研究課題/領域番号 |
23K00057
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01020:中国哲学、印度哲学および仏教学関連
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研究機関 | 身延山大学 |
研究代表者 |
望月 海慧 身延山大学, 仏教学部, 教授 (70319094)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | アンソロジー / 大乗経典 / 修習次第経集 / 経集 / 集菩薩学論 / 大経集 / ナーガールジュ / ラトナーカラシャーンティ / インド仏教 / 僧院 / 大乗仏教 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、インドの仏教僧院における経典アンソロジーが果たした役割を解明することである。具体的には、インド仏教の経典アンソロジー文献であるナーガールジュナの『経集』、シャーンティデーヴァの『集菩薩学論』、ディーパンカラシュリージュニャーナの『大経集』、著者不明の『修習次第経集』に引用される経典の相関関係を調査し、そこで得られたデータを後期インド仏教とチベット仏教の論書における経典の引用と比較することで、アンソロジー文献がインド・チベット仏教において果たした役割を明らかにする。
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研究実績の概要 |
チベット大蔵経所収の経典アンソロジーのうち編者不明の『修習次第経集』を最初に取り上げ、チベット語訳の校訂テキストと和訳を完成し、引用経典の典拠のリストを作成した。また、テキストの構成を明らかにし、そこに引用される経典を、ナーガールジュナの『経集』、シャーンティデーヴァの『集菩薩学論』、ディーパンカラシュリージュニャーナの『大経集』に引用される経典と比較した。これらの作業により、全引用経典のうち『大宝積経』所収の経典からの引用が全体の59%に及び、本アンソロジーが同経に大きく依拠していたことが明らかになった。また、他のアンソロジーには引用されない経典数は27に及び、全体の60%になり、中でも引用数が最も多い『大般涅槃経』は、全引用数の16%になる。テキストの構成は、冒頭偈における八項目、(1) 時分円満は得難い、(2) 善友に頼ること、(3) 師の随念、(4) 無常の修習、(5) 厭離、(6) 聖諦、(7) 不退転の輪、(8) 三輪清浄に基づいているものの、第1章の「時分円満は得難い」、第2章「聖諦」、第3章「不退転の輪」、第4章の「三輪清浄」となり、(2)から(4)は第1章において細分化されていることがわかった。また、第3章は、慈愛と悲心と菩提心の修習、特別な帰依の修習、帰依の学処、菩提心の学処に、第4章は六波羅蜜に細分化されていることがわかった。これらの項目は、先行するアンソロジー文献との類似が見られるものの、引用経典には本アンソロジーの独自性が見られることから、経典引用の差別化を意図して編纂された可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
『修習次第経集』のチベット語訳の校訂テキストと和訳を完成し、引用経典のリストを作成した。引用文の比定については、未確認の経典がないため、各経典のテキスト(サンスクリット、チベット語訳、漢訳)に典拠を確認する作業については順調に進んでいる。このリストを先行する4つのアンソロジー文献、『経集』、『集菩薩学論』、『大経集』、『修習次第経集』における引用リストに加えることで、アンソロジー文献のデータベースが完成した。この資料に基づき、今後相互の関係を分析することにより、僧院におけるアンソロジーの役割について分析する。これらの研究成果については立正大学で開催された第75回日蓮宗教学研究発表大会において報告した。 また、準備段階において作成したナーガールジュナの『経集』とラトナーカラシャーンティの注釈書のチベット語訳校訂に基づき、和訳を完成した。今後、校正作業を引き続き行い、出版に向けての準備を行なう。
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今後の研究の推進方策 |
まず、初年度に行った『修習次第経集』に対する調査研究を、2024年8月にオーストリアのウィーン大学で開催される「Madhyamaka in South Asia and Beyond」の国際会議で発表する。また、『修習次第経集』のチベット語訳校訂テキストとその和訳の校正作業を引き続き行い、テキストを公表する。また、所属学会で中国や日本などのほか地域の仏教におけるアンソロジー研究者を募り、仏教アンソロジーに関するパネル発表を計画する。これらの成果公表により、仏教アンソロジー研究を国内外に広く周知し、仏教アンソロジー研究の波及を図る。 作成したアンソロジー文献における経典のデータベースを用いて、カマラシーラの『修習次第』、ディーパンカラシュリージュニャーナ『菩提道灯論釈』、ガンポパの『道次第解脱荘厳論』、ツォンカパの『菩提道次第大論』に引用される経典を分析し、アンソロジー文献が果たした役割について解明する。この結果については、2026年に開催される国際チベット学会において発表する予定である。
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