研究課題/領域番号 |
23K00168
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01060:美術史関連
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館 |
研究代表者 |
廣谷 妃夏 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部, アソシエイトフェロー (90940487)
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研究分担者 |
沼沢 ゆかり 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部, 研究員 (00881715)
小山 弓弦葉 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部, 課長 (10356272)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 大谷探検隊 / 染織品 / オアシス都市 / 麹氏高昌国 / 敦煌莫高窟 / 葬送文化 / 仏教荘厳 / 染織史 / 東部ユーラシア |
研究開始時の研究の概要 |
20世紀前半に中央アジアで発掘調査を行なった大谷探検隊は、多くの染織資料も収集した。この染織資料は、同時期の欧州各国の探検隊将来染織資料と総体で考えるべきものであるが、これまで全体像は明らかになってこなかった。本研究は東京国立博物館所蔵資料を起点に、国内外に所在する大谷探検隊染織資料を包括的に調査し、相互比較可能な形式でデータを公開することを目的とする。個別の作例に関しては、類似の出土染織資料や文献資料を活用し美術史及び東部ユーラシア染織史の観点から位置付ける。本資料群の検討を通し、6~10世紀のオアシス都市における染織品の造形表現、制作技術、流通、使用等の様相を明らかにすることを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、20世紀前半に中央アジアに派遣された大谷探検隊による膨大な収集資料のうち、染織資料の全体像を把握したうえで、主な収集地である現在の中国新疆ウイグル自治区トルファンにあたる地域および甘粛省敦煌という二つのオアシス都市の社会文化と仏教荘厳に関する考察を染織史の方面から図ることである。本研究の起点となるのは、東京国立博物館所蔵染織資料群である。 初年度となる2023年度は、まず東京国立博物館所蔵の約200面のガラス面に挟まれた約680片の断片について再調査と新規撮影を実施した。また9割以上にあたる197面を館藏写真として撮影し、報告書の基礎となるデータを作成した。 さらに中国大連・旅順博物館の協力を得て、大谷探検隊将来のトルファン出土染織資料(面覆の一部)とミイラ化した被葬者2体を閲覧調査した。旅順博物館の大谷探検隊関係資料は、第三次大谷探検隊終了直後に大陸に再び移送された一群である。調査の結果、実際に被葬者ミイラに付着していた衣服断片と東博所蔵染織資料群の特徴が一致し、被葬者の出土状況の情報の欠落を補完する余地が生まれた。以上をもとに、第1号被葬者に付帯する染織資料の使用状況と被葬者の属性についての試論を国内学会で発表した。さらに敦煌収集品に関しても旅順博物館所蔵品と分かれた断片があることを確認した。このうち天蓋や祭壇の垂飾とされる荘厳具に注目し、第三次大谷探検隊の調査活動の紹介と合わせ、断片同士の関係について国際学会で報告した。また、各機関のラベルや整理状況の差異より、大谷探検隊収集後の染織資料群の整理、国内外への分散の過程について考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東京国立博物館所蔵染織資料群の情報整理と撮影がほぼ完了し、外部への研究成果の公開に向けた準備が進んだ。また中国旅順博物館での調査により、現在東アジア各地に分散している大谷探検隊資料の将来以後の整理過程についての考察が深まった。しかし航空券の高騰やスケジュール調整の問題で、旅順博物館以外の予定していた調査希望先に伺うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の方策として、まず第一に染織資料の集成と報告に向けた調査を続ける。 2年目は旅順博物館に加え、韓国国立中央博物館及び日本所在の大谷探検隊収集染織資料について調査を行ない、引き続き国内外の染織品断片の情報の集成に努める。また、初年度撮影した写真をもとに、外部公開にむけた報告書の作成作業を進める。 第二に、今年度深く取り組むことができなかった諸文献資料の精査を進め、大局的に染織資料の位置づけを図ることである。具体的には、トルファン出土品については60年代以降に中国において報告された出土状況との比較を進めつつ、出土文書等から5~7世紀における高昌国の紡織業、またタリム盆地オアシス都市と各遊牧民族、中国中原との諸関係を捉えなおしたうえで染織資料について検討する。敦煌収集品については、垂飾、几褥、幡を中心にさらに物に即した調査研究を進めたうえで、8~10世紀中国西北部における染織品の流通システムと莫高窟の仏教儀礼との関係について文献資料からの考察を深める。
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