研究課題/領域番号 |
23K00305
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
近藤 健史 日本大学, 通信教育部, 研究員 (20195895)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | 三木露風 / 未公開作品 / 未公開資料 / 蒐集・整理・公開 / 再評価 / 新視点による研究 / 整理・公開 / 大正15年以降 |
研究開始時の研究の概要 |
三木露風の低い評価の要因に、公開された大正15年以降の作品が少ないことがある。その評価を検討する方法として大正15年以降の未公開作品と資料を対象に量の多さから2回に分けて蒐集・内容の精査・整理などを行ってきた。本研究では残された後半部の基礎的研究をする。 また、すでに終えた『山崎新聞』掲載作品に関する基礎的研究成果と、新たな基礎的研究成果を統合・集約してデーターベース化して、その全容を公開する。 さらに発展的研究として、基礎的研究で蒐集した未公開作品の質と特徴を分析し、大正15年以前の作品や評価と比較・検討して、日本近代文学史上で位置づけて見直し、「露風に新たな評価をあたえる」ものである。
|
研究実績の概要 |
三木露風の低い評価の要因に、公開された大正15年以降の作品が少ないことがある。本研究の目的は、大正15年以降の未公開作品と関連資料の蒐集、整理、基礎的研究により日本近代文学史上における露風の新たな位置づけ、評価の見直しにある。また停滞している露風研究究に新資料発見に伴い、新しい視点での研究を提起することにある。 本年度の未公開作品・資料の調査の成果としては、未公開資料である『山崎新聞』に掲載されていた露風の紀行文(「北日本の旅と自然と」)にある石川啄木観を発掘・公開したことである。これまでの啄木研究史において露風と啄木の関係について論じたものは皆無であり、新資料発見は新たな啄木観を提示し研究を展開させる価値がある。その成果は『中日新聞』(2024年1月13日朝刊13面)に「詩人・三木露風が寄稿新聞が見つかる/啄木の歌 記事で酷評」の見出しで紹介された。また急遽啄木生誕の地で開催の「国際啄木学会盛岡支部」で「三木露風の語る石川啄木」と題して口頭発表(オンライン)をした。 もう一つの成果は露風が教師として勤めていたトラピスト時代の未公開資料を発掘・公開し、初めて教師露風の実態を明らかにしたことである。未公開資料は教え子に指導した「三木露風添削作文帳」(北斗市郷土資料館蔵)、「なか夫人から露風の教え子山野末市神父宛書簡」(トラピスト修道院蔵)、子どもたちに演じさせた「戯曲『御誕生の夜』」(三鷹市蔵)、三木露風直筆「トラピストのクリスマス」(霞城館蔵)、「ノート32美学草案(1921年9月より)トラピスト修道院にて」(霞城館蔵)などである。この成果は、露風の生誕の地である兵庫県たつの市の霞城館で開催(2024年11月4日)された「露風生誕の地と赤とんぼ誕生の地を語る」のシンポジウムで講演した。たつの市長と北海道北斗市長も出席し、両市の友好関係を深めることにも一役買った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の令和5年度の計画は、膨大に残されている未公開作品・資料の蒐集・整理という基礎的研究であり、コロナ禍により1年延長した令和2年度採択の基礎的研究の継続であったことから研究費は令和2年度採択分の予算を中心に使用した。未公開作品・資料の蒐集と整理に関しては、地域の関係者や関係機関との友好関係を構築することができたことによりおおむね順調に進んでいる。 その理由としては、まず兵庫県たつの市の「公益財団法人童謡の里龍野文化振興財団霞城館・矢野勘治記念館」において、霞城館友の会や露風の母「碧川かたを朝ドラの主人公にする会」などの協力により本格的な資料整理が開始され順次目録が作成されていることから調査が容易にできる状態になったことがある。また、北海道トラピスト修道院を訪問し、修道院長に研究の趣旨を理解していただいたことにより所蔵している未公開の書簡や機関誌などの提供があった。さらに露風の生誕の地である兵庫県たつの市の「霞城館」で開催されたシンポジウム「露風生誕の地と赤とんぼ誕生の地を語る」で講演し、出席者のたつの市と北斗市の市長と懇親を深め研究の趣旨を理解していただいたことにより、北斗市郷土資料館やギャラリー日の丘(私設資料館)、修道院周辺在住の人々から資料の提供を受けることができた。さらにまた、露風の母の生誕の地である鳥取市の「碧川かた研究会」との友好関係から資料や情報の提供を受けた。 蒐集した作品や資料は、デジタル撮影をして体系的に整理・保存してデータベース作成のための準備をしている。
|
今後の研究の推進方策 |
未公開作品や関係資料が大量に残されていることから、今後も調査・蒐集を継続する。兵庫県たつの市の「公益財団法人童謡の里龍野文化振興財団霞城館・矢野勘治記念館」、三鷹市スポーツと文化部芸術文化課、北海道北斗市社会教育課「郷土資料館」、トラピスト修道院などの機関や地域の研究会の方々と連携し協力を得て蒐集を行う。 未公開作品や資料については、学会で報告し露風研究への問題提起をする。またマスコミに公表し露風への関心を高めるとともに露風研究の活性化につなげる。さらに未公開作品や資料の提供した地域においてシンポジウムやワークショップを開催して研究の成果を公開する。 2024年6月23日に露風の母碧川かたの生誕地である鳥取市において「三木露風没後60年、露風誕生日に論じる 新たなる碧川かた像ー母のふるさとからの発信ー」と題する科研費シンポジウム(鳥取市の「碧川かた研究会」共催)を開催する予定である。 新たに蒐集した作品や資料についてはデジタル撮影をして体系的に整理・保存する。直筆の作品や書簡、草稿、創作ノート類についても画像アーカイブをして体系的に整理する。 さらに全容を明らかにするためにデータベースの設計に取り掛かり、データベース作成と露風を近代文学史上で位置づけ再評価するという発展的研究を推進する。
|