研究課題/領域番号 |
23K00117
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01050:美学および芸術論関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中尾 薫 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 准教授 (30546247)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 台湾 / 植民地 / 歌舞伎 / 浄瑠璃 / 義太夫 / 劇場 / 興行 / 新演劇 / 演劇興行 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、明治28年(1895)から昭和20年(1945)の間、日本統治下にあった台湾における歌舞伎・浄瑠璃・諸芸能の興行の仕組みの一端を明らかにすることを目的としている。植民地下台湾における歌舞伎・浄瑠璃興行には、どのような興行師が関わり、どのような商業的運用がなされていたのか。各劇場の経営者は、内地興行と関わっていたのか。関わっていたとすればどのようなルートがあったのか。関わっていないとすればどのような独自の運用がなされていたのか。料理屋組合や台北花柳界の関与は、芝居茶屋の制度とどのような関連があるだろうか。同時期の内地の芸能興行のありようと連動するのだろうか。以上のような問題を考察する。
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研究実績の概要 |
本研究は、明治28年(1895)から昭和20年(1945)の間、日本統治下にあった台湾における歌舞伎・浄瑠璃・諸芸能の興行が、日本本土(内地)の興行とどのような連続性があり、どのような興行関係者によって、どのような運営がなされていたのか、その仕組みの一端を明らかにすることを目的としている。この目的のために、歌舞伎・浄瑠璃興行とある部分においてつながりが確認されている①台湾における近代演劇・映画興行師として知られる高松豊次郎の関わりについて、②料亭・茶屋・花街のかかわりについて詳細にする計画をたてた。 これによって、これまで関連研究分野において、それほど詳細に研究されてこなかった日本統治下台湾での歌舞伎・浄瑠璃に関する興行史の概要をより具体的に示すことができるとともに、明治・大正・昭和初期の「内地」における諸芸能の地方興行や、小規模な歌舞伎興行、小芝居の実態解明を目指している。 研究計画においては、研究協力者2名に『台湾日日新報』から、浄瑠璃興行、および花街料理屋組合の記事のデータ蓄積と整理の補助を行ってもらい、全体像の把握を目指した。浄瑠璃興行については、当初の予定では明治・大正期までを収集する予定だったが、順調に収集が進む昭和期についても調査を進めることができた。料理屋組合については、新聞記事の収集は予定通りおこなったが、期待したデータが得られておらず、やや停滞している。また、高松豊次郎の関わりについては、初期において新演劇興行の動向を把握する必要があるため、明治28年~40年頃までの新演劇興行に関する調査を行っている。 初年度の2023年度は資料の収集に注力したため、口頭発表、学術論文などの成果をあげることはできなかったが、着実に研究を進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定していた研究計画のうち、新演劇・高松豊次郎に関する調査研究については予定より遅れている。本研究の前段階において、台南座の正劇公演では大阪朝日座、神戸大黒座等、内地劇場で好評の劇を巡演しているらしいこと、台湾において興行師高松豊次郎の存在がひとつのターニングポイントとして捉えられることまでは把握しているが、歌舞伎・浄瑠璃の興行主などについての実態がつかめずにいる。このため、研究代表は当初計画していた国際学会、国内学会での口頭発表については、断念した。 しかし、浄瑠璃興行に関する資料収集は研究協力者の川下俊文氏の協力があり、予測を上回るペースで進んでいる。当初の計画では2年かけて『台湾日日新報』から、明治・大正期の浄瑠璃・義太夫年関係記事をすべて抽出することを目指していたが、2023年度の終わりごろにほぼ達成し、昭和期の記事の抽出を始めることができた。 また、料理屋組合のかかわりについては、当初予定通りの進行だったが、『台湾日日新報』の記事は、想定していたほど多くの情報がなく、現在他の資料の捜索を行っているところである。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、基礎となる資料の蓄積に注力した。このため学術論文、口頭発表などの成果物を出すことはできなかったが、基礎資料は着実に集まってきている。2024年度はこれらの分析と補足資料の捜索にステップを移す予定である。なお、台湾と連続した興行がおこなわれていたことが知られる香港についての調査を開始することで、当時の興行の全体像解明への糸口があるのではないかと考えている。このため、可能であれば夏以降に、台湾、香港での資料調査を計画していきたい。ただし、オンライン上で調査できる限りのことは国内で下調査をしたうえで現地に赴くことで、経費や時間の節約を心掛けたい。また国内の興行状況との連関についても、調査を進めるべき時に来ていると判断されるため、調査を開始する。これによって台湾における状況把握が加速できると予測している。 『台湾日日新報』からの基礎資料の収集については、引き続き注力していく。昭和期の浄瑠璃・義太夫記事は明治・大正期よりも数が多いことが事前調査から判明しているため、2024年度いっぱいかかるかもしれない。 また料理屋組合については、国内の事例に糸口があるかもしれない。当面は国内の花街と芝居との関りについて追加調査を行うこととする。 なお、特に浄瑠璃・義太夫関係のデータについては、ある程度の数がまとまってきており、貴重な情報と判断されるため、適切な形での公表を考えており、2024年度はその準備を始める。これらの作業を着実に行うことで、遅くとも最終年度の2025年度には、出来る限り着実な研究成果に結実させることを目指していく。
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