大正期日本では、美学関係の専門書や啓蒙書が数多く出版されていたが、それは従来の西洋近代美学受容史研究では注目されてこなかった。しかし、申請者のこれまでの研究により、当時の美学への関心の高まりの要因として、単なる大正教養主義だけでなく、「多様における統一」という考え方への共感があることがわかってきた。そこで本研究では、改めて当時の哲学・心理学・宗教学・美学関連の文献を博捜して「多様における統一」が当時の思想的トポスであることを確認し、このトポスが当時の美学・芸術論および芸術実践に与えた影響関係について照射することを目的とする。
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