研究課題/領域番号 |
23K00115
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01050:美学および芸術論関連
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
西間木 真 東京藝術大学, 音楽学部, 准教授 (10780380)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | トナリウス / フランス式ネウマ記譜法 / pseudo-Odo / Musica artis disciplina / Petistis obnixe / Dialogus de musica / ロマネスク写本 / フランス中世音楽 / グレゴリウス聖歌 |
研究開始時の研究の概要 |
トナリウスは、典礼聖歌レパートリーの教授と暗記を助けるために、旋法ごとに歌い出しの旋律型を一覧として列挙したレファレンスツールであり、地域のレパートリーや旋律、歌唱法などを知る手がかりとなる。本研究は、11-12世紀におけるイタリア式音楽理論のグローバル化によって衰退したフランス独自の音楽理論と音楽実践について、フランスで作成されたすべてのトナリウスを網羅的に検証することで明らかにすることを目的とする。
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研究実績の概要 |
年度の前半は、一連のアキテーヌ・トナリウスのトランスクリプションの確認を行なった。同時にヌヴェールのグラドゥアーレ(フランス国立図書館新収ラテン語1235写本)に書写されたトナリウス (141v-146葉)を校訂した。フランス式ネウマ符で記譜されたこのトナリウスでは、旋法ごとに旋法の規則が平明な対話形式で説明されている。分析の結果、この対話部分は『音楽についての対話』の記述をより簡単なラテン語でパラフレーズしたものであることが明らかになった。年度の後半は、疑オドの名に帰されるMusica artis disciplina (11世紀)の校訂に取り組んだ。現在5写本で伝えられるこの理論書は、当初の計画では念頭においていなかったが、特定の音程内において可能な音の組み合わせとそれによって作られ得る旋律の数が論じられており、各旋法の旋律をパターンごとに分類するトナリウスを理論的に分析する新たな足がかりとなると考えられる。本研究で作成したヌヴェール写本のトナリウスとMusica artis disciplinaのエディションは、現在準備中の『音楽についての対話Dialogus de musica』の付録として刊行する。 日本語では、擬オド『音楽についての対話』の序文として流布したPetistis obnixeを、過去の研究で作成した自らのエディションに基づいて訳出した。この「序文」は新しい記譜法に基づくソルフェージュ教育の成果、典礼聖歌レパートリーの検証作業、典礼聖歌集の編纂作業について書簡の形で簡潔に述べられており、短いながら11世紀における音楽教育および記譜法の改革の様子を伝える重要な文献といえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では予定していなかったMusica artis disciplinaの校訂作業を行なったため、研究状況はやや遅れている。写本の数が5点と少なく、そのうち4点は同系統であるため、さほど時間がとられないと考えていたが、文体や内容が難解であるだけではなく、現存しないsourceによると思われる全写本に共通の誤記も散見され、大幅に作業時間を割くことになってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
ヌヴェールのグラドゥアーレのトナリウスは、フランス式ネウマ符で記譜されているが、一連のアキテーヌ・トナリウスとのつながりが指摘されている。そこでアキテーヌ・トナリウスとレパートリーおよび旋律の比較を行い、影響関係を明らかにする。同時に過去の科研費研究助成で作成した理論書的なトナリウス断片 (フランス国立図書館7185)、およびそれと語彙の上でつながりのみられるカンブレとグルノーブルのトナリウスについても比較分析を行う。アキテーヌ式ネウマおよびフランス式ネウマで記譜されたトナリウスのレパートリーのインデックスを作成し、11-12世紀フランスにおける音楽レパートリーをデータベース化する。
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