研究課題/領域番号 |
23K00177
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01060:美術史関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
荒木 文果 慶應義塾大学, 理工学部(日吉), 准教授 (40768800)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | ドムス・アウレア / グロテスク装飾 / フィリッピーノ・リッピ / ピントリッキオ / ミケランジェロ / イタリア・ルネサンス / フィレンツェ / 美術史 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、ルネサンス期のフィレンツェの画家フィリッピーノ・リッピが1470年代から90年代に制作した作品を中心に、画家の高い模倣の技術を積極的に評価するという視点をもって、これまでの言説を整理したうえで作品の様式分析を行い、画家の作品制作の実態を明らかにすることを目指す。その際、必要に応じて、キャニー法(Python言語3.9.12version)等を活用し、モデル作品とフィリッピーノの作品との比較を行う。それによって、高い精度での分析が可能となり、説得力にとんだ提案ができるとともに、停滞しがちな初期作品に関する議論を活発化する可能性が期待される。
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研究実績の概要 |
2023年度は、9月および11月に実施した海外調査にて、作品実見、資料収集、写真撮影、複数の研究者との充実した意見交換を行った。その成果は、『迷宮のアルストピア』(ありな書房)に論文として既に公刊されている。本論文では、1470年代にネロ帝の黄金宮殿跡(ローマ)で発見され、イタリアをはじめヨーロッパ中のひとびとを熱狂の渦に巻き込んだグロテスク装飾について、大規模な古代絵画を初めて目にした15世紀末イタリアの芸術家たちが、従来考えられてきた以上に、それをさまざまな形で自身の芸術に取り込もうと奮闘する姿を明らかにした。例えば、発掘現場に何度も通い、その古代絵画がみせる多様な表情を汲みとることができた画家ピントリッキオは、それが有する可能性を一気に押し広げた点で重要な役割を果たした。一方フィリッピーノ・リッピは、グロッタ由来の絵画の写実性を三次元的に極めていき、その表現がミケランジェロのシスティーナ礼拝堂天井画に継承されていった可能性を提示した。さらに、最初期の黄金宮殿の古代絵画受容を考える際には、現代的なジャンル分けがいかに大きな障壁となっているかを常に意識する必要がある点を指摘した。加えて、ルネサンス期の「グロテスク」を従来の因習的枠組みに基づく「装飾」ではなく「絵画」としてとらえ、古代芸術受容の実態を総合的に再検討する必要性について提言した。 また、今年度は既に寄稿済みであった論文に加筆修正を加え、その成果は『修道制と中世書物』(八坂書房)に掲載された。さらに、分野横断型の研究会で発表する機会に恵まれ、知見を広げることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
論文が2点公開された点、分野を問わずおおくの研究者と交流し知見を広めることが出来た点で、初年度の成果としてはおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、昨年度執筆したグロテスク装飾に関する論考をさらに発展させ、11月にローマで開催される国際学会 Early Modern Rome でイタリア語による口頭発表を行う予定である(審査を経て既に発表決定済)。また、海外調査を実施し、フィリッピーノ・リッピおよびその周辺画家の芸術作品を広く実見するとともに、研究者たちとの意見交換を通して、画家の芸術の立ち位置を再評価する土台を固めたい。既にヴァチカン美術館ルネサンス絵画部門担当の学芸員と連絡を取り合っているところだ。さらに研究代表者は、今年度から理工学部大学院にも正式に所属し、理系の研究者たちと接する機会が格段に増えている。この環境をを活かして、デジタル・ヒューマニティーズの視点に基づく研究についても議論していきたい。
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