研究課題/領域番号 |
23K00192
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01070:芸術実践論関連
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研究機関 | 福岡教育大学 |
研究代表者 |
清水 知恵 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (80243848)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2026年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 時空間芸術 / 身体 / 全身連動性 / ゆっくり動く / 実践知 / 動感 / 呼吸 / 無意識 / 演者 / ゆっくり,低速度 |
研究開始時の研究の概要 |
時空間芸術は,舞踊・オペラ・演奏・演劇など様々な芸術分野があるが,作品に関わるアーティストの身体と自己概念は密接に関係している.中でも,作品中に身体を用いる舞踊では,演者の自己概念の捉え方と,客観視した自己の身体の動きの捉え方は重要である. 本研究では,自己概念の形成に良好な影響を与えることが示唆されている,連動性がより意識しやすい「ゆっくり」動く全身連動性を伴うムーブメント・アプローチを新たに考案しその有効性を問う.同時に,演者が習得した「身体の動かし方」は,動きの質,舞踊セルフ・エフィカシーやボディ・イメージを含む心理的側面の高まりと共に定着するかどうかについて検討することを目的とする.
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研究実績の概要 |
2023年度の研究では,快の感覚が動きのキーとなる身体調整法の一つである操体法をアプローチのための背景とし,演舞する際に自己否定的な認知が生じにくく,関節連動性がより意識しやすいゆっくり動く全身連動性を伴うムーブメント・アプローチの試作と検証を試みた. まず試作したアプローチを用い,本プロジェクトに参加してみたいと回答した高い身体能力を有する大学生数名のみに承諾を得て実験を行った.少人数のため実践開発型として実験を位置付け全員を実験群として調査対象とした.自由記述とインタビュー内容から質的な分析を行った.その結果,体験者には肯定的な身体感覚が生じていることが見受けられた.実験前後で,各自の動きにおける内的な感覚の変化が正確に捉えられ,向上していることが読み取れた.このことから,個々の呼吸に基づいた身体感覚が導く,ゆっくり動く全身連動性ムーブメント・アプローチは,動感(キネステーゼ)に関わる身体内部感覚により早く変化をもたらし,心身への変化を生じさせている可能性が見出せた.また動感変化についても,身体知の創発・構築にも何らかの肯定的作用をもたらす可能性があることが示唆された. また,補助的に行った研究で数名の体験協力者を得ることができたことから,呼吸を意識しゆっくりした速度で動く,全身連動性ムーブメント・アプローチが心身に及ぼす影響について検討を行うことができた.質的側面から検討した事例研究として一つの知見を得ることを目的と,データを収集し,質的な側面から分析した結果,動きの背景に操体法を用いた全身連動性ムーブメント・アプローチが,心身に良好な影響を及ぼす可能性が見出せた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の申請段階では社会環境がコロナ禍にあったことから,申請応募当初の計画では,初年度の2023年度は熟達者へのインタビューを行い,まず4名の熟達者の身体内部で生じている感覚や動きの質的な側面についてのみを探求するためにインタビューと動きの探求によってのみ,ムーブメント・アプローチの試作を作成することを目指していた.しかし,コロナが5類に指定されたことにより,さらに数名の体験協力者を得ることができたことで,事例研究としてのデータ範囲を拡大することができた.ここでは,自由記述およびインタビュー形式による心理的側面からのデータを収集することが可能となった. 現在,熟達者のインタビューに基づいて,これまでの内的感覚に関するキーワードを抽出し,前年度に試作したアプローチに加え,さらにより短時間で内部感覚を掴めるようにするために,身体の内部感覚の覚醒をより早められる新たなアプローチを検討している.
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度の熟達者へのインタビューに基づいて,これまでの内的感覚に関するキーワードを抽出し,内容を分析し,今年度は,より的確に短時間での理解や,舞踊・ダンス表現における動きの質的側面に関わる,身体内部で感じ取れる動感を中心とした感覚の覚醒につながるアプローチを再検討していく. さらに,これまでの研究で使用した「呼吸」,「動感」,「身体内部感覚」,「快・心地よさ」といった身体感覚に関わる心理的側面,そのほか,ボディ・イメージ,自己効力感などに対応している心理的側面の内容について,さらに詳細に分類し,また判定者を増やしてデータの分析を行う予定である.
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