研究課題/領域番号 |
23K00195
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01070:芸術実践論関連
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研究機関 | 静岡文化芸術大学 |
研究代表者 |
梅田 英春 静岡文化芸術大学, 文化政策学部, 教授 (40316203)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | ワヤン / バリ / 創作 / 二次創作 / マハバラタ / ラマヤナ / バリ島 / 影絵人形芝居 / 創作演目 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の概要は、①創作演目の創作規範を明らかにすること、②創作演目の事例分析を行うこと、③創作演目の上演手法を明らかにすること、④実際に創作して上演を行うことにある。 創作演目は古くから存在しているが書かれたものが少ないことから、現地調査で複数の演目を収集して、その演目の分析を通して、創作規範、つまりは創作の「ルール」を明らかにしたい。 また文字化した資料の分析にとどまらず、具体的に創作演目の上演手法についても明らかにしたい。さらにはこうした研究成果を踏まえ、ワヤンの人形遣いである申請者が実際に創作演目を規範に従って創作して、それを上演することで本研究の検証を進めたい。
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研究実績の概要 |
昨年度は以下の二点についての研究に着手した。1点目は、マハバラタの二次創作の歴史的展開に関する研究である。この研究では、ジャワ中部の遺跡のレリーフに残っているマハバラタの二次創作作品である二つの物語『スダマラ Sudamala』、『ビマ・スワルガ Bima Swarga』の調査である。両物語とも、インドネシアで創作された物語であり、インド由来のマハバラタには見られない物語である。しかしその登場人物はほぼマハバラタ物語の主要人物である。この遺跡は10世紀~15世紀の間に徐々に増築され大きくなっていったといわれているが、このレリーフは13世紀から14世紀にかけて創作されたと考えられている。マハバラタ物語がインドから伝播して、それがジャワにおいてインドネシアの古語によって書かれたのは10世紀だと考えられていることから、インドからこの物語が伝播した約300年後には、すでに二次創作が行われていたことがわかる。 二点目は、過去の創作演目をもとに、バリの人形遣いダランの協力を得て、新たな創作演目を自身で作成する実践的研究を開始した。現在はまだ創作中であるが、基本となる物語を沖縄古典演劇である組踊の演目「二童敵討」に設定し、それをマハバラタ物語に作りかえていく試みに取り組んでいる。まず「二童敵討」の演目を細かく分析し、古代インド叙事詩の文脈に置き換えることからはじめ、ワヤンの演目に合うように物語を部分的に改作し、現在ではインドネシア語とカウィ語(古語)のマハバラタ化した台本の制作に着手している。今後は、この演目を完成させて、創作者本人が、実際にこの演目のワヤンを上演する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、歴史的考察部分と実践的な演目創作の二つに焦点当てた研究であることから、それぞれの点で、おおむね順調に研究は進んていると自己評価している。 今回、歴史的考察の部分としてジャワ島中部の二つの寺院1(チェト寺院、スク寺院)を訪問したが、そのレリーフは実に鮮やかに創作演目を描いており、13世紀当時のジャワのヒンドゥー文化にとって、二次創作の内容が必要だったことを物語っている。これが描かれているのはヒンドゥー寺院なのであることから、二次創作が宗教上、信仰上の理由から必要だったとも考えられる。本研究にとってこの仮説はとても重要であり、二次創作が単なる文学的興味や作者の創作意欲から出たものではなく、インドのヒンドゥー文化ではなく、よりジャワのヒンドゥーに近い形で創作されたともいえるのである。 一方、ワヤンの古い創作演目の上演は、儀礼的な意味を持つが、人形遣いが創作する演目は演劇的、文学的な創作である。つまり、宗教・信仰上の理由により二次創作されてきたマハバラタは、現在では演劇的・文学的理由により創作されるようになっている。1年目の調査で、こうした点が少しずつ明らかになってきたことは、十分な成果と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の方針は、今年度の二つの視点を継続して実施する。 歴史的な二次創作研究として、今年度は、東ジャワ、マラン市郊外にあるシンガサリ寺院とジャゴ寺院のレリーフに描かれたマハバラタの創作演目について調査を実施する。ここにも二次創作演目『スダマラ』が描かれているといわれているため、物語の展開を複数のレリーフでどのように描いているかについて調査を行う。 もう1点は前年度から開始したマハバラタの二次創作の新たな演目創作を継続して完成を目指す実践的研究である。現在はバリ島の人形遣いダランをインフォーマントとしてお願いし、これまでは、比較的よく知られた創作演目の構成を学びつつ、新たな演目の創作に着手し始めているが、今年度は継続して、インフォーマントの指導のもと、第一稿を完成される予定である。ただし、あくまでも研究の過程であり、この新しい演目を時間をかけて、観客からみて、より良い創作演目へと仕上げていく計画である。なお最終年度にはこの創作演目の上演を研究代表者自身が行う予定である。
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