研究課題/領域番号 |
23K00044
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
|
研究機関 | 釧路工業高等専門学校 |
研究代表者 |
池田 裕輔 釧路工業高等専門学校, 創造工学科, 講師 (80748525)
|
研究分担者 |
武内 大 立正大学, 文学部, 教授 (10623514)
増山 浩人 電気通信大学, 情報理工学域, 准教授 (30733331)
植村 玄輝 岡山大学, 社会文化科学学域, 准教授 (40727864)
齋藤 元紀 高千穂大学, 人間科学部, 教授 (50635919)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | 超越論的哲学 / 現象学 / 形而上学 / フッサール / ハイデガー / フィンク / カント / コペルニクス的転回 |
研究開始時の研究の概要 |
「現象学の伝統」においては「対象が認識に従う」とするカントのいわゆる「コペルニクス的転回」が転倒され、「対象そのものの与えられ方」の分析(「志向的相関性」の分析)に依拠する新しい超越論的哲学の多様な可能性が切り拓かれた。しかし、これまで「超越論的哲学」という観点から「現象学の伝統」が包括的に解明されることは少なく、また、その解明に必要となる研究者間のネットワークも十分とはいえない。このことから、本研究計画は「現象学の伝統」に属する様々な論者およびカントを専門とする研究者間のネットワーク構築をおこない、この哲学的伝統を「超越論的哲学」という観点から包括的に解明する。
|
研究実績の概要 |
本研究課題は、フッサール、ハイデガーやフィンクに代表される「現象学の伝統」における「超越論的哲学」が持つ理念と内実を体系的観点から解明し、その哲学史的位置づけをおこなうことを目的とするものである。その際、現象学の伝統における「超越論的哲学」の「方法」(「経験」分析という方法)、および、その「目的」(「形而上学」の基礎づけ)というふたつの大きな観点を設定したうえで、「コペルニクス的転回」、「超越論的」概念および「形而上学」という三つのトピックを中心にカントとの比較をおこなうことで、研究目的の達成を図る。 2023年度は、現象学の伝統における「経験」の分析という「方法」が持つ特徴や固有性を明らかにする作業に重点をおいて研究がすすめられ、その哲学史的な位置づけをおこなうために、「対象が認識に従う」とするカントの「コペルニクス的転回」という着想との比較・対照作業がおこなわれた(主に、研究代表者である池田が担当)。加えて、現象学の伝統における「超越論的哲学」が、その基礎づけを「目的」とする「形而上学」の内実の解明(主に、研究分担者である齋藤が担当)、現象学における「超越論的観念論」と「形而上学」の関係に関する研究(主に研究分担者である植村が担当)、また、これとカントにおける「形而上学」概念の比較・検討するために必要となる基礎的作業として、カントにおける形而上学概念の形成史的研究(研究分担者である増山が担当した)等が実施された。 これらの研究に関しては、対面での研究会および複数回のオンライン方式での研究会を実施することで研究分担者および研究協力者間で共有し、基礎的事項に関する共通了解の確立やすり合わせ作業を継続的におこなった。その成果の一部は、研究分担者および研究協力者のそれぞれが、学会報告や論文等の仕方で既に公開しており、また、次年度以降もその積極的な公開に取り組む予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、当初の計画通り、現象学の伝統における超越論的哲学を、「方法」という観点から解明することを目的として、この伝統におけるカントの「コペルニクス的転回」解釈の内実の解明とその哲学史的な位置づけ作業を実施した。そして、フッサールにおける「コペルニクス的転回」解釈に関する口頭発表をおこなうなど、研究成果の公開に関しても一定以上の実績をのこしている。また、これと並行して、当初の計画では主に第3年次に実施予定であった現象学の伝統とカントにおける「形而上学」に関する研究にも着手し、複数の研究分担者が、既に、その研究成果の一部を公開している。 しかし、上記の研究を進めるにつれて、カントと現象学の伝統における「批判」という表現が持つ意味とその実施方法の相違や「直観」および「現象」概念をめぐる両伝統の対立という、より基礎的な研究とそれらに関する現象学研究者とカント研究者のあいだでの基礎的な共通了解を慎重に確立する作業の必要性が徐々に明らかとなった。すなわち、それらの作業を欠いては、当初の研究目的を充分に満たす成果をあげることは難しいという見込みが高まった。このことから、第1年次は、一定以上の研究成果をあげた一方で、より基礎的な研究の必要性が浮上したことから、研究の進行状況は「やや遅れている」ものといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画では、2024年度には、現象学の伝統における「超越論的」概念の多義性をカントを参照項として整理する作業に従事する予定であった。しかし、「現在までの進捗状況」で記したように、2023年度の共同研究活動を通じて、より基礎的な研究の必要性が浮上した。特に、現象学の伝統における「直観」概念と超越論的哲学の「方法」との関係を解明し、この点に関する基礎的な共通了解を確立することの必要性が痛感された。このことから、2024年度は、当初の計画を修正し、現象学の伝統における「直観」概念を、この伝統におけるカント解釈を参照とすることで明らかにする作業を集中的に実施し、「超越論的」概念の多義性の解明・整理作業に関しては、あくまで副次的主題として並行して取り組むものとする。
|