研究課題/領域番号 |
23K00280
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 名桜大学 |
研究代表者 |
小嶋 洋輔 名桜大学, 国際学部, 教授 (50571618)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | 中間小説誌 / 雑誌研究 / メディア研究 / 昭和40年代の文学 / 文学場 |
研究開始時の研究の概要 |
戦後日本における娯楽の一形態として広く受容され、それを「小説ジャンル」と捉えれば最大のものである中間小説、中間小説誌の分析は、日本の「戦後」を文化的に規定する巨大な底流を明らかにする手がかりとなる。そして「文学」という言語芸術が「戦後」の日本社会においていかなる「教養主義」を編成し、そしてそれがどこにたどり着いたかという問題についても、本研究は新たな視座を提示し得る。 資本によって形成された「文学場」としての中間小説、中間小説誌を「現象」として捉えることを目的とするものである。本研究は、昭和40年代に焦点を当て中間小説ムーブメントの「終わり(の始まり)」の実態を精緻に浮び上がらせるものとなる。
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研究実績の概要 |
2023年度は、「中間小説誌はどこに行ったのか」という「問い」に答えるため、昭和40年代の関連雑誌の調査を行った。昭和37年から40年にかけて刊行された『文芸朝日』、集英社から刊行されていた『小説ジュニア』、昭和43年10月に創刊された学習研究社の『小説エース』、週刊誌であり小説雑誌という稀有な雑誌『週刊小説』、そして現在まで刊行されている光文社の『小説宝石』などの雑誌の調査を行い、その目次の複写を国立国会図書館で行った。なかでも『文芸朝日』の前身である『週刊朝日別冊』からの変化は興味深かった。また、『小説エース』の名物企画として遠藤周作の対談コーナーが置かれていたことも新たな発見であった。 同時にこれまで行ってきた調査を継続し、中間小説誌「御三家」(『小説新潮』『オール讀物』『小説現代』)と『別冊文藝春秋』の昭和40年代の動きについても調査を進めた。 過去の科研費ですでに購入し、手元にあった資料である『面白半分』や『小説公園』、『ショートショートランド』を再度見直した。特に作家が編集長として雑誌を作るというコンセプトの『面白半分』(昭和47・1~昭和55・12)の位置は興味深く、今年度学生バイトを雇用し、総目次の作成を行う予定である。 また今年度は古書として笹沢左保の文庫本を91冊購入した。笹沢は「木枯し紋次郎」シリーズで昭和40年代の『小説現代』の隆盛を支えた小説家である。同時に現代を舞台にした作品やミステリー作品も多く、そちらでも人気作家であった。だが、笹沢という存在は日本近代文学研究において、ほとんどその俎上に上げられることのない作家でもある。次年度までには論文化したいと考えている。 過去の科研費事業の成果ともいえる『中間小説とは何だったのか: 戦後の小説雑誌と読者から問う』の刊行に向けた作業を行ったのも2023年の研究実績といえる。2024年5月に文学通信から刊行される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「当初の計画以上に進展している」としたのは、『中間小説とは何だったのか: 戦後の小説雑誌と読者から問う』の刊行を行えたことに起因している。過去の科研費で採択された研究の総まとめといったものであるが、本研究事業に接続するものでもある。とくに本書の第三部「昭和四〇年代の中間小説誌」に載せた、「第3章 遠藤周作と中間小説誌の時代―『小説セブン』と人気作家の戦略」(小嶋洋輔)や「第4章 表皮としてのエンターテインメント―五木寛之「さらばモスクワ愚連隊」論」(西田一豊)、そして「コラム 創刊から昭和四〇年代前半までの『小説現代』―最後の「御三家」」(小嶋洋輔)で示された研究手法をもって本研究は行われている。こうした成果を書籍の刊行という最高のかたちで行うことができたことで、本研究の意義を周知することにもなったといえる。 また、東京への調査は旅費の高騰もあり2回しか行えなかったが、他資金による出張にあわせての調査を2回行うことができた。継続して調査すべき雑誌はあるが、新しく一から調べる雑誌は今年度ほとんどなくなったことも「計画以上」とした理由である。詳細は上記「研究実績の概要」に記している。 HPを開設できたことも大きい。過去事業のHPから発展させることはできていないが、今後拡充を図る予定である。 だが、学生バイトを雇用しての総目次の作成は思うように進めることができなかった。また、これまで扱ってきた作家以外に、本研究の主たる対象となる作家を見出しきれなかったことも今後の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度のシンポジウム開催に向けて、今年度は準備調整が必要である。上でも述べたように書籍を刊行することができたため、その編著者を中心に登壇者を選定してゆく予定である。なお編著者のうち、高橋孝次は「戦後日本における文学・大衆・社会――水上勉資料の発展的研究として」(基盤研究C 24K03664)に、牧野悠は「〈中間小説誌御三家〉における時代小説――娯楽メディアと文芸ジャンルの相互作用」(基盤研究C 24K03637)に2024年度採択された。こうした関連事業と連携した大きなイベントを開催できるよう進めてゆきたい。 成果としては、今年度中に『面白半分』の目次の翻刻作業を終え、大学紀要等に調査報告として投稿したいと考えている。
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