研究課題/領域番号 |
23K00111
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01050:美学および芸術論関連
|
研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
杉原 かおり 弘前大学, 教育学部, 教授 (10374810)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
|
キーワード | イタリア近代 / 芸術歌曲 / 80年世代 / イタリア音楽 / レスピーギ / ピッツェッティ / マリピエーロ / カゼッラ |
研究開始時の研究の概要 |
日本国内では,イタリア近代の歌曲について,多岐に渡る楽曲様式が混在し作曲家の意図する方向性が対極にあるものであっても「イタリア近代歌曲」と一括りにされている。本研究は,この時代区分に属する多岐に渡る歌曲について《80年世代 Generazione dell’Ottanta》と呼ばれる明確な意図を持って作曲活動を行った作曲家を鍵として大別・分類することでイタリア近代の歌曲全般の概観を示し,それらの中で新たに「イタリア近代芸術歌曲」としての細分化を試みるものである。また,この内容を実演で公開することで,イタリア近代の歌曲,さらには「イタリア近代芸術歌曲」普及に貢献することを目指す。
|
研究実績の概要 |
本年度は当初の計画通り,対象となる歌曲の調査分類,具体的には,国内で認識を確認するために,「イタリア近代歌曲」として国内で出版されている歌曲集に取り上げられている作曲家の作品を,作風を基に①イタリアオペラの伝統線上にある作品,②大衆音楽,または大衆音楽風の作品,③民謡,または民謡風の作品,④その他の作品,という括りで大まかな分類を行った。また,それとは別に国外で出版されている対象年代のイタリア近代の歌曲についてはデータベース等を活用し楽曲をリストアップし,既に所有している楽譜に関して初見のものについては読譜・楽曲分析に着手した。 並行して,《80年世代》に関する書籍,文献等を読み進めた。本研究の鍵となる《80年世代》に関する二次資料による予備調査で得た知見を,作曲家自身による一次資料,同時代の音楽学者G.M.ガッティの文献,更には予備調査の段階で知り得た《80年世代》の作曲家マリピエーロやピッツェッティと交流のあった邦人作曲家 天野秀延による書籍『現代イタリア音楽』等により裏付ける作業を行った。その内容とは,1世紀半以上にも亘りイタリアオペラに凌駕されたイタリア音楽を再興させることRinascimento musicale italianoであり,具体的には第一に古典復興,第二にイタリア音楽の伝統精神の再現を目指していたことを確認した。注目すべきは,《80年世代》の作曲家らは特別な派scuolaには属さず,それぞれ独自のスタイルで活動を展開しながらも,純粋なイタリア音楽再興を願う共通の理念を掲げていたという点である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年度末に計画していた資料収集・調査のためのイタリア渡航について,所属機関における管理的業務による複数の海外出張のため日程確保ができず,次年度以降に延期することとなったため。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き,前年度までに収集した楽曲の読譜と楽曲分析,詩の解釈を行う。特に《80年世代》の楽曲については,《80年世代》が目指す共通の理念がそれぞれの楽曲にどう反映されているのかに着目し分析を進める。この作業は,過去に演奏経験がある楽曲についても同様に行う。本研究の鍵となる《80年世代》のマリピエーロとカゼッラの楽曲については,国内で楽譜を入手することが難しいだけでなく,著作権上複写できないものが多数あり,海外の図書館等での調査や出版社がある現地調達が必須である。そこで,この分野の資料を多数所蔵しているローマのサンタ・チェチーリア音楽院,ミラノのリコルディ・アルキーヴォ,ヴェルディ音楽院などでの閲覧・情報収集を行う予定である。なお,前年度計画していた現地調査が諸事情により延期することとなったが,昨今の円安の状況を鑑み,当初計画の2年次の渡航計画と合わせ,今年度1回の現地調査に変更することも視野に入れている。また,《80年世代》が求めた新しいイタリア音楽の理念構築に影響を及ぼしたとされるG.ダンヌンツィオについて,作曲家との関わりに着目して文献調査を行う。 最終年度に実演での研究成果公開も計画しているため,ピアニストとの音楽稽古を開始する。また,年度内に芸術歌曲をテーマにしたレクチャーコンサートに出演し,これまでの研究成果の一端を公表する予定である。
|