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新語・流行語の美学ーー概念史に基づく感性的カテゴリー論の構築に向けて

研究課題

研究課題/領域番号 23K00131
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分01050:美学および芸術論関連
研究機関北見工業大学

研究代表者

春木 有亮  北見工業大学, 工学部, 准教授 (80469535)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
キーワードかっこいい / かわいい / ふつう / 美学 / 感性 / 哲学 / 芸術
研究開始時の研究の概要

おもに戦後日本の新語、流行語からいくつかをピックアップしながら分類し、その成立過程、使用状況、内包と外延を調査、分析する。その結果、生まれつつある、あるいは、使われ出しつつあるという新語、流行語の現在性に、つねにちがうしかたで感じようとする感性自体の自己超越性を映し見る。
また、研究の過程で、新語、流行語の膨大なデータの蓄積と分析をおこなうゆえに、その成果は、戦後日本の文化史、社会史の構築にも寄与する。

研究実績の概要

今年度は、「ふつう」の美学にまつわる資料調査、分析をおこない、その研究成果の一端を、2024年3月の美学会東部会で発表した。
「ふつう」のルーツは「普通」という漢語であり、仏教用語である。古くは3世紀に用例があり、「あまねく通じる」を意味した。日本には、経典とともに9世紀には持ちこまれ、11世紀には一般語となり、「ありふれた」という意味を派生させる。近代には、制度用語に多用され、ときに「普通人(民)」への標準化を内包し、構築性、規範性をはらむことになる。
1970年代には、キャンディーズの引退宣言「普通の女の子に戻りたい」に象徴されるとおり、「エリートになって、仕事に追いまくられる」よりも「自然な生き方」を好む「若者たちの"ふつう"志向」が生じる。80年代にはときに「フツー」と表記され、その語感もろとも感性化し、かつ「流行」し、非感性化する感性となって、差異化競争に疲弊したひとびとに寄りそった。こうして逆説的に感性化する「ふつう」は、中立化された自分、自分らしい自分を肯定するイデオロギーとともに価値化され、「自分」に内在化する。
しかし「ふつうの自分」をとらえるのは、容易ではない。80年代後半のさくらももこ、吉本ばなな、俵万智がこぞって描いた「ふつう」は、ある「生活感覚」であり「幸福感」であるが、過去と現在、満足と不満、緊張と緩和のどちらでもない「あいだ」にたゆたう。やがて「ふつうの自分」が「自分のふつう」へと規範化されていき、ひとは、「みんなのふつう」との二重性を生きることになる。90年代なかばからゼロ年代はじめにかけて現れる「ふつう」ではない「ふつうの子」は、そのギャップを体現した存在であった。
感性化する「ふつう」を、たえず制度、道徳、常識という「ふつう」自身の知性的な側面が警戒し、牽制する。つまり「ふつう」は、感性化と非感性化にひきさかれることになる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

研究計画時には、「ふつう」は、流行とともに感性化したことばの事例ではないかと、漠然とあたりをつけていた。まず「普通」の語源と、その漢語から和語への展開をあらうという作業をしたが、それにさいして胡新祥の論文『中日近代新漢語についての研究――仏教由来漢語を中心に』(2018年)を参照することができ、作業がはかどった。
国会図書館で明治以降の3万件におよぶ資料を分類、分析したが、肉眼のいわばスキャン力が向上しており、体を酷使しはしたが、短期間で明治から現在にいたる「ふつう」のひととおりの使用例をチェックすることができた。くわえて、ふつうの流行の時期と要因を、予想したよりも明確に資料上でつきとめることができた。
また、「中立化した自分」というアイディアを得たことで、「ふつう」がいかなるしかたで感性化したか、いかなる感性なのか、その理論構築が早々に進んだ。
よって、当初の計画以上に進展した。

今後の研究の推進方策

「ふつう」の美学を、一定の結論をともなうかたちで構築し、学会で発表できたので、今後は論文のかたちで公表する。
また同時に、かねてかから論文、学会発表などを蓄積している「かっこいい」、「かわいい」、「いかす」の美学を、本にまとめる作業を進める。
さらに、流行しつつ感性化することばのサンプルをひきつづき集める。

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (2件)

すべて 2024

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] 反芸術的な美学のためにーーしたたかな改革者スーリオ vs ささやかな革命家ラブジャード2024

    • 著者名/発表者名
      春木有亮
    • 雑誌名

      北海道芸術論評

      巻: 16 ページ: 3-14

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [学会発表] 「ふつう」の美学ーー想像の帰還地点2024

    • 著者名/発表者名
      春木有亮
    • 学会等名
      美学会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書

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公開日: 2023-04-13   更新日: 2024-12-25  

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