研究課題/領域番号 |
23K00060
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01020:中国哲学、印度哲学および仏教学関連
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研究機関 | 筑紫女学園大学 |
研究代表者 |
川尻 洋平 筑紫女学園大学, 文学部, 准教授 (70712206)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 『パラートリンシカー』 / 『ラグヴリッティ・ヴィマルシニー』 / 『反省的考察注』 / 『反省的考察注』註釈 / 南インド / アヌッタラ / アビナヴァグプタ / クリシュナダーサ / 『パラートリンシカー・ラグヴリッティ』 / カシュミール |
研究開始時の研究の概要 |
11世紀以降シヴァ教一元論の伝統が伝えられた南インドにおいて、最高女神パラーのみを崇拝するアヌッタラと呼ばれる一派が最も優勢であった。アヌッタラでは、『パラートリンシカー』が基盤とされる。そして、それに対する注釈として、南インドでのみアビナヴァグプタ(ca. 975-1025)に帰せられる『ラグヴリッティ』が、そこでは重要な地位を占めていた。しかし、アビナヴァグプタの『ヴィヴァラナ』ではなく、なぜ『ラグヴリッティ』が重要視されたのかについては明らかではない。本研究では、『ラグヴリッティ』とそれに対する諸注釈の文献学的研究を通じて、南インドにおいてそれが重要視された背景を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、最高女神パラーのみを崇拝するアヌッタラと呼ばれる一派が優勢であった南インドにおいて、アビナヴァグプタの『パラートリンシカー・ヴィヴァラナ』よりも『パラートリンシカー・ラグヴリッティ』が重要視された背景を明らかにすることである。 インドのトリヴァンドラムのOriental Research Institute and Manuscripts Libraryで、写本カタログに『パラートリンシカー・バッターリーカー』(No. 1889D)と『パラートリンシカー・スタヴァ』(No. 8318A, 8934A1)と記載されている写本を調査した。前者は、その冒頭に『パラートリンシカー・ラグヴリッティ』の帰敬偈が附されている点で興味深いが、『パラートリンシカー』であることが明らかになった。後者についても、No. 8318Aの写本は『パラートリンシカー』であった。No. 8934A1については確認中である。チェンナイのGovernment Oriental Manuscript Libraryでは、パラー崇拝の儀礼文献の写本資料を蒐集した。 写本資料を整理する中で、『反省的考察注』に対する註釈(以下、『反省的考察注』註釈)の存在を確認した。興味深い点として、『反省的考察注』註釈には、『反省的考察注』の現存する写本に欠く部分の註釈が残されている点が挙げられる。また『反省的考察注』註釈は、『パラープラーヴェーシカー』を、『反省的考察注』とは異なり、『ビージャウパニヤーサ』と言及している。『反省的考察注』註釈は、『ビージャウパニヤーサ』として言及するクリシュナダーサの『パラートリンシカー・ラグヴリッティ・ヴィマルシニー』を参照している可能性を指摘できる。 これらの成果の一部については、日本印度学仏教学会や広島哲学会において研究発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
南インドに残されている『パラートリンシカー』に関連する資料に関しては、トリヴァンドラムとチェンナイを訪れ、概ね必要な資料を得ることができた。これまでに蒐集した資料の内、南インドで著されたアヌッタラ文献に関連する『アヌッタラサンヴィットアルチャナーチャルチャー』などの電子テキスト化を、研究協力者の石村克氏の協力も得て行った。 トリヴァンドラムには、『パラートリンシカー・ラグヴリッティ』写本が二つ(No. 1107, 1108)所蔵されていることがRaghavanに報告されていた。その内、所在不明であった写本(No. 1108)については、『パラートリンシカー・ラグヴリッティ・ヴィマルシニー』を含む写本(No. 2108)に含まれることを確認した。この写本も加えて『パラートリンシカー・ラグヴリッティ』の校訂テキストおよび翻訳を作成するために、まずアビナヴァグプタの『パラートリンシカー・ヴィヴァラナ』と大きく異なる読みを伝える詩節に関して、クリシュナダーサの『パラートリンシカー・ラグヴリッティ・ヴィマルシニー』の読解を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
『パラートリンシカー・ラグヴリッティ』と『パラートリンシカー・ラグヴリッティ・ヴィマルシニー』の読解を継続して進めるが、タンジョールのSarasvati Mahal Library所蔵の『パラートリンシカー・ラグヴリッティ』写本については、写本撮影の許可がとれないため現地での校合が必要である。 『パラートリンシカー・ラグヴリッティ・ヴィマルシニー』の著作意図や引用文献等を明らかにすることによって、クリシュナダーサとその師マドゥラージャの年代を再検討する。マイソールには、サダーナンダに帰せられる註釈『パラートリンシカー・ヴィヴァラナ』(No. B170/2)が残されている。この註釈について、その著作背景や内容は全く知られていないため、入手する必要がある。これらを通じて、南インド各地における『パラートリンシカー』の伝承状況を調査する。 南インドでアヌッタラ文献の伝承状況を明らかにするためには電子テキスト化が不可欠である。引き続き、電子テキスト化の作業を継続する必要がある。同一タイトルの写本であっても異同が多い場合が見られるため注意を要する。
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