研究課題/領域番号 |
23K00106
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01040:思想史関連
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
大澤 聡 近畿大学, 文芸学部, 准教授 (30712591)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2026年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 教養主義 / 出版業界誌 / 三木清 / 出版社 / 大衆 |
研究開始時の研究の概要 |
大正期の教養主義ブームは、1920年代後半のマルクス主義の隆盛により沈静化した。しかし30年代前半のマルクス主義への弾圧を経て、30年代後半に復活する。ふたつの教養主義の間で台頭したのは大衆(マス)の存在だ。円本以降、急速に出版大衆化が進んだこともあり、知識人の教養言説の文脈は変化する。教養主義の歴史については一定の研究蓄積があるが、出版大衆化さらには大衆消費社会化が教養主義に与えた影響に関しては未解明のままだ。そこで本研究は、現物の稀少な複数の出版業界誌、未公開の三木清書簡、出版社内部資料など3系のアーカイブ化を具体的な作業とし、1920-40年代の教養主義の変容過程を総合的に明かにする。
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研究実績の概要 |
本年度は事前に掲げておいた3つの分割的な小課題のうち、①「1920-40年代に発刊された各種の出版業界誌の収集および解析」を中心に進めた。『雑誌の雑誌』(雑誌の雑誌社、大正14年12月創刊)、大阪今日新聞社編『新聞の新聞』(大阪今日新聞社、大正13年9月)、円城寺艮『新聞雑誌広告術』(佐藤出版部、大正5年1月)、髙橋文雄編『新聞雑誌発行手引』(高橋成弘社、昭和7年1月)をはじめ大正・昭和戦前期の業界誌および業界解説書に関する調査を実施した。いずれも現物が稀少で言及や研究されたことが皆無のため収録文を1点ずつ点検し、あわせて出版の経緯なども吟味した。成果の公開方法として一連の資料を編集復刻した合本の刊行を予定しているが、今後どういった追加資料が考えられるかなど、様々な角度からの検討も行なった。ほかに岩波書店のPR誌『図書』の前身『岩波月報』も通覧し、その成果を「『岩波月報』総目次(一九三八年一月号―七月号)」(『近代出版研究』3号、近代出版研究所)として発表した。 分割課題②「哲学者・三木清の未公開書簡や諸資料(岩波書店蔵)の調査および翻刻」については、論文"Miki Kiyoshi as Editor: The Landscaping of Japanese Philosophy." Miki Kiyoshi and the Crisis of Thought. Eds. Steve Lofts, Norihito Nakamura & Fernando Wirtz. Nagoya: Chisokudō Publicationsを早期に刊行することができた。また、大阪公立大学の恒藤記念室に出むき、恒藤恭の一高時代のノート類を閲覧することで教養主義の起源に関する知見を深めたほか、同アーカイブに眠っていた三木清の恒藤宛未発表書簡を発掘し、翻刻・発表作業を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初初年度に計画していた個別の作業をひとつひとつ進めていった。のみならず、そこから派生しするかたちで『岩波月報』の通覧や恒藤記念室の資料調査なども実施することができた。これらによって、本来の見通しをさらに立体化させることにつながった。 東京の岩波書店資料室や広島県庄原市の倉田百三文学館へ出向いての資料調査は諸事情で実現することがかなわなかったため、次年度にもちこしとなった。
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今後の研究の推進方策 |
1年目に収集した資料群を駆使しながら、また新たに資料蒐集を進めながら、出版業界誌のアーカイブ化作業を引き続き進める。並行して1年目の成果をふまえ、知識人たちの「大衆」および消費社会化への認識に関する個人発表、さらに『哲学叢書』『続哲学叢書』に関する個人発表を各学会で行なうことで、出版活動と教養主義の連関のモデル化の提示につとめる。 分割課題③に掲げた「編集者・美作太郎の手帳類や内部資料(ともに申請者蔵)の解析」を実施すべく基礎調査チームを組織し、資料のリスト化とそこで言及された出版企画や人物の調査を進める。このことにより、昭和教養主義の出版戦略の内実を解明することになる。
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