研究課題/領域番号 |
23K00037
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
持地 秀紀 上智大学, ヨーロッパ研究所, 研究員 (60908846)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | ベルクソン / コレージュ・ド・フランス講義録 / プロティノス / 霊魂論 / 19世紀フランス哲学 / ギリシア哲学受容 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、アンリ・ベルクソンを中心的な研究対象としつつ、19世紀フランスで古代ギリシア哲学がどのように受容されたかを探究する。近年公刊されたベルクソンのコレージュ・ド・フランス講義録において、古代ギリシア哲学は単なる過去の哲学としてではなく、きわめてアクチュアル(現代的)なものとして積極的に再解釈されている。本研究では、このようなベルクソンのギリシア哲学解釈を中心に、それと関連する他の哲学者によるギリシア哲学解釈も視野に入れて調査を行い、それによって19世紀フランスにおけるギリシア哲学受容の一端を明らかにすることを目指す。
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研究実績の概要 |
初年度は、ベルクソンが古代ギリシア哲学のうちにどのようなアクチュアリティ(現実性・現代性)を見出していたかを探究した。本研究で特に研究対象とするコレージュ・ド・フランス講義録を紐解くことで明らかとなったのは、彼がとりわけ古代ギリシアの新プラトン主義の哲学者であるプロティノスの心理学=霊魂論(psychologie)のうちに、「心的な生」に関する当時の心理学よりも現実的な視座を読み取っていたという点である。 このことは、以下の二つの講義録でベルクソンが当時の心理学(原子論的心理学や連合主義的心理学)を批判しながら自らの理論をより現実的なものとして提示する際に、陰に陽にプラトニズムの霊魂論を参照していることから明らかである。すなわち、1902年度の『時間観念の歴史』では、「意識」を心的な諸要素の統合と捉える当時の原子論的心理学の見解に対して、それをより高次の統一性からの分割の結果生じてくるものと捉える説が、「心的な生」についてのより現実的な視座として提示されている。このとき、ベルクソンはこのような視座を提供した最初の哲学者としてプロティノスに言及している。また、1903年度の『記憶理論の歴史』では、あらゆる記憶を同一平面上にあるものと想定する当時の連合主義的心理学の説に対して、真に現実的な「記憶の生」は階層的な諸平面から成る立体的な図式において捉えられると述べられており、そして、この図式のなかで記憶が潜勢状態から現勢状態へと移行する過程を論じる際、ベルクソンはそれを、肉体を求めて物質化する魂というプラトニズムの霊魂論と重ね合わせて語っている。 以上のことから、ベルクソンは当時の心理学の諸理論よりも、古代ギリシアの哲学者であるプロティノスの霊魂論のうちに、「心的な生」に関するよりアクチュアルな視座を認めていたことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究により、ベルクソンが古代ギリシアの哲学者プロティノスの霊魂論のうちに、「心的な生」に関するアクチュアルな視座を見出していたことが明らかとなった。そして、当時の心理学に対する批判的な文脈のなかで、古代の霊魂論を参照し、それをよりアクチュアルな視座として評価する読解は、ベルクソンに固有の独創的な視点であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、初年度の研究によって明らかとなったベルクソンのギリシア哲学解釈を、同時代の他の思想家によるギリシア哲学解釈と比較することで、その独創性を多角的に明らかにしていく。当時のフランスにおけるプロティノス研究として参照候補となるのは、ジュール・シモン(1845)、ヴァシュロ(1846-1851)、ラヴェッソン(1846)、シェニェ(1892)などである。これらベルクソンに先行する思想家たちによってプロティノスがどのように読解・受容されていたかを整理していく。
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