研究課題/領域番号 |
23K00141
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01050:美学および芸術論関連
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研究機関 | 静岡文化芸術大学 |
研究代表者 |
奥中 康人 静岡文化芸術大学, 文化政策学部, 教授 (10448722)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 鼓笛隊 / 鼓譜 / 西洋音楽受容 / 軍楽 / 行進曲 / 幕末鼓笛隊 / スネアドラム |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、以前から存在は知られていたが解読できないまま放置されてきた、幕末維新期の「鼓譜」(スネアドラムの楽譜)の多くに掲載されている「早足」という行進曲を解読し、どのような行進曲(リズム)であったのかを具体的に提示すること、そして当時、どのような状況で演奏され、どのような機能・役割を果たしていたのかというコンテクストを明らかにすることを目的としている。
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研究実績の概要 |
「英式」と呼ばれる鼓笛隊およびその楽曲(「早足」等)について、横浜における駐留英軍についての資料調査を進め、また楽譜(鼓譜、鼓笛譜)の調査をおこなった。 これまで7種の楽譜を確認していたが、新潟市新津図書館に所蔵されている数種類の鼓譜を閲覧したところ、その一つが英式(「イーシキ」と記載されいている)であることが判明した。この楽譜には、笛の楽譜も含まれているが、これまでの「早足」はスネアドラムの楽譜しか確認できていなかったため、非常に貴重な楽譜である(ただし、五線譜によるものではなく、声明譜のようなスタイルで記譜されているため、正確な復元は困難であるものの、口唱歌は記されている)。また、この新津の楽譜は、おそらく新潟にまでこの曲が伝播していたことを裏付ける点でも重要である。 また、山形県上山市図書館に所蔵されている佐竹氏資料の数種類の鼓譜を調査したところ、ここにも英式の譜を発見することができた(ただし、佐竹氏による写本。原本は不明)。これは当地に現存する上山藩鼓笛楽保存会が伝承する早足が、(当地で伝えられているフランス式ではなく)英式に由来するものであることを示唆する点で重要である。また、新津・上山の数種の鼓譜は、スネアドラム演奏が、ある時点(おそらく戊辰戦争終盤、明治改元直後あたり)でオランダ式から英式に変化したことを示していると思われる。 英式とは直接の関係はないが、熊本県玉名市に伝わる「官軍太鼓」の調査では、あきらかに幕末のスネアドラムの形状を有しているスネアドラムが現存し、幕末鼓譜に掲載されているものに類似する楽曲、当時の奏法を伝承していることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
資料調査において、予想外の発見が相次いだことに伴って、すでに確認できている楽譜類の確認、分析作業が当初のみこみよりも遅くなったきらいはあるが、全般的にみると、おおむね順調といえる。二種の新しい楽譜資料の発見は、比較の材料が多くなることでもあり、今後の比較分析が、より精緻に進むことを期待できるともいえる。
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今後の研究の推進方策 |
確認できている楽譜の比較分析を進めるほか、イギリスにおける同種の(類似の)スネアドラム譜の調査に着手したい。もっとも、まったく同一の楽曲が存在するとは考えにくいものの、奏法やリズムパターンのレベルでは共通点を見出すことが可能と思われる。 また、「英式」の「早足」を考察するにあたって、薩摩藩の文献調査を進める。 さらに、「早足」が「維新マーチ」として認知されるようになった昭和初期の堀内敬三の言説に着目し、「早足」のその後を考察するための素材を揃えて整理をする(国会図書館デジタルコレクション等で、容易になったため)。
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