研究課題/領域番号 |
23K00204
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01070:芸術実践論関連
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研究機関 | 関西外国語大学 |
研究代表者 |
松田 健 関西外国語大学, 外国語学部, 教授 (00288862)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | 日本のチェロ史 / ヴェルクマイスター / ウェルナー / 東京音楽学校 / 共益商社 / チェロ / 東京芸術大学 / 国立音楽大学 / 教則本 |
研究開始時の研究の概要 |
日本のチェロ教育ではドイツのヨーゼフ・ウェルナー(1837-1922)が書いた『実践的チェロ教本』(1882)が基礎教則本として広く使われている。本研究ではどのように同書が日本のチェロ界で定番化したのか、日本のチェロ教育にどのような影響を与えたのかを明らかにすべく、史料調査、面接調査、教則本分析の3方向から研究する。具体的には日本のチェロ黎明期における音楽取調掛や東京音楽学校でのチェロ教育の調査、1930年代から40年代に生まれた日本のチェロ奏者への聞き取り調査、そして1920年代以降に相次いで出版された、日本でもっとも古い5冊のチェロ教則本に『ウェルナー』が与えた影響を分析する。
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研究実績の概要 |
当研究の中心的な問いは「なぜ日本のチェロ教習でウェルナー教則本が一般的になったのか」です。「お雇い外国人講師のドイツ人チェロ奏者、ハインリヒ・ヴェルクマイスターが東京音楽学校で同教則本を採用し、弟子たちが広めたから」との仮説を検証しています。 2023年度は、ベビーブーム前の1930年代から1940年代初頭に生まれた6名の著名なチェロ奏者の方々に聞き取り(メール等を含む)をしたところ、全員がウェルナー教則本になじみがありました。ウェルナー教則本の長所についても尋ねました。 日本人初のチェロ奏者は、音楽取調掛で西洋音楽傳習を命じられた伶人、上真行とされています。東京藝術大学の大学史史料室および付属図書館の史料を調べましたが、彼の教師や教則本については、わかりませんでした。ただし彼が東京音楽学校でチェロを教えた形跡はわずかながら教務関係の記録に残っていました。 ウェルナー教則本は1880年代の出版ですが、ヴェルクマイスターが同校で教えるようになる1908(M41)年頃までにウェルナー教則本が同校に納入された形跡は、見あたりませんでした。ヴェルクマイスターが赴任した頃に東京音楽学校に納入された、ドイツ系の(ただしウェルナー以外)教則本を閲覧していたところ、写譜ペンによる手書き譜がはさまれていました。内容はウェルナーの一部でした。この五線譜には共益商社の社名が印刷されており、その表記方法からヴェルクマイスターの来日とほぼ同時期のものであることが判明しました。ヴェルクマイスターが書いた可能性があり、現在、筆跡の鑑定中です。 そのほか、国立音楽大学の前身である東京高等音楽学院でもヴェルクマイスターは教べんをとっていた時期があるので、同大学IR推進室で保管されている資料を閲覧しました。こちらにはヴェルクマイスターの自筆譜が保管されているので、参考になっています。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年4月から2024年1月までは、大学業務が想定以上に忙しく、十分な文献調査ができませんでした。しかし2024年の2月・3月に東京芸術大学、国立音楽大学、国立国会図書館などでの調査が期待以上に進展し、ベビーブーマー以前の世代のチェロ奏者へのインタビューも進み、成果をあげることができました。東京藝大の大学史史料室には膨大な資料が蓄積・整理されており、その中の教務関係の資料を閲覧させてもらいました。また同大学の図書館においても、古い図書の納品記録に基づき、明治時代に使われていたチェロ教則本の状況がかなりわかりました。 想像以上に多くのデータが集まったので、現在、整理・分析中です。
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今後の研究の推進方策 |
東京芸大図書館で発見した手書き譜がヴェルクマイスターのものであるのか、確認作業を続けます。同大学の大学史史料室での調査をさらに続けたいと思います。またベビーブーマー前の世代のチェロ奏者の方々についても、できればもう少し聞き取りを続けたいと考えています。 ヴェルクマイスターについて調べていると、関東大震災で被災した彼は関西に避難したということですが、関西時代の彼の足跡が不明なので、調査します。 これまで収集した資料・データの整理をし、まずは2024年秋の日本音楽学会の年次大会での発表を目指したいと考えています。
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