研究課題/領域番号 |
23K00274
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
鈴木 暁世 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 准教授 (60432530)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 日本近代文学 / 比較文学 / 近代演劇 / 翻訳 / フェミニズム / ジャポニスム / ジェンダー / アダプテーション / トランスナショナル / プロパガンダ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題は日本近代文学・演劇の海外での翻訳・上演を含む活動を、海外の近代文学・演劇との相互影響関係、それをめぐる国際外交のプロパガンダ的企図、フェミニズム的意義等から調査・検討し、日本文学・演劇をトランスナショナルな視点から捉え返すことを目的としている。 ナショナルな文学史的言説のなかで周縁化された作品群を、それらの翻訳や流通を促した背景の政治的、社会的動因や各国文学史・演劇史との相互影響関係から捉えることにより、日本文学が海外へと翻訳・流通する際に発信された表現が、どのような社会批評性を持っていた/いるのかという問題を考察したい。
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研究実績の概要 |
本研究課題は、日本文学・演劇の活動を、1910年代から1930年代を中心に、海外での翻訳・上演とそれをめぐる国際外交のプロパガンダ的企図やフェミニズム的インパクト、海外の近代文学・演劇との相互影響関係から調査・検討し、日本文学・演劇の活動をトランスナショナルな視点から再評価することを目的としている。 今年度は、郡が発表した英語戯曲が女性参政権論者によって組織された劇団によって、英国初の女性演出家イーディス・クレイグによる演出のもとロンドンで上演されたこととその文化的前史との関係について研究を進めた。 郡は、19世紀末からのジャポニスムの流行を利用し、戦略的に能や謡曲に取材した作品を西洋に向けて英語で発表すると同時に、能のアダプテーションである自作戯曲に強い意志を持つ日本女性を新たに創造して登場させたことで、同時代英国のフェミニズム運動に受け入れられた。これらの事例は、先行するエキゾティックな「日本」を描いた作品によってかき立てられた20世紀初頭のヨーロッパにおける日本へのオリエンタリズム的欲望を利用しながら、それを反転させることによって、当時の英国社会のジェンダー観へと揺さぶりをかける女性像を生み出したフェミニズム的な社会批判性に富んだ批評的行為であったと言えよう。これらの研究成果を口頭発表「翻訳された幻想の「日本」―20世紀前半における日本演劇の海外上演をめぐって―」(2023.11)で発表し、共著書『ケルト学の現在』を刊行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
郡虎彦による自作戯曲の改作と日本語から英語への自己翻訳の過程の考察を通して、彼が女性参政権運動と関わり合う中で、女性が受ける抑圧的状況とそれへの抵抗という議論を目にし、関心を広げていったことを英語戯曲の創作と上演に生かしたことを見せていることを明らかにできたため。それは、文学作品の移動、翻訳、受容が、時代の力学と切り結んでいることを示していると言える。20世紀前半の日本文学の国際的な展開を考える場合、西欧におけるジャポニスムの流行への迎合・利用と批判という視点で日本を捉え返そうとするフェミニズム的批判性を持つ作品群の分析は重要であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
郡がイギリス舞台協会の海外演劇委員に就任した背景には、ヘスター・セインズベリとの交流関係がある。セインズベリは20世紀モダニズム文学において最も重要な芸術家集団の一つであるブルームズベリー・グループの一員であり、郡も彼らと交流していた。郡とモダニズムやフェミニズム的文化運動との関連を明らかにする。2023年度より継続して調査を行い、同時に日本における西洋演劇受容関係資料調査を行い、研究成果をまとめる。11月にシンポジウムでの発表を予定している。
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