研究課題/領域番号 |
23K00290
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 高知工業高等専門学校 |
研究代表者 |
藤本 秀平 高知工業高等専門学校, ソーシャルデザイン工学科, 助教 (70939991)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 混血児 / 米軍占領 / 表象 / 戦後日本文学 / 人種 / セクシュアリティ / 混血 / レイシズム / 日本文学 / 戦後 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、戦後に描かれた日本文学作品における「混血児」の姿を丹念に追い、その描かれ方の特徴を明らかにしていく研究である。併せて、戦後沖縄文学に描かれる「混血児」表象との比較も行う。戦後という状況を大きく規定する米国による「占領」という歴史的動きを常に踏まえた分析と論述を進める。特に、「人種」に関する研究=「レイシズム・スタディーズ」を参照し、どのように「人種」が描かれ、つくられていくのかについて、批判的に分析を行う。同時に、ジェンダー・セクシュアリティ表象の観点からも考察を行い、作品において「混血児」やその母が、「性的逸脱者」として有徴化される力学についても批判的に分析を行う。
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研究実績の概要 |
本研究は、戦後日本文学に描かれた「混血児」の表象について多角的な視座から考察を行い、表象の特徴とその系譜について批判的に問い直すことを目的としている。戦後を通じて、「混血児」に対して実態調査・人口調査などが行われてきた。そうした調査において典型的に示されている生物学的な視線や人種的な有徴化とカテゴライズ。すなわち、「混血児」が有する特徴のゆえに、社会的管理や把捉が必要であるという視点や語りをこそ本研究は問うものである。むしろ、本研究では「混血児」を語る者や機関・制度・言説の政治的・軍事的条件やレイシズム・セクシズムを描き出すことを目的とする。 上記の目的を達成するために、テクスト収集、言説分析に関わる資料の収集、レイシズム・セクシズムに関する理論の読み込み、占領史の読み込みと資料調査が必須となる。また、本研究は時代や地域毎における表象の差異を明らかにすることも目指しているため、戦後沖縄文学との比較を中心に、米軍基地が置かれている、あるいは置かれていた地域のテクストや資料も扱う。 本年度は、こうしたテクストと資料の基礎調査と理論的読み込みを中心に行った。研究を進める中で、1950年代半ばにおける沖縄を舞台とするテクストとの交差を発見することができた。雑誌『琉球労働』第4号に掲載された『混血児』というテクストから、「混血児」をめぐる表象の一つの特徴として、戦前の大日本帝国による東アジアへの占領者としての記憶が編成・再編される中で表れるという事態を発見した(第13回国際日本語教育・日本研究シンポジウム:香港大学専業進修学院にて発表)。「混血児」を語る政治性の様々な特徴と言説の構成を明らかにしていく上で、今後の比較参照軸の一つとしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実施の初年度ということで、本年度はテクストや資料の収集、理論の読み込みに傾注した。東京・神奈川と沖縄にて資料調査を行った。沖縄では、沖縄県立図書館や琉球大学図書館、沖縄県公文書館を訪れ、当時の米軍による民政や「混血児」福祉施設に関わるUSCAR(琉球列島米国民政府)文書や、『琉球新報』、『沖縄タイムス』、『月刊タイムス』、『うるま新報』、『うるま春秋』などの記事を収集した。東京、神奈川では、国立国会図書館や東京都立図書館、横浜市立中央図書館にて、新聞や雑誌に記載された「混血児」の記事を広く収集した。テクスト・資料の収集と整理を中心に行うとともに、学会発表を通して研究の発信を行い、フィードバックを受け、構想を深めた。資料等の収集や構想の深まりについては順調だが、東京・神奈川での資料調査が一度しか行えなかったため、「やや遅れている」と評価する。
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今後の研究の推進方策 |
東京・神奈川・沖縄におけるテクスト・資料の収集と整理、及び理論の読み込みを継続しつつ、調査の進展に応じて、関西や九州への調査も検討する。また、時代に沿って分析を深め、成果を発信していきたい。まずは戦闘終結後から1950年代を整理しながらテクストを絞って論文化したい。その際、引き続き、テクストの編まれた場所やテクストの舞台の地域によって表象に異同があるか、比較を行う視線を保ちながら分析を進めたい。
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