研究課題/領域番号 |
23K00306
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 和光大学 |
研究代表者 |
稲葉 有祐 和光大学, 表現学部, 准教授 (90649534)
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研究分担者 |
佐藤 勝明 和洋女子大学, 人文学部, 教授 (60255172)
伊藤 善隆 立正大学, 文学部, 教授 (30287940)
真島 望 熊本県立大学, 文学部, 准教授 (20962997)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2027年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 享保期の俳諧 / 宝暦期の俳諧 / 江戸座 / 美濃派 / 俳諧 / 享保 / 宝暦 / 俳書年表 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、享保期から宝暦期にかけての俳書を悉皆的に調査・年表化することで、当該期の都市俳諧と地方俳諧の俳人たちの動向・活動・俳壇状況の全容を把握し、俳諧文芸の文化史的価値を再考するものである。俳諧を蕉風的な「俳諧性」で評価するのではなく、当時の社会における意義を検討し、その文化的達成を明らかにする。それは、「文学」的見地とは異なる評価軸を構築し、江戸文芸・文化総体を理解するための新たな視点を確立することを意味する。
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研究実績の概要 |
令和5年度においては、本研究の基盤となる享保期から宝暦期までの俳諧関連書目の基礎データベース構築に注力し、調査・分析を進めた。具体的には、主要な所蔵先である石川県立図書館月明文庫・公益財団法人柿衞文庫・天理大学図書館綿屋文庫(第一・第二・補遺)・東京大学総合図書館(洒竹・竹冷・知十文庫等)・早稲田大学図書館中村文庫の各蔵書目録をもとに、享保15年から宝暦14年・宝暦年間の計2978書の俳書、綿屋文庫目録から163書の雑俳書の情報を抽出・入力して基礎データを作成した。上記の俳書数には館の所蔵状況により重複が認められるものの、中には異版が含まれるため、貴重で有益な情報となる。さらに随時、松宇文庫・慶應義塾大学図書館奈良文庫・早稲田大学図書館雲英文庫等における目録情報の追加を行い、『関東俳諧叢書』(第20巻・第32巻)所収「関東俳書年表」・国書データベースとも付け合わせ・相互確認を進めている。 本作業は、享保14年で中断した米谷巌氏らの「近世俳書年表稿(一)~(七)」(『近世文芸稿20~28)以後の俳書の全体像を明らかにするための基礎を構築するものとしての意義を有する。また、調査の過程で上記年表から漏れた俳書の存在も確認しており、その欠を補う役割を果たすことができる。 また、稲葉は口頭発表において、調査を通じて得た知見をもとに、上方・江戸の東西交流が盛んになる享保期での俳人の文通事例に言及した。これは、現在、研究上手薄となっている元禄期以降の上方の動向・状況を考えるにあたり、江戸との連携という側面から実態を捉える可能性の一つを示すものである。加えて、伊藤は雑俳の実態について、志村無倫の事例を中心に調査・考察を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は、研究対象となる期間(享保15年~宝暦14年)の俳書情報の整理を進めるにあたり、蔵書目録・国書データベースに記載される刊年等が諸機関により解釈の相違・異同が発生する場合があること、また、記載漏れや「俳書」としての分類と解釈が一定ではない場合があること等が見られたことから、まずは簡易的ながら当該期間の俳書の全体像を把握するための基礎データベースの作成に充てることを最優先事項とした。総体の把握に比重を置くことになったが、この作業を早期に行うことによって、資料請求・調査先選定の面では、さらなる効率化を図ることが可能となったと捉えている。本年度においては、大阪府立中之島図書館・公益財団法人柿衞文庫・東京大学総合図書館(洒竹・竹冷文庫)・国立国会図書館等を訪れ、原本確認・蔵書調査をしている。 その上で、研究実績の概要において示した主要・基幹となる所蔵目録の統合データには、俳書年表の素稿を作成するための各俳書の読みを付す作業を進めている。書名の読みの確定についても、題簽・内題の有無、角書・別名等、種々の考えるべき問題点が積載し、研究や翻刻資料も多くは備わっていない状況であるが、国書データベース等も参照しつつ構築している。 なお、国書データベースに記載のない研究対象期間の俳書を入手することもできたため、これも年表に反映する予定である。以上、令和5年度については、概ね順調に進められているのではないかと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、前年に引き続き、基礎データベースの充実を図りながら、享保期から宝暦期にかけての年表素稿の作成を行う。特に、享保15年から元文2年までの8年間の年表を整備することを予定している。当該期間は、江戸座では宝井其角・水間沾徳らの弟子達が系譜意識を強く持ち始め、一方で佐久間柳居らの『五色墨』が刊行されて蕉風復古運動の兆しが生じる時期であり、都市系俳諧の一つの転換期にあたる。また、新吉原の遊女達の句集『さくらかゞみ』が出、二代目市川団十郎による多色摺の絵俳書『父の恩』が上梓されて絵俳書の盛行を見る等、芸能・絵画との接点も見出されるため、俳諧というジャンルを越えた視野からの調査・分析が求められよう。立羽不角のように絵師を弟子に持つ俳人もおり、多角的・多層的な人脈・交流の繋がりを把握することは、江戸文化を知る上で重要な事項である。なお、大坂では其角系の松木淡々が活躍し、京都では知石らが雑俳を推進している。一方、美濃派の蘆元坊が活動の場を広げており、全国的な俳諧の動向も見逃せない。そのため、今後、地方俳諧史や県史・市史等の資料群から、当該期間における当地の俳書を拾い上げる作業も必要となると考えられる。この点で、歴史を専門とする研究者らと連携を図ることが有益に作用することが予測される。 以上を踏まえ、各種大学図書館・地方図書館・公共機関での調査を行いつつ、可能な限り、随時成果を発表する予定である。
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