研究課題/領域番号 |
23H05486
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分I
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮園 浩平 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 卓越教授 (90209908)
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研究分担者 |
渡部 徹郎 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (00334235)
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研究期間 (年度) |
2023-04-12 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
203,840千円 (直接経費: 156,800千円、間接経費: 47,040千円)
2024年度: 40,040千円 (直接経費: 30,800千円、間接経費: 9,240千円)
2023年度: 43,680千円 (直接経費: 33,600千円、間接経費: 10,080千円)
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キーワード | 浸潤・転移 / シグナル伝達 / がん微小環境 / 実験動物モデル / 分子イメージング |
研究開始時の研究の概要 |
悪性度の高いがん細胞ではしばしば間葉系細胞の特質が見られる。我々は進行膵臓がん、口腔がん、神経膠芽腫 (GBM) で見られる間葉系がん細胞の特質とその鍵となる分子に着目して研究を進めてきた。またこれらのがんの間葉系がん細胞を標的とした新規治療法の開発に向けて研究を進めている。本研究課題では上記の3つのがんを中心に、間葉系がん細胞の特質の分子機構の理解を通して難治がんの革新的な治療法の開発に向けた基礎研究を行う。難治がんの究極の表現型の一つとも言える間葉系がん細胞の多様性・可塑性を考慮しつつその特徴を明らかにすることでがんの本質の理解に迫ることを目指す。
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研究実績の概要 |
1)進行膵臓がん細胞におけるSMAD4の異常と間葉系がん細胞の特質:野生型SMAD4を発現する膵臓がん細胞株において、CRISPR/Cas9システムによりSMAD4遺伝子をノックアウトすると、TGF-βファミリーの因子の発現がmRNAレベルで上昇し、細胞内シグナル伝達が誘導されることを見出した。逆に、SMAD4非発現株および変異株においてSMAD4を強制発現すると当該TGF-βファミリー因子の発現減少が確認された。また、RNA-seq解析によりTGF-βファミリーシグナルによってEMT転写因子の発現が正に制御されていることが明らかとなった。 2)口腔がん細胞からSlug依存性と非依存性EMTにより形成される間葉系細胞の特質:これまで口腔がん細胞におけるTGF-β標的遺伝子KRTAP2-3がSlug非依存性経路を介してEMTを誘導することを明らかにしてきた。令和5年度は、このSlug非依存性経路によって誘導される間葉系細胞を特徴づける2つの遺伝子を同定し、これらが頭頸部がん患者の予後不良因子であり、口腔がん細胞のEMTを誘導することを明らかにした。また、ヒト口腔がん細胞由来の腫瘍形成がTGF-βシグナルを阻害することで抑制されることを報告した。今後はすでに同定した遺伝子についてその機能の解析を分子・細胞から個体レベルで進めるとともに、臨床的意義を検討する。 3)GBM細胞におけるPMTの誘導機構と間葉型腫瘍細胞の特質:Mesenchymal型GBM細胞に特異的に発現する分子として我々が見出したHVEM (別名TNFRSF14)について研究を行い、HVEMの細胞内シグナルとしてNF-κBの活性化が見られたことからPMTに重要な役割を果たすことが示唆された。さらにHVEMのノックアウト細胞の解析などから抗がん剤や分子標的薬剤耐性に関わることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は当初の計画に従い、順調に進んでいる。 1)進行膵臓がん細胞におけるSMAD4の異常と間葉系がん細胞の特質では、7種類に膵臓がん細胞株を用いて研究を行い、SMAD4の発現と当該TGF-βファミリーの因子の発現との関連が明確となり、さらにその後の遺伝子ノックアウトの実験などにより我々の当初の仮説を確認することができたことから、今後の研究を円滑に進める上で重要な成果を得ることができた。 2)口腔がん細胞からSlug依存性と非依存性EMTにより形成される間葉系細胞の特質では、Slug非依存性経路によって誘導される間葉系細胞を特徴づける2つの遺伝子を同定したことから、これらの遺伝子の解析を進めることが可能となった。 3)GBM細胞におけるPMTの誘導機構と間葉型腫瘍細胞の特質については、HVEMのPMTにおける役割の重要性を確認できたと思われる。令和5年度にはヒトGBMのPDX株を入手して解析を開始しており、新たな方向性での実験を進めることが可能となると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は当初の計画通りに研究は進捗している。令和6年度以降も新たな研究手法を導入しつつ当初の研究計画に沿って研究を継続する。特筆すべきことは、令和5年度は2件の特許申請に至ったことである。本研究課題の成果は、臨床応用に直結するものがいくつかあることから、成果の論文発表については知財との関連を考慮しつつ、適切に外部への公表を行っていきたい。
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