研究課題/領域番号 |
23K00154
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01060:美術史関連
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
高木 麻紀子 明治学院大学, 文学部, 准教授 (80709767)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 15世紀フランス美術 / タピスリー / タペストリー / ヴァロワ / 世俗図像 / 王権表象 / 宮廷美術 / 祝祭 / 世俗美術 / 中世末期 / 西洋中世美術 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は15世紀フランス・ヴァロワ王家のタピスリー群に注目し、図像分析と様式判断という伝統的な美術史学的考察に、タピスリー市場や工房に関する記録、財産目録や会計簿、目撃証言等の同時代史料の検討と、他国の作例との比較を加え、総合的にその実態を解明することを目的とする。特に国王シャルル7世関連作は何れも世俗図像に分類し得るため、中世末期の世俗美術の解明という観点からも重要である。 この成果により、当該作品群が中世の宮廷美術の伝統を継承すると共に、政治的役割をも担っていたことが具体的に浮き彫りになり、王家宮廷、ひいては15世紀フランス美術の中でタピスリーが有した独自の意義が明らかになると期待できる。
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研究実績の概要 |
本課題は15世紀フランス・ヴァロワ王家のタピスリー群に注目し、図像分析と様式判断という伝統的な美術史学的考察に、市場や工房に関する記録、財産目録や会計簿、目撃証言等の同時代史料の検討と、他国の作例との比較を加え、総合的にその実態を解明することを目的とする。以下、2023年度の研究実績をトピックごとに記す。 1)作品調査/史資料収集:申請時にはイギリス、フランス、ベルギーの計3国での調査を予定していたが、2023年度は研究代表者に所属機関と職位の変更があり、校務との調整の結果、フランスのみで調査を実施した。特筆すべきは本課題と密接に関連する2件の展覧会が2023年度に開催され(『15世紀トゥレーヌにおける王家のたのしみ』展、シノン、美術歴史博物館/『シャルル7世治下のフランス芸術』展、パリ、クリュニー中世美術館)、その訪問が叶ったことである。特にシャルル7世展の図録では、本課題の中心的な研究対象2点の基本情報が明らかにされ、研究基盤の構築に大いに寄与した。 2)カタログ作成とそれに基づく図像考察:研究対象及び関連作品のカタログ作成を進めつつ、上述の2件の展覧会でそれぞれ実見した《鷹狩り》(ソミュール城美術館寄託)、《有翼の鹿》(ルーアン、ボーヴォワザン美術館)の個別研究を進めた。特に前者は、中世末期の狩猟タピスリーの変遷において、その図像に新機軸が現れ始める過渡期の作例の1つとして位置付けられることが明らかになった。また本作との関連が推察されるジャック・ド・ディナン=モンタフィランは、ヴァロワ王家の執事長を務めた人物であり、王家を起点とした人的紐帯と現存タピスリーとの関係を紐解いてゆくことが、15世紀フランス宮廷におけるタピスリー受容の実態を解明する鍵となることが改めて認識されることとなった。 3)研究成果の公表:本課題の成果を含む口頭発表を1件行い、研究ノートを1本刊行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度の何よりの収穫は、本研究課題に直接的に関連する展覧会が2件開催され、そのどちらにも訪問できたことである。これらの展覧会の情報は2022年の課題申請時には把握しておらず、採択初年度に所蔵先が多岐にわたる15世紀フランス・ヴァロワ王家に関連するタピスリー群を比較しながら実見できたことは、研究推進の上で非常に有意義であった。特に『シャルル7世治下のフランス芸術』展(パリ、クリュニー中世美術館)に際して刊行された展覧会カタログでは、未だ不明な点の多かった本課題の中心的な研究対象2点の基本情報が明らかにされた。これにより、初年度の課題としていた研究基盤の構築を進めることができた。 今年度は研究代表者に所属機関と職位の変更があり、スケジュールの調整や研究時間の捻出にやや苦労した結果、申請時に予定していたベルギーとイギリスでの調査活動は断念せざるを得ない状況となった。しかしその一方で、予期していなかった関連展覧会への訪問が叶い、「研究実績の概要」に記したような新知見を得ることもできた。以上から、2023年度の進捗状況は「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の進捗状況を踏まえた今後の研究の推進方策は以下の通りである。 1)海外調査: 本研究の対象及び関連作例のなかには、未だ鮮明なカラー図版が文献や所蔵機関の公式HPにも掲載されていないものも存在するため、保存状況及び細部の観察、写真撮影のためにも現地調査は不可欠である。当初、2024年度は主にNYでの調査を予定していたが、現在進行中の宿泊費の高騰と大学デモの拡大に鑑みて、初年度にできなかったたベルギーでの調査活動と、2025年度に予定していた《アレクサンドロス大王の事績》(ジェノヴァ、アンドレア・ドーリア宮殿)の調査を先に行うことも考えている。調査スケジュールの変更に関しては、状況を注視し臨機応変に対応していく。 2)カタログ作成と個別的研究:15世紀ヴァロワ朝の王シャルル6、7、8世、ルイ11世に関連する現存作例及び財産目録・会計簿を徹底的に調査し、作品カタログの作成を進める。個別研究としては、初年度に実見した《シャルル7世の天蓋》と《有翼の鹿》を中心に据え、各モティーフの源泉、全体のテーマ、機能を、当時のヴァロワ王家の歴史的状況と共に考察してゆく。 3)研究成果の発表:現時点では2024年6月に西洋中世学会大会(於:富山大学)で、〈野人のタピスリー〉(1465-70年頃、ソミュール城美術館寄託)に関するポスター報告をする予定である。計2帳かならなる本作は、前研究課題で中心的に取り上げた作例であるが、報告者がその注文主として推察しているトゥアール子爵ルイ・ダンボワーズはジャンヌ・ダルクの同胞として百年戦争を戦った人物であり、ヴァロワ王家と所縁の深い人物である。よってその考察には本課題の成果も含まれることとなる。また、2023年度3月に訪問した、本研究課題と密接に関連する『シャルル7世治下のフランス芸術』展に関して、展覧会評を中心とする論考を所属研究機関の紀要に投稿予定である。
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