研究課題/領域番号 |
23K00315
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
小島 明子 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (60279015)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2026年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 武門平氏 / 平資盛 / 建礼門院右京大夫 / 贈答歌 / 和歌の改作 / 物語化 / 中世王朝物語 / 平家文化 / 平家周辺の女房 / 和歌 / 建礼門院右京大夫集 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、所謂「平家文化」の文学的側面に焦点を絞り、その実相を明らかにしようとするものである。平安末期の「平家文化」は、同じ武門の「源氏の文化」と対比的に捉えられ、きわめて華やかで貴族的なものと見なされることが常であった。しかし、それは鎌倉時代に成立した物語や平家周辺の女房の手になる日記・私家集、あるいは鎌倉時代に改作された仮名散文などの作品群によって形成された一種の「イメージ」と見るべきである。後代に美化され、理想化された「平家文化」像を一度脇に置き、より客観性が高いと思われる和歌資料を精査することを基盤としてその実態を闡明し、文学史上に位置づけることを企図している。
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研究実績の概要 |
本研究は、平安王朝文化の伝統を引き継ぐと捉えられることが常であった「平家文化」の実相の解明をめざすものである。「平家文化」については、従来、その文化の担い手の属性や文化の質を絞り込むことなく論じられ、それが研究の進展を妨げる一つの要因であったと思われる。本研究では、文化の担い手としては武門平氏に対象を絞り、またその文化的営みの中でも文学的側面、特に和歌を中心に分析を進めるという方針をとる。 令和5年度は、武門平氏周辺で成立した作品の一つである『建礼門院右京大夫集』を俎上に載せた。私家集に収められた和歌や詞書のすべてが実際の贈答歌そのものとは言えないとするのが今日の和歌研究の潮流であり、こうした視点から右京大夫と藤原隆信との贈答歌の異同を『右京大夫集』『隆信集』の間で検討したところ、それぞれの作者の手になる改作の状況が窺い知れた。加えて、右京大夫は中世王朝物語『山路の露』の作者とも言われていることから、『山路の露』と『右京大夫集』の文体の比較を試み、散文と和歌の重複表現に共通する特性があることを指摘し得た。これらから『右京大夫集』がこれまで考えられている以上に物語性を強く帯びた作品であることが明らかになった。 その上で、武門平氏の一員である平資盛の詠歌について、『右京大夫集』所収のものと、勅撰集などに入集したものの詠み口や詞書と和歌の相互関係を調査し、双方における質的相違を見出した。その結果、『右京大夫集』における資盛歌も右京大夫による改作の可能性は高いことがわかり、これは他の武門平氏の人々の詠歌でも同様であろうとの見通しを得ている。武門平氏の文学的素養、特に和歌の実態を剔出する際に考慮すべき条件の一つを明確にできたと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和5年4月に内臓系の疾患を発症して手術と化学療法が必要になり、勤務先の大学も当該年度の大部分を休職、研究に十分な力を注ぐことが困難であったため。
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今後の研究の推進方策 |
武門平氏による「平家文化」究明の基礎段階として、武門平氏の私家集で残存する忠盛集・経盛集・忠度集・経正集の読解を進め、まず和歌・詞書から窺い知れる文化背景を明らかにしてゆく。武門平氏の作者が、如何なる歌壇・歌人圏と交差しているか、また平安後期から鎌倉時代にかけてその存在の大きさが注目される院や女院の文化圏、あるいはその他の貴顕の文化圏との関わりはどのようなものかを整理し、武門平氏の文化が形成される環境を見定める。次に、和歌の表現に着目し、その特徴の抽出を試みる。先行研究では既に、忠盛の詠歌に関する修辞上の傾向、用語選択上の特異性などが指摘されているが、これをさらに詳細に検討し直すだけでなく、新たな分析の観点も導入して武門平氏の和歌世界を解き明かす。
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