研究課題/領域番号 |
23K00026
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
池田 真治 富山大学, 学術研究部人文科学系, 准教授 (70634012)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2027年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 数理哲学史 / 点 / 連続体 / ライプニッツ / ルヌーヴィエ / ブレンターノ / 延長 / 力 / 連続体の迷宮 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究計画では, 1. 「連続体の迷宮」をめぐるライプニッツの数理と自然の哲学 2. 点と連続体の関係をめぐる数理哲学史 という互いに連関する二つのテーマを,並行的かつ総合的に研究する. 一方では,連続体問題に対するライプニッツの思想の歴史的な発展を内在的に明らかにする.とりわけその思想を,彼の哲学と数学・自然学の関係において体系的に解明する.他方では,点と連続体をめぐる論理数学思想の観点から,その問題の歴史的起源と現代的展開を踏まえることで,ライプニッツの連続論の独自性と,歴史的・現代的意義を解明する.
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研究実績の概要 |
2023年度においては,本研究の目的である二つの軸,点と連続体の数理哲学史と,ライプニッツの「連続体の迷宮」をめぐる思想に照らして,主に三つのテーマで研究を進めた. 第一に,19C後半~20C初頭における連続体をめぐる哲学的議論について,ルヌーヴィエの無限論と,ブレンターノの連続論を扱った.前者については,ルヌーヴィエの現実的無限批判および点からの連続体構成批判の根底にある有限主義に注目し,その論拠を彼の体系的著作『一般的批判の試論』で主張された表象主義と「数の原理」に分析した.また,後者については,ブレンターノの遺稿『連続的なものについて』およびその『補遺』について翻訳(未公表)を行なった上で,ブレンターノがそこで展開した連続体の数学的構成(デデキントやポアンカレ)に対する批判を吟味した.そこでは,ブレンターノが直観からの抽象によってすでにわれわれが経験的に連続概念を把握していること,および独自の境界理解において数学的な連続体構成を批判していることを明らかにした. 第二に,連続体の本性と起源をめぐる中・後期ライプニッツの考察を,彼の力の形而上学と自然哲学に分析した.そこでは,ライプニッツが物体がもつ「延長」が,力の「拡散」によって形成されていることを分析した.その上で,「拡散」が厳密に何を意味しているのかを検討した. 第三に,〈点〉概念をめぐる数理哲学史にかんして,主に古代から近世の時代を中心にサーベイを進めた.ライプニッツの点概念について初期から後期までサーベイし,その哲学における重要性と,理解の変遷を整理した.また,点概念の数理哲学史的サーベイについては,引き続き古代から近世の著作者たちを調べつつ,とりわけ16-17世紀の数学者たちによるユークリッド『原論』に対する注解や,当時の数学テキストから,その定義や理解の特徴を整理した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までのところ,本研究課題の進捗はおおむね順調である.点と連続体をめぐる数理哲学史のサーベイについては徐々にではあるが進展してあり,その成果の一部については,ライプニッツの点概念にかんする研究発表にも反映することができた. また,新たに焦点を当てて分析を進めている,19世紀後半から20世紀初頭における連続論については,ルヌーヴィエやブレンターノといった哲学者に注目して一定の見通しを得た.時代的なコンテキストとしては,前者に関してはオーギュスト・コント,後者に関してはボルツァーノなどにも遡って位置付ける必要がある.ただし,点概念にしても連続論にしても,対象としては膨大であるため,今後はいっそう注目すべき哲学者・数学者をしぼり,その意義を十分に吟味した上で,まずは全体像となるような概略を与えたい. ライプニッツと「連続体の迷宮」をめぐる研究にかんしては,中期における力の形而上学の展開を踏まえ,力の拡散としての連続体の構成について,一定の説明を与えることができた.今後は,研究発表したものについて論文化を進めていきたい.
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今後の研究の推進方策 |
まず,19世紀以降の展開として,ルヌーヴィエの連続論については,彼がLa Critique Philosophique誌に掲載した連載である『形而上学の迷宮』を中心に,さらに継続して研究を進めていく.また,ブレンターノについては,さらに著作の分析と精査を進めつつ,「思惟的存在者(ens rationis)」の拒否や後期の存在論「もの主義(Reism)」との関連性を探っていく. 次に,ライプニッツと「連続体の迷宮」については,中・後期において,連続性概念の本性と起源が力の「拡散」であることと関連して,原初的力と派生的力を結びつけるresultansすなわち「結果」ないし「帰結」の概念が関わることを研究発表で示した.しかし,この「結果」概念そのものがもつ含意については,まだ十分明らかにされていない.そこで,いかにして根源的力から延長および連続性が「結果」するとライプニッツが考えたのか,解明したい.また力の形而上学のもとでの物質的な延長の本性についての理解が,幾何学的な延長ないし幾何学的空間の概念との関連についても考慮しなければならない.また,初期ライプニッツがなぜ「連続体の迷宮」に向かうことになったのか,初期の衝突の問題や初期の自然哲学や運動論の研究および書簡において解明していきたい.こうした研究にあたっては,アカデミー版のライプニッツ全集に収録されている重要な論稿についても,翻訳や読解を順次進めていく. 第三に,点概念の数理哲学史については,今後も歴史的なサーベイを継続しつつ,非有点幾何学やメレオロジーなどの現代的な展開についても探求していければと考えている. これらの研究を通じて,それぞれの接点を考える.そして,点や連続体の概念にまつわる問題として浮上せざるをえない,「数学的存在」の位置付けについても,ライプニッツにおけるそれを中心として,数理哲学史的な研究を再開していきたい.
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