研究課題
基盤研究(C)
本研究は17世紀フランスの巨匠ニコラ・プッサンの作品を軸に、フランス・カトリック改革期の宗教画を考察するものである。この時期の宗教画が「礼拝像」から、自律的な「芸術作品」への移行期にあるとするならば、そこで何が変わり、何が読み替えられ、何が変わらないのか、その本質的な層を探る。プッサンの宗教画の多くは、美術愛好家に向けた自立した中型タブローであり、まさにその過渡期に位置するが、彼の作品は、観者に絵を見る愉悦を与えると同時に宗教的瞑想をも促している。そこに見出される作品の自律性の揺らぎを手掛かりに、当時の宗教画とそれを取り巻く言説を分析することで、近世フランス宗教画研究に資する成果が期待される。