研究課題/領域番号 |
23K00281
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 大妻女子大学 |
研究代表者 |
木戸 雄一 大妻女子大学, 文学部, 教授 (30390587)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 書誌学 / 製本 / 洋装本 / 出版史 / 書物 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、日本に洋装本が登場してから定着するまでの19世紀後半から20世紀初頭までを範囲として、書物製作の技術と書物に対する意識の変遷を関連付けつつ、近代日本の洋式製本移入史を構築することを目的とする。具体的には、①解体調査を含めた書物の実物調査によって、洋式製本移入期の技術的な実態と日本における技術的展開の過程を明らかにする。②製本語彙の語彙史的調査および書店の目録や出版広告の調査を行うことによって、洋式製本移入に伴う職人・書肆・読者における書物の用法や書物観の変容を明らかにする。③官民の初期洋装本刊行の出版史的な調査を①と接続することによって、洋式製本の移入と展開を歴史的に跡づける。
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研究実績の概要 |
2023年度は以下の三点についての調査・研究を実施した。 ①初期政府印刷局と御用書肆による1870年代から80年代の製本を調査し、パターソンの伝習の実態とその技術の民間書肆への伝播について研究した。特に印書局と民間書肆でともに製作されるようになった『仏蘭西法律書』の諸本を中心に全国的な調査を行った。調査先は函館市中央図書館・岩手大学附属図書館・岩手県立図書館・新潟県立図書館・会津若松市立会津図書館・内閣文庫・香川大学神原文庫・長崎大学武藤文庫である。それに関連して大日本印刷所蔵の『仏蘭西法律書』『改正西国立志編』の解体調査記録を作成し、書物修復の専門家である岡本幸治と対談をおこなった。その成果を『書物学』24に発表した。 また、印書局のお雇い外国人パターソンの経歴について、彼の出身地カナダの19世紀における製本事情についての諸研究を基に考察した。成果は「パターソンとは何者か」(『東京製本倶楽部会報』2024.1)として発表した。 ②「ボール表紙本」「南京」など特に混乱の多い製本用語を中心に収集し比較することで、当時の製作者の認識について研究した。その成果を「「ボール表紙本」名称考」(『書物学』24、2023.8)として発表した。 ③2024年度に実施予定だった1870年代の上海と日本の辞書製本の調査を、旅費と時間の効率化という観点から①の調査と同時におこなった。調査先は①と同様である。辞書は上海で製本された『和英語林集成』と、国内で製本された『附音挿図英和字彙』を中心に、1800年代後半に中国で製作された洋装本と、1870年代に日本国内で製作された初期の洋装本を調査した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の2023年度計画の①初期政府印刷局と御用書肆による1870年代から80年代の製本を調査することで、パターソンの伝習の実態とその技術の民間書肆への伝播について探求すること、②「ボール表紙本」「南京」など特に混乱の多い製本用語を中心に収集し比較することで、当時の製作者の認識を探求すること、の二つはすでに研究論文や調査レポートによって成果発表を一部おこなっている。また、2024年度計画の①解体調査を含めた書物の実物調査によって、洋式製本移入期の技術的な実態と日本における技術的展開の過程を明らかにすることについても、すでに調査を始めている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、①初期政府印刷局と御用書肆による1870年代から80年代の製本を調査することで、パターソンの伝習の実態とその技術の民間書肆への伝播について探求する。書目は印書局と紙幣寮活版局製作の洋装本全般だが、特に民間書肆でも製作されるようになった『仏蘭西法律書』の諸本を中心に調査する。②1870年代の上海と日本の辞書製本および帳簿製本を調査することで、政府印刷局以前の民間洋式製本の実態を把握し移入経路について探求する。辞書は上海で製本された『和英語林集成』と、国内で製本された『附音挿図英和字彙』を中心に調査する。帳簿製本は1870年代から洋式帳簿を使用していた開港地の文書を中心に調査する。また、当初の計画通り2024年度から③初期のボール表紙本や並製本を調査し、洋式製本の普及過程について探求する。
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