研究課題/領域番号 |
23K00275
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
樋口 大祐 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (90324889)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | ジェンダー / 記憶 / 歴史語り / 戦争 / 流離 / 女性 / 物語 / ミソジニー |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、日中戦争・アジア太平洋戦争の時代(1937~1945年)の日本帝国の女性の諸経 験とその物語化の諸相について、同時代の文芸雑誌や書籍、植民地出身作家による当該時代を時代背景とする小説群等を広く題材として分析することを通して、銃後の家庭婦人のイメージとは異なるより多様な在り方を掘り起こし、また、戦争と女性の関係をめぐる問題系を拡張することをめざすものである。
|
研究実績の概要 |
2023年度は共著を一冊、学術論文を一本執筆した。
まず、5月に刊行された野田研一・後藤隆基・山田悠介編『石牟礼道子と<古典>の水脈』(文学通信)に、石牟礼道子『西南役伝説』(1980年)についての本格的な論文「『西南役伝説における民衆史的歴史語りと非定住民」を収載した。『西南役伝説』は、1877年の西南戦争を含む激動の近代史に関する水俣・天草地方の民衆の歴史語りについて、古老たちへの聞き取りをもとに再構成したものである。本論文では、そこに著者・石牟礼の非定住民に対する深い関心が息づいていることを検証している。
また、年度後半期には、それまで神戸新聞に連載した記事をもとに、加藤正文氏との共著『光と風と夢―街角の記憶を歩く』(神戸新聞総合出版センター)を執筆した。この著書では、瀬戸内晴美、三枝和子、須賀敦子等、第二次大戦を経験した女性作家の作品群や、谷崎潤一郎、椎名麟三、陳舜臣、宮本輝等の作品の女性登場人物について考察しながら、兵庫県下の都市空間とそこで生きた女性の軌跡について考察している。当該共著は2024年4月に刊行している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の『光と風と夢―』街角の記憶を歩く―』を執筆する過程で、多くの研究協力者との意見交換、都市空間の巡検等を実現し、また、日中戦争・太平洋戦争下の女性の生き方やその記憶の語り方に関する多くの知見を得ることができた。これらの知見を、今後の個別学術論文の執筆に活用することができる見通しを得ている。 また、当該科研費を使用して日中戦争・太平洋戦争下の女性の生き方に関するデータを収集することができた。これも2024年度以降の研究活動に資する点が大きいと思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
2024年度は収集・購入した書籍・データをもとに、学術論文の系統的な執筆を開始する。
テーマとしてはまず、戦後の進駐軍占領下の日本社会における、軍人「未亡人」、および「パンパン」について、同時代の支配的な言説や特徴的な小説、及び当事者の語りに注目し、この問題系に関する言説地図の再構成を試みる。その後、対象の時代を戦時中と戦後(1950年代)に拡張し、より広汎な見取り図の作成を試みる。
|