研究課題/領域番号 |
23K00286
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
花崎 育代 立命館大学, 文学部, 教授 (00259186)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 大岡昇平 / 草稿研究 / 「愛について」 / 「逆杉」 / 「釣狐」 / 日本文学 / デジタルアーカイブ / 原稿 / 『愛について』 / 『レイテ戦記』 / 戦後文学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、文学作品の内容にかかわる改稿がきわめて多い作家でありながら、従来、本研究代表者花崎が2009年度以降2022年度までの三期14年間の科研費で検討するまでは皆無に近かった、大岡昇平の基礎的文献である創作ノート・草稿類を調査し、活字資料も合せて考究するものである。この研究によって、その思考過程および作品の分化生成過程を具体的に明らかにすることを目的とする。
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研究実績の概要 |
大岡昇平文学の研究において創作ノート・草稿類を含む自筆資料までを視野に入れたものは、当該研究代表の花崎育代による科研費課題「大岡昇平文学の基礎的および総合的研究―構想ノート・草稿類を含む―」(課題番号:21520217、2009~2012年度)、「大岡昇平文学の基礎的および総合的研究―創作ノート・原稿類を含む―」(課題番号2537026、2013~2017年度)、「大岡昇平文学の基礎的および総合的研究―構想ノート・原稿類を含む―」(課題番号:18K00337、2018~2022年度)以外は、ほぼ皆無であった。本研究はこの現状に鑑み企図したものである。2023年度から3年間の計画では上記花崎の研究に連なるものとして、大岡昇平の代表作『俘虜記』『武蔵野夫人』『野火』『酸素』『ハムレット日記』「釣狐」「逆杉」『花影』『レイテ戦記』『ミンドロ島ふたたび』等の補遺とともに、これらに続く時期の原稿を中心に研究している。
2023年度は、主に神奈川近代文学館(神奈川県)が所蔵する大岡昇平の長篇『愛について』原稿類を調査した。このうち『愛について』原稿をデジタル一眼レフカメラにより撮影、思考の経緯を具体的に確認し得たことは大きな成果であった。大岡著作権継承者は現在、原稿類総体の影印等の公刊を認めていないが、撮影の許可は下りているため可能となった研究である。作品発表後半世紀を過ぎ紙類の劣化が進む状況において、日本文学の貴重な資料を後世に伝えるという意味で喫緊かつ重要な仕事を行ったといえる。 また「逆杉」草稿からの生成過程の研究を『論究日本文學』に、「釣狐」の原稿探究による狂言台本から近代小説への生成の研究を『立命館大学人文科学研究所紀要』に、それぞれ発表した。 他に撮影画像処理に必要なノートパソコンを購入した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全3年間の研究計画において、大岡昇平の戦後の代表作品を軸にした研究を、神奈川近代文学館が所蔵している手稿類を含めて研究している、2023年度は、大岡昇平後期の代表作である『愛について』等の関係資料を調査したうえで、「愛について」原稿のデジタル一眼レフカメラによる撮影を、上記所蔵館および著作権継承者である大岡家からの許可を得て行った。当該原稿は枚数が多く、当初、撮影に相当の時間を要すると考えられたが、2023年度中に撮影を終了できた。現在これを受けた詳細な調査研究を継続中である。 また神奈川近代文学館が所蔵する大岡の草稿原稿のうち、「逆杉」草稿について『論究日本文學』第119号に、「釣狐」原稿について『立命館大学人文科学研究所紀要』№138に、それぞれ研究を発表した。 以上により研究は、おおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、大岡昇平文学研究のうち、戦後作品について、資料劣化が懸念されている草稿、創作ノート等手稿の調査と考究を行ってきている。著作権継承者により、草稿類全体の影印出版、全文翻刻はかなわないが、撮影による細部に至るまでの調査が可能となったため、この方法による研究を行ってきている。作品/テクストを著作者まで遡って研究する場合にはプライバシーや著作権継承者の意向の問題は、当然発生する尊重されるべきものであり、本件における上述の、出版は行わないが調査撮影と考究は進めるという計画とその遂行は、現在考えうる最良の対応であると考えられる。 よって、これまで行ってきた草稿類の調査を行い考察を進める。具体的には全3年間の中間にあたる2年目の2024年度は、1年目の2023年度に引き続き、撮影を終了した『愛について』の考察、「遥かなる団地」および周辺の創作ノートや草稿類の撮影(撮影できないものについては筆写)し、調査を進め、考究していく。 上記文学館の閲覧事情や当該作家の文字判別がきわめて困難等の理由で計画遂行に遅滞が予想される場合には、活字資料のさらなる読解、戦前―戦中―戦後の同時代状況の考察に努める。 上記のような推進方策を今後も進めていく。
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