研究課題/領域番号 |
23K00011
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
|
研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
栗原 裕次 東京都立大学, 人文科学研究科, 教授 (40282785)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
|
キーワード | 存在論 / 正義論 / 法の理論 / 人間論 / 善 / 美 / 正義 / イデア論 / 言語分析 |
研究開始時の研究の概要 |
プラトン哲学は一貫して善・美・正義の本性を探究しているが、共にイデア論を用いた解明を試みる中期対話篇と後期対話篇とでは、考察の方向性は異なっている。本研究は、中期イデア論の超越論的説明と対比しつつ、後期著作『ソフィスト』『政治家』『テアイテトス』『ピレボス』のテキスト解釈を通して、後期イデア論に顕著な言語使用の分析が哲学的学びの実践となっている点を明らかにし、プラトンがイデアの超越性を保持しながら善・美・正義の解明に挑む道を着実に歩んでいることを示す。その作業により、イデアを学びの対象と捉え、哲学実践を倫理の根底に置いたプラトン哲学が相対主義に堕すことのない今日的意義をもつことを詳らかにする。
|
研究実績の概要 |
プラトン後期哲学における善・美・正義の学習論と倫理学の解明を目指し、2023年度は4つの側面から研究を進めていった。第1に、2022年度に学会発表で取り扱った『ソフィスト』篇における〈異〉のイデアの問題についてテキストの考察を深めて論文にし、国際プラトン学会に投稿した。本論文は存在論の文脈で論じられる〈ある〉と〈異〉のイデアが学習論への展開を秘めていることを示唆するものとなっている。 第2に「わざと不正をする人が心ならずも不正をする人よりすぐれている」ことを論じるプラトン『小ヒッピアス』の読解に取り組んだ。プラトンの正義論と知の理論の関係に注意し、〈よい人〉である英雄を語ることが人の学びや教育(パイデイア)に占める役割に光を当てた。その成果を台湾(中国文化大学)で開かれた会議で発表し、討議から本研究に関わる貴重な意見を得た。その上で同じ主題を研究し論文を書き直して、2024年8月開催の国際会議に投稿した。 第3に、プラトンにおける法の理論を『政治家』『小ヒッピアス』『クリトン』『ポリテイア』の読解を通じてその探究に着手した。特に、法と正義の関係や「悪法」「無法」の問題、法による市民の教育について考察を開始した。この点に対するプラトンの基本的思考が初期・中期・後期を通じて不変かどうかを問う意義を認めた。その成果の一部を活用して「プラトンと民主主義」という一般市民向けの講義を行った。 第4に、後期対話篇『ティマイオス』を研究会や授業で読み進めた。宇宙論という中心課題が冒頭の政治哲学や最後半の人間論との関係で受けとめられるとき、宇宙・自然の一部としての人間がどうポリスを営んでどう生きるかという実践的課題として受けとめられた。 以上のように、2023年度の研究は、取り扱った対話篇と問題の多様さにおいて当初の目的をより広い視野から達成すべく推し進められたと言える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全期間の初年度として、研究に必要な基本図書を購入して研究全体の基礎固めをすることができた。また、国際会議への参加を通じて研究課題に関する成果を報告し、かつ海外の研究者と対面で議論を交え、意見交換をすることができた。2024年度の国際会議での発表が認められた。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度以降も本研究の進め方は基本的に同じであるが、内容について言えば、プラトンの学習論と倫理学を人間論の方向から考察を進める。その際、人間を一般市民と英雄・哲学者に区別した上で、神と関係させて論じるプラトンの独自性を明らかにする。これまで通り、国際会議の場などを通して、国際的な共同研究を推進していく。
|