研究課題/領域番号 |
23K00116
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01050:美学および芸術論関連
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研究機関 | 上越教育大学 |
研究代表者 |
玉村 恭 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (50575909)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 能楽 / 佐渡 / 民俗芸能 / 伝統音楽 / アマチュア |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、1980年代以降の佐渡の能楽に関する動向を、専業の楽師による演能活動に限らず、様々な形で能楽にたずさわった人々の多様な動き(主としてアマチュア・素人と呼ばれる人たちとその活動)に目を向けて、明らかにすることを目指す。佐渡で能楽に取り組む人々をその活動の実質からいくつかの層に分け、それぞれの活動の実態を「現地の視点」で捉えることで、佐渡の能楽文化がどのように展開してきたか(展開しているか)が見えてくるであろう。このことは、「佐渡の能楽」が能楽界全体に対して持つ意味、ひいては、日本の芸能文化の本質といったものを、これまでとは違った視点で考える契機となるはずである。
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研究実績の概要 |
佐渡の能楽実施状況、とりわけ非専業者の関わるものについて、現状を把握する作業を行った。研究計画に基づき、佐渡の能楽を担う人々をおおよそ三つの層(非専業者を主体とする能楽実践団体、日常の中でカジュアルに能楽と付き合う人々、学校教育の現場で活動する人々)に分け、それぞれにアプローチすることとした。 第一の層について、薪能や演能団体の成果発表会などの催しの参観を行うとともに、関係者とコンタクトをとって簡単な聞き取り調査を行った。また、佐渡の芸能(人形芝居および鬼太鼓)についての調査経験を持ち、団体間の連絡態勢の構築に実績のある機関(佐渡文化財団)と連絡を取り、今後の調査で連携していくことを打ち合わせた。第二の層について、日常の中で能楽を実践した経験のある人々の住む集落を訪問し、地域振興・地域交流の事業を行う中で芸能実施状況(現状と来歴)を聞き取り、重ねて今後の調査に向けての協力依頼を行った。第三の層について、複数の学校関係者(佐渡市の小学校教員、教育委員会職員、学校教育の中で能楽の教育を受けた経験を持つ人)と連絡を取り、能楽の関わる教育活動の実施状況についての聴き取りを行った。 以上の調査で、佐渡の現在の能楽実施状況の概要、つまり、どのような催しや取り組みが、どこで、どのくらいの頻度で/どういったスケジュールで行われているか、それぞれを誰が担い、どのような形で運営しているかといったことについての全体像が、大まかにではあるが把握できた。現状に至るまでの経緯や来歴についても、聴き取りを重ねる中で、また様々な機関にアプローチする中で、断片的にではあるが情報が集まりつつある。さらに、佐渡市の行政関連機関や能楽関係者、教育関係者との連携態勢が整い、次年度以降のさらなる調査に向けた足がかりを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
関係者・団体への聴き取りについては、何度か調査を実施することができはしたが、インタビューは十分に構造化したものではなく、調査としては予備的なものにとどまった。また現状の把握は行えたが、来歴(歴史的経緯)については断片的にしか情報が集まっていない。これは、調査を進める過程で、それぞれの能楽実践者や団体の活動の相対的自律性が高いこと(どちらかというと競合関係が優位で、横の連携があまりない)、団体間の連絡態勢や関係のありようが一様ではないことが見えてきて、情報の集積密度の高いところを見出すまでに、また実際に関係者・団体にコンタクトをとるまでに時間を要したことが、大きな要因である。 上演・発表の催しや教育活動の参観も、感染症流行の影響や本務との関係、催し自体が外部へは限定的にしか公開していないものが多いなどの事情で、十分には行えなかった。 文献・文字資料の収集についても、やはり過去の情報の保存・管理状況が良好ではなく、団体の記念誌や個人の回顧録などいくつかの希少資料には現物にアクセスすることができたものの、新聞・雑誌の過去記事の探索については所蔵確認にとどまった感が強い。
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今後の研究の推進方策 |
上に述べたように聞き取り調査には予備的ながらも着手済みであり、断片的にではあるが情報が集まりつつある。何より、連絡・協力態勢を以前より強固にし、アクセス範囲を広げることができたので、今後はさらに深い情報を引き出すべく、調査内容の精査(インタビューの構造化)を行うとともに、可能な範囲で聴き取り作業を進めていく。その際には、連携関係を構築した佐渡文化財団の(人的な、また情報流通における)ネットワークを最大限に活用することが有効となろう。 学校教育に関しては、小・中学校の授業で能楽を取り上げる機運がやや下火になっていること、能楽に取り組むことを特色に掲げていた学校が募集停止になったことなど、本研究にとってやや難しい局面に入りつつあることは事実である。ただ、「学校教育」を必ずしも「授業」に限る必要はない、むしろ学校を地域活動の一翼を担う場所としてとらえることで教育と芸能との関わりについて何かしらのことが言えるようになる、といったことも見えてきている。「三つの層」を完全に切り分けるのではなく、三者の緩やかなつながり全体を視野に入れながら考察を進めていくよう留意したい。 文字資料については、これも上に書いたように、実際に資料を手に取ることができたもの・内容を確認できたものは多くはないのが、おおよそのところの所蔵状況は把握できたので今後は情報そのものにアクセスできるよう尽力したい。また、個人で資料を収集している人がいたり、インターネット上に情報を蓄積しているサイトがいくつかあるなど、まだ未発掘の資料がある可能性も小さくないので、探索の範囲を広げていくこととしたい。
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