研究課題/領域番号 |
23K00251
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01070:芸術実践論関連
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研究機関 | 福岡女子短期大学 |
研究代表者 |
井上 幸一 福岡女子短期大学, その他部局等, 准教授 (30462097)
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研究分担者 |
緒方 泉 九州産業大学, 地域共創学部, 教授 (10572141)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | メンタルヘルス支援 / ウェルビーイング / クロスモーダル / 音楽と造形 / 博物館と医療福祉 / caregiver / 博物館浴 / 芸術療法 / 芸術と健康 / 音楽と造形による表現 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、高齢社会を支えるcaregiverのストレスケアを目的として、博物館・美術館に収蔵される彫刻・絵画作品等を介した音楽実践行為〈ミュージッキング〉によって「支え手を支える」ためのプログラム開発を行うものである。 リサーチパートナーである医療・福祉機関と教育機関、博物館・美術館の協働によって新たな芸術療法プログラムのエビデンスを生理測定・心理測定によって検証する。また、これまでに実施した「博物館浴」研究におけるメンタルヘルス支援プログラムの実証実験において蓄積したデータを基に、汎用的でパッケージ化されたプログラム開発を行い、芸術と健康の「感覚から科学」への研究方策の構築を図る。
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研究実績の概要 |
本年度はプログラム開発期と位置づけ、博物館・美術館と医療福祉機関の連携におけるアート活動によるメンタルヘルス支援プログラムの開発に関わる取組みを実施した。 医療福祉機関のcaregiverを対象とするアート活動実践を継続的に実施し、効果評価の分析を行った結果、アート活動後のストレス軽減が示唆された。これまでに、絵画鑑賞のみ、音楽鑑賞のみによるストレス軽減効果については一定数の報告がみられるが、本研究における絵画作品鑑賞とそのイメージに基づいた能動的な音楽行動によるクロスモーダルなアート体験によるストレス変化の検証報告は少ないといえる。 また、本年度に実施したアート活動のプロセスと方法の検討を行った結果、鑑賞作品の種別と音楽行動のタイプによるストレス変化の差異が示唆された。そのため、鑑賞作品(具象画と抽象画)の違いや、作品鑑賞または音楽行動のみのシングルモーダルなアート体験と両者によるクロスモーダルなアート体験によるストレス変化の比較検討を新たな検討課題として設定するに至った。さらに、先行研究の文献調査とともに、アート活動及びメンタルヘルス支援プログラムの開発に関わる勉強会を医療福祉従事者、研究者(博物館学、音楽教育学、美術史学)、美術館学芸員によって実施し、アート活動とメンタルヘルス関わる聴き取り調査を実施した。 これらの研究成果は「造形のイメージ表現としての音楽行動」-参加型アート活動における音楽表現の方法論的検討-福岡女子短期大学紀要第89号pp.39-48、「造形のイメージによる音楽表現」-アートプログラム開発の実践報告-,日本音楽表現学会第21回大会、「音楽と造形によるクロスモーダルな芸術表現のイメージ変容とストレス変化」-メンタルヘルス支援プログラムの開発に向けて-,九州公私立大学音楽学会第54回大会において報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は3ヵ年の研究期間におけるプログラム開発期と位置づけ、アート活動によるメンタルヘルス支援プログラムの開発に関わる下記①~④の取組みを実施した。その結果、音楽と絵画作品鑑賞によるクロスモーダルなアート体験がストレス軽減に一定の効果をもたらすことが示された。 また、実践結果の分析とともに、アート活動によるプログラムの方法論的検討を行うことによって、プログラムの構造化がなされたと考えられた。さらに、音楽行動のみと作品鑑賞のみによるシングルモーダルなアート体験と両者によるクロスモーダルなアート体験の効果の差異が示唆された。この点については、海外文献調査において、同様の報告がなされているものの、これまでに実証実験数は少ない状況であることが分かった。 アート活動実践、メンタルヘルス支援に関わる勉強会をとおして、研究者と博物館・美術館の学芸員、リサーチパートナーである医療福祉機関が情報共有を図ることによって、研究の方向性と課題点を明確化しており、次年度の研究推進にあたって、実証実験を継続するとともにデータの蓄積と検証を行うことが可能になった。 本年度の研究成果については、論文及び学会発表として報告した。一方で、国内外の調査については、スケジュール調整の結果、実施にいたらず、また、アンケート調査の標本数は十分とはいえない状況である。上記のことから本年度の推進状況については、概ね順調に進展していると考える。 ①caregiverを対象とするアート活動実践及び効果評価の分析②アート活動及びメンタルヘルス支援プログラムの開発に関わる勉強会③caregiver及び若年成人を対象とするアート活動とメンタルヘルス関わる聴き取り調査④アート活動によるメンタルヘルス支援プログラムに関わる国内外の文献調査
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究結果をふまえ、次年度をプログラム評価・改善期と位置づけ、博物館浴における汎用性のあるメンタルヘルス支援プログラムの開発に向け、下記のように研究の推進方法を計画する。 ①caregiverを対象とするアート活動実践及び効果評価の分析として、アート活動を継続するとともに、音楽行動のみ、絵画作品鑑賞のみのシングルモーダルなアート体験と両者によるクロスモーダルなアート体験における絵画作品の種別(具象画と抽象画)と音楽行動(音楽的諸要素)のタイプの違いによる効果評価の分析を行う。②アート活動及びメンタルヘルス支援プログラムの開発に関わるオンライン勉強会は、メンタルヘルス支援プログラムをより多角的に捉え、評価・改善を行う必要があるため、博物館学、美術史学、音楽教育学、美術教育学、博物館・美術館学芸員の他、医師、看護師、芸術療法実践に携わる専門家及び団体の参加によって実施する。③caregiverのQOL向上とメンタルヘルス支援プログラムに関するアンケート調査及び海外文献調査を継続する。また、予備的な調査として、若年成人を対象にした調査を行う。④海外の博物館・美術館の調査は、アート活動による健康増進及びメンタルヘルス支援プログラムの先進事例の調査と共同的な研究推進に向けた情報共有を目的として実施する。⑤国内の医療福祉機関の調査は、アート活動によるcareの視点をもつ活動を行う機関を対象として、芸術療法実践の先進的な取り組みの調査と共同的な研究推進に向けた情報共有を目的として実施する。
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