可能なマウスを作製した。エンハンサーリプログラミングによるがん制御を目的とした研究においては、線維芽細胞特異的遺伝子の発現に依存してCreERT2を発現するマウス作製のためのコンストラクトを作製した。エンハンサーリプログラミングによる老化形質制御を目指した研究では、老齢マウスの膵島細胞のおよび早老症マウスモデルを対象にOSKMを短期間発現誘導し網羅的な遺伝子発現解析を実施した。組織再生を目指した研究においては、MYCL遺伝子誘導による膵島細胞の増殖モデルを使用して、MYCL遺伝子のChIP-seqおよびATAC-seqを実施するための条件検討を行った。以上のとおり、生体内エンハンサーリプログラミングによる個体生命機能の制御技術の構築に向けて、マウスモデルの作製、解析技術基盤の立ち上げが順調に進んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、再生、免疫応答など様々な生体応答や、がんなどの病態において細胞に記憶されたエンハンサーの書き換えにより個体生命機能の制御を目指す。エンハンサーリプログラミングを誘導するために、短期間の初期化因子の発現誘導可能なマウスモデルの開発を進めた。本年度は、Rosa26遺伝子座にLSL-rtTAを有し、Col1a1遺伝子座にTetOP-初期化因子(OSKM)を有するマウスを作製した。免疫細胞全体およびマクロファージ特異的にOSKMを制御可能なマウスの作製を終え、エンハンサーリプログラミングによる免疫応答制御を目指した研究開始の準備が整った。がん制御を目的とした研究においては、線維芽細胞特異的遺伝子の発現に依存してCreERT2を発現するマウス作製のためのコンストラクト作製が完了し、ES細胞へのターゲティングの準備が整った。老化形質制御を目指した研究では、老齢マウスの膵島細胞のおよび早老症マウスモデルを対象にOSKMを短期間発現誘導し網羅的な遺伝子発現解析を実施した。組織再生を目指した研究においては、MYCL遺伝子誘導による膵島細胞の増殖モデルを使用して、MYCL遺伝子のChIP-seqおよびATAC-seqを実施するための条件検討を行い、実際に解析を実施する準備が整った。以上のとおり、様々な生体応答や、がんなどの病態に対して、生体内エンハンサーリプログラミングによる個体生命機能の制御を目指した研究において、マウスモデルの作製、解析技術基盤の立ち上げが順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
生体内エンハンサーリプログラミング技術の開発では、本年度に作製したRosa26遺伝子座にLSL-rtTAを有し、Col1a1遺伝子座にTetOP-初期化因子(OSKM)を有するマウスを使用してタモキシフェン依存的にCre-loxP組み換えを誘発するシステムを組み合わせることで、タモキシフェン依存的に目的細胞特異的にOSKMが発現誘導(ON/OFF)可能なマウスを作製する予定である。エンハンサーリプログラミングによる免疫応答制御を目指した研究では、免疫細胞全体およびマクロファージ特異的にOSKMを制御可能なマウスを利用して、免疫細胞においてOSKMを発現した後の形質、転写状態の変化を解析する予定である。エンハンサーリプログラミングによるがん制御を目的とした研究においては、線維芽細胞特異的遺伝子の発現に依存してCreERT2を発現するマウスとRosa26遺伝子座にLSL-rtTAを有し、Col1a1遺伝子座にTetOP-OSKMを有するマウスを組み合わせ、がん間質細胞でOSKMが誘導できるマウスの作出を目指す。老化形質制御を目指した研究では、老齢マウスの膵島細胞のおよび早老症マウスモデルを対象にOSKMを短期間発現誘導した細胞での遺伝子発現変化に基づき、老化形質への影響、その分子メカニズムの理解を目指す。組織再生を目指した研究においては、MYCL遺伝子誘導による膵島細胞の増殖モデルを使用して、MYCL遺伝子のChIP-seqおよびATAC-seqを実施する。以上の取り組みを実施し、知見を統合することで、生体内エンハンサーリプログラミングによる個体生命機能の制御技術の構築を目指す。
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