研究課題/領域番号 |
23K00158
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01060:美術史関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
伊藤 奈保子 広島大学, 人間社会科学研究科(文), 准教授 (20452625)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | シューヴィジャヤ / 密教法具 / マレー半島 / Vajra / Ghanta / インドネシア / シュリーヴィジャヤ / Vajra and Ghanta |
研究開始時の研究の概要 |
ジャワ島の先行研究から、①金剛杵、②金剛鈴、③ケツ、④護摩に使用されたと考えられる諸具等の分類が考えられる。測量、調査、調書作成、写真撮影の基本データを作成、測量はミリ単位を基本とし、型が復元できるよう精密に行う。調書は現所在地、形状、図像などを記述する日本美術史の方法論を用い、撮影はデジタルカメラによる照明撮影を基本にする。図版と調書は申請者の広島大学文学研究科研究室に保管する。現地調査を3年間で5回行う。各現地の国立・州立・市立の博物館、資料館、美術館、及び、欧米の所蔵館とする。①スマトラ・ジャワ地域、②シンガポール、スラウェシ地域、③マレーシア地域、④タイ地域、⑤欧米の博物館である。
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研究実績の概要 |
当該年度はインドネシアのジャワ島を中心に11月調査を行った。またマラン大学において、BWCF(Borobudur Writers and Cultural Festival )主催、「Dari Ganesa sampai Sastra Artificial Intelligence」をテーマにした第12回シンポジウム(11月23~27日)にて11月25日にSiva Buddha in the Indonesian Ritual Utensils: Vajra and Ghantaの発表を行った。 内容はインドネシアではシヴァ・ブッダという独特の信仰があり、儀礼に使用される金剛鈴にその特徴が表れていることを述べたものである。すなわちインドでは現在ではほぼ失われている儀礼用の鈴が、インドネシアでは筆者の調べでは約600例確認でき、尚且つ、その上部(鈷部)には密教やヒンドゥー教に使用される五鈷以外に20種類もの多種多様な形状がみられ、ガネーシャ(シヴァの息子)、ナンディン(ブラフマーの乗り物)、ハンサ(ビシュヌの乗り物)、ガルダ(ブラフマーの乗り物)、シンハ(獅子)、シャンカ(法螺貝)などヒンドゥー教に属するものが含まれている。それらは密教が栄えたと考えられる8~10世紀頃の中部ジャワ地域と10~15世紀頃の東部ジャワの両地域両時代にみられ、密教、ヒンドゥー教が同時期に栄えていた事を論証するものと考察できる。また、中部ジャワ地域のボロブドゥールのレリーフの中に、鈷がすぼまった金剛鈴があらわされていることを指摘し、密教儀礼に関わらずに演奏の楽器として使用されている例を挙げ、金剛鈴の形状は既に8世紀~9世紀頃には存在していたことが立証できると述べた。これらを英文論文にシンポジウム報告書(全618頁)129~140頁に掲載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は、インドネシアを中心に11月現地調査を行い、インドネシア現地における資料収集についてはおおむね順調に進展している。現在インドネシアではコロナ禍以前と異なり、各寺院への入場が制限され、ボロブドゥールに関しては1時間内でグループ分けされて引率者のもと見学する形式になっている。他の寺院も寺院の内部に入ることが禁止されているところが多く、事前の特別許可を申請する必要がある。 今回はボロブドゥールの第4回廊を中心に調査を行った。そして中部ジャワ地域、古都ソロのマンクヌガラン宮殿ダレムアグンに収蔵されている金剛鈴の調査と儀礼用の鈴をはじめとする仏教・ヒンドゥー教に関連する資料収集を行った。また、東部ジャワ、マラン大学にてBWCF(Borobudur Writers and Cultural Festival)主催による第12回シンポジウム「Dari Ganesa sampai Sastra Artificial Intelligence」においてインドネシアの密教系とヒンドゥー教系の儀礼用道具のうち、現段階までに確認できている法具のうち、インドネシアに特徴としてヒンドゥー教と密教が併存していることに焦点をあてて発表を行った。また密教系の金剛鈴に関しては鈷部の形状から五つの切っ先が閉じているものを「閉鈷式」開いているものを「開鈷式」と報告者が名づけ、それぞれ8~10世紀頃の中部ジャワ地域、10~15世紀頃の東部ジャワ地域に制作されている事を述べる。すなわちインドネシアの金剛鈴を基準におけば、密教が伝播した他地域の密教伝来の年代を推察する事につながるのである。今後は他地域についての密教法具の調査を行ってゆきたい。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度では、まずインドネシアのボロブドゥールのレリーフにおける儀礼用の鈴の調査を行う。それにより、8~9世紀頃には鈴、特に五鈷鈴(三鈷鈴)の形状の存在と、どのような場面で使用されるかについて明確にすることが可能となる。 次にインドネシアの金剛杵・金剛鈴の「閉鈷式」「開鈷式」をもとに、密教が伝播した地域における密教法具について調査を行いたい。すなわち、カンボジアやタイを中心として博物館所属の金剛杵・金剛鈴の調査を行う予定である。プノンペン博物館をはじめとする各博物館、資料館等を調査対象とする。
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