研究課題
基盤研究(C)
近世イタリアにおいて、オペラ文化の隆盛と共に、娯楽的スペクタクルとして舞台美術の需要が高まった。しかしその一方、伝統的な演劇理論によるヒエラルキーでは舞台美術は下位に位置づけられ、この時期、舞台美術は視覚効果のみを追求した結果、ジャンルの特殊化が進み、演劇界と美術界双方の周縁領域として、芸術的ジレンマに陥っていたと考えられる。18世紀後半、スペクタクルとしての舞台美術の流行の終焉を迎えるが、その一連の流れを、当時の舞台美術をめぐるこうした社会的状況からの脱却に向けて、舞台美術が作品内容との有機的連動性を実現していく新たな自律的プロセスと位置づけ、この観点からその背景を解明する。